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ルイは、蛍のいる川の近くに倒れておったよ。
教会までは運ぼうとしたんじゃが、わし一人ではのう……。
メルセデスや、少し手伝ってくれんかのう。
[そう言って、おじいさんは川の方へと歩き出そうとします]
おいらたちは、こうして見てるしか出来ないんだな。
[ぱたぱたと飛ぶ小鳥に向かって、アルベリヒは悲しそうに言いました]
いっそ見ないでいた方がいいんだろうか?
[だけどやっぱりふわふわと、羊雲のように浮かんだまま、そこから離れられもしないのでした]
[ごくり、と唾を飲み込みながらゼルマはドミニクに云いました]
あんたは、人間、なのよね?
そう信じていいのよね?
だったら、聞いてほしいわ。あたしの、勘が正しくて、ヴァイスの感覚を信じるならば、獣かも知れない人はドロテア、ベリエス、牧師様、しかいない。
もしこの中にいるとしたら、まさかだけど、ベリエス?
[たったこれだけのことを言うのにずいぶんと時間がかかっていたのでした。
その間に二人はだいぶ村近くまで降りてきていたのです。]
ドロテアお姉さん。
黒い森に住む双子は、
同じだけど違っていて。
ひとりの色は白くて、
ひとりの色は黒かったのだって。
〔とつぜん、そんな話を始めるアナ。〕
ふたりは、どうなってしまったと思う?
ふたりは、どうしたかったと思う?
お姉さんは、どうしたいと思う?
〔質問したのに、答えは求めずに、くるりと向きを変えて、また、歩き始めてしまった。後から、フリーもついていく。時々、後ろを振り返りながら。〕
そう、ですか。
[ご隠居の言葉を聞くと
短い時間でしたが、ルイと話をしたことを思い出し
牧師は目にそっと手をあてます]
わかりました。
では、お手伝いさせていただきましょう。
[牧師は手で隠した顔に笑みを浮かべました。
そっと辺りを窺うと、川の方へと歩き始めます]
[木こりはごきりと肩を鳴らし村へと歩き始めます。
歩調はのっそりのっそりと、ゼルマも猫もついて行ける程度。
老婆の長い人生を感じる声に黙々と耳を傾けました。]
……人に狼は化けると言う。
獣はそれでも気づくのか?
[木こりは老婆に寄り添う老猫を見ます。
人狼が老婆に化けたなら、女将が一番邪魔でしょう。
そう考えていたから、老猫を見る目は真剣でした。]
チィ。
[小鳥は少し悲しそうな、落とした声で鳴きました。
けれどもアルベリヒとおなじように、そこからはなれようとはしないのです。]
同じだけど違っていて。
ひとりは白くて。
ひとりは黒かった?
[唐突に始まるお話に、ゆるく瞬きます。]
どうなって。
どうしたかったか。
……わたくしは……。
[問いかけへの答えは、すぐには声になりませんでした。
その間にアナは歩き出します。
時々振り返りながらついていく子羊の様子に、少し、眉が下がりました。]
――川縁――
[冷たくなった旅人のからだは、まだそこに倒れたままでした。
近くには、丸くて重たいものの入った袋が置かれています]
ここじゃよ……。どうか祈ってやっとくれ。
[そう言って、おじいさんも祈りを捧げます]
寂しいもんじゃ。アルベリヒの所にはあんなに人がおったのに……。
隠居 ベリエスは、牧師 メルセデス を心の中で指差しました。
オイラは人間だ。
狼でも人狼でもねえ。
[唾を飲み込んだ老婆に返る声は相変わらずの無愛想です。
そして老婆が重ねる声にも木こりは変わらぬ渋面でした。]
ゼルマさんが言う通りなら、そうなる。
爺さんも余所者だったし、それに…牧師さんが狼とは思えねえ。
[最後に付け加えた声は、とても小さなものでした。
ゼルマにしか聞こえないくらいの呟きです。]
……何も、なければ。
……何も、ないままで。
いたかったかしら、ね。
[始まりがどこかなんて、しりませんけれど。
始まってしまったら、止めなくてはならないから。]
……。
[軽く目を伏せて、籠をぎゅ、と抱きしめました。]
/*
ベリエスお爺ちゃんはいつ、
ドロテアお姉さんやアナを追い越したのかしら、
行くときも、来るときも。
考えたら負けですね!
そろそろ今晩の獲物を決めようかのう。
占い師に霊能者、厄介だけれど美味しい獲物がこの村にも居るようじゃ。
お前さん、そやつらの手掛かりは掴んでおるかのう?
〔アナの足も、羊の足も、そんなには早くない。
それに場所をしっかり知っていたわけでもないから、そこにたどり着くまでには、だいぶ、時間がかかってしまった。
川のさらさら流れる音が聞こえてくる先には、既に人がいるみたい。〕
木こり ドミニクは、牧師 メルセデス を心の中で指差しました。
[川べりに倒れたままの旅人のからだの周りには
蛍が弔うように集っていました。
牧師は、旅人のからだを眺めた後、
祈るような姿勢で、言葉をつぶやきます]
ええ、本当に。
寂しいものです。
[牧師はそう言って、
ごちそう、ごちそうと鳴くからすたちを見上げます]
おーい、ドロテア、おーい、アナ、気をつけろー
[心配そうにふわふわと、アルベリヒの声は子羊には届いたでしょうか?]
老女 ゼルマは、隠居 ベリエス を心の中で指差しました。
/*
ドロテアさんの牧師さん殺害フラグ確認につき、ぽち。
ゼルマさんに乗ってデフォの爺さん殺害もいいんだがな。
二日連続オイラが、ってのもだしなあ。
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