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―宿屋―
――……、
[フーゴーが捲った袖の下。
さしもの男も、そこに見えたモノには流石に目を見張る]
……銀細工。
人狼の弱点は銀……か。
偽物じゃぁ、ねぇだろうな?
[目を上げて、結社員を名乗った男を見た]
[困ったかおをしたまま、宿のあるじであるフーゴーを見るけれど。
そこには真剣な表情と、うでの銀細工がみえるだけ。
あまりに声はかけにくい]
リィちゃん、休ませましょぉ?
[緊迫した空気をこわさぬように、しずかにリッキーを呼び、空き部屋をたずねる]
アル先輩だと、またはじかれるかしら…?
[そんな懸念もあるが、じぶんで手をのばすのはためらわれた]
ギュンターの所に手紙を確認しに行ったのも、俺が結社に属するからだ。
……説明されたこと以外に記されたことが無いか確認しただけではあるんだがな。
尤も、向こうは俺がここに居ることは知らなかったようだが。
[先に聞かれた問いに答えるように言葉を紡ぐ。偽物では、と疑うウェンデルに視線を投げると]
銀メッキなんつー安モンと一緒にすんな。
全部純銀製だぜ。
気になるなら確かめりゃ良い。
/中/
そう思われたのなら重畳です。
一応可愛い子供がイメージでしたし。
絡みは、まあ、ライヒアルトにべったりでしたしねえw
さて、死んだので今日は早めに寝ます。
お休み。
[誰にも反応を示さないリディに、それでも歩けるかなどと声をかけていたが。
フーゴーの告白に、思わずそちらを見。
そこには露になった左腕の傷、それを囲うように絡みつく銀細工がゆらりと煌いているのが見えた。]
…だから、か。
[結社、という言葉に、フーゴーが最初から人狼の存在を肯定する言葉を吐いていた理由を理解して。]
特に何をした、という自覚がないのですが。
[ヘルムートの質問に一つ首を振って]
…――手荒ですが、眠って頂きましょうか。
[そして幼馴染からも休ませた方が良いという結論を貰えば、
つぃっとリディに近寄り、抗われる前に繰り出すのは手刀。
少女のか細い首筋に落ちるか。]
[そんな会話の中、宿屋の扉が勢い良く開く。そこに居たのは複数人の自衛団員達]
…何か用か。
[何をしに来たのかは予測がついていたが、そんな言葉が口を突いて出た。そして自衛団員は訊ねる。「処刑するものは決まったのか」と]
……そうそう決められるもんじゃねぇよ。
もう少し待っちゃくれねぇか。
人狼と判別する手段は無いわけじゃねぇんだ。
[どうにか猶予の延期が出来ないかと交渉する。けれど団員達は「猶予は一日だ」と頑なに譲らない。そして先頭に居る団員が宿屋に集まる者達を見回し言う。「ならば、こちらで決めて連れて行く」と]
おい、ちょっと待てよ。
おめぇらに判断する手段はあるのか?
その連れてった奴が人狼じゃなかったらどうするつもりだ!
[告げられた言葉に声を荒げながらフーゴーはカウンターを出て来る。けれど、彼らの行動は早かった。自衛団員達が取り囲んだのは、カウンターで茶を飲んで居たダーヴィッド。鎧姿で剣を帯びている彼の動きを拘束し、武装解除する]
おい、待てつってんだろうが!
[見かねて取り囲む一人の団員の肩を掴もうとするが、勢いよく払われる。フーゴーはたたらを踏んで後ろへとよろけてしまった。他で抵抗があっても団員達は全てを払いのけ、ダーヴィッドを連行して行く。「明日もまた確認に来る」と言う言葉を残し、彼らは扉を閉める大きな音を残し去って行った]
[そしてその後どうなったかは皆の想像に難くない。ダーヴィッドの抵抗する声、それを押さえようとする団員達の声。何かの鈍い音、誰かが倒れる音]
[その後に広がるのは───静寂]
[フーゴーの覚悟を決めたような声には視線のみを送り。
捲り上げられた腕のそれを見れば僅か頷いた]
…何よりの証拠だな。
[僅かに呟いて。
それは羨望の意味を含んだものだった*]
ははん。
そう言われりゃ、納得はできるな。
[フーゴーの返答に、再び先のような笑みを見せる]
悪ぃね。
まず疑って掛かるんが性分なんだよ。
ま、確かに。
んな手の込んだコトが、獣にできるたぁ思えねぇな。
それこそどっかの組織でもねぇと。
[ひらひらと手を振る]
銀は人狼にとって致命的だって話だった。
メッキだって無理そうだ。
[頬を掻きながらフーゴーとウェンデルの遣り取りを聞き。
派手な音を立てて開いた扉に表情を引き締める]
…そうだったな。
[判別する手段がある。
フーゴーの主張に沈黙した。沈黙している間も人は、時は動く]
[話しの途中、やって来た自衛団。
彼らの口にする処刑、という言葉に無意識の内に、すぐ側にいたゲルダの腕を掴んでいた。
震えと、微かな怯えのいろは隠しようもなく。
フーゴーと自衛団の交渉は決裂し、そして。
自衛団が連れて行ったのは、ゲルダが保護した、と聞いた赤毛の騎士]
……っ……。
[止める術は、自分には、なくて。
ただ、見送るしか、できず]
えぇっ!?それはありなのぉ?
[あまりに手荒な方法に、おもわず(ひそめながら)声を上げた。
それでも、もっと荒々しい音が扉のほうからきこえ、息をのむ]
あ…っ、ダーヴィッドさ…、
[追いすがるように、手を伸ばした。
その華奢な手は、すぐにもふりはらわれて、服の端すらふれることはできないまま。
やがて、そのすがたはみえなくなる]
[自警団に連れ去られた先で。
倒れている自分の体を見下ろしながら、小さく溜息を吐いた。
動かない自分の身体は、死んでいるのか。それとも、気絶しているのか。おそらくは前者だろう。]
……やれやれ。
病み上がりで体力が落ちていたのが敗因、というところでしょうか。
まあ、今日のところはか弱いレディたちが私のような目に合わされずに済んだだけでも、よしとしておきましょうか。
[もうひとつ溜息を吐いて、空を見上げる。
その後、こてっと小首を傾げて。口元に手を添えて、何か考えていた。]
…………この騒動の結末が気になりますから、当面はここで見守るとしましょう。
ですが、すべてが片付いた後には、祖国に戻りあちらの霊能者を通じて女王陛下と女王騎士団長、それに父上にも報告をしなくてはいけませんね。
…………仮にも女王騎士であり、女王国侯爵家の者である私をこのような目にあわせたのですから。
相応の報いは覚悟しておいて貰いましょうか。
[争う音は小さくなり消えていった。
左手で口元を覆う。
命の遣り取りをしたことがないわけではない。自分の手で奪ったことすらある。だからそう取り乱しはしない。けれど]
悪い。ちと。
頭冷やさせて、くれ。
[視界が揺れた。周囲の音が遠ざかっていく。
座ったままだったからテーブルに伏せることができたのは、不幸中の幸いだった*かもしれない*]
[会話の最中、席で茶を飲むダーヴィッドをちらと見て、密かに懐に手を入れる。
……が]
あ?
[勢いよく開く扉と、入り込んでくる団員たち。
手を離し、代わりに腕を組んで動向を見やった。
やがて彼らが取り囲んだのは、男が先程目の端に捉えた――余所者]
……へぇ。
[目を細め、僅かに息を洩らすだけで、男は腕組みしたまま動かない。
彼らが扉の向こうに消えるまで、その行動を黙認するかのように、ただ静観していた]
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