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─酒場→宿泊部屋─
[廊下を歩くとその先に人影を発見する。開かれた扉の前、立ち尽くすような姿。異変を感じそちらへと近付いた]
おい、何かあった……!?
[訊ね切る前に部屋の中が目に入った。クロエの肩越しに見た部屋には鉄錆の匂いが充満している。その中には生を失った少女と、表情を変えぬ青年の姿があった]
っ…!
……ライヒアルト、おめぇがやったのか?
[クロエを庇い、赤が目に入らないように前に出る。まさかと思いながらライヒアルトにはそんな言葉を投げかけた。今、自分とクロエ以外に身の潔白が為されている者は、居ない]
[やがて、フーゴーが現れ、学者とクロエの間に入る。]
仮に私が、リディさんを殺した者だとします。
第一発見者が一番に疑われると知っていて、
その場に居るような者だと…――。
[思っているのか?と問いかけに問いを返すように
視線をフーゴーに向ける。
その言葉を持っても、疑われるなら仕方ない
とでも言いたげに一つ無表情に溜息を吐く。]
それで、リディさんの遺体はどうしますか。
…――葬るのならば、私が運びましょう。
[言葉の内容だけは言葉足らずでも、人として死者を悼むもの。
けれど声音は無機質に事務的に*響いて*]
『裏をかいて』って言葉がある限り、それを鵜呑みには出来ん。
……今の俺は疑うのが仕事だ。
[紛れた人狼を見つけるために。『占い師』と自称する二人の力以外にも見極める情報は必要だった。猶予はそんなに無いのだから]
このままにはしておけんだろう。
自衛団の連中が葬るのを許してくれるなら、だがな。
[この状況でも普段と変わらぬライヒアルトを見て彼らしいとは思えど、それがまた異様にも見えて。向ける視線は常より冷えた、厳しいものとなっている*だろう*]
嗚呼、なるほど…――。
確かにそうですね。
[フーゴーの言葉に思いもよらなかった、という風に頷いて。
けれど、疑われることに対して負の感情は見えない。
まるで自身が疑われることに、関心がないように。]
でしたら、自衛団にお伺いを立てにいくべきですね。
一応、保護者扱いのようでしたので、
私から尋ねた方がよろしいですか?
それとも、結社であるフーゴーさんが取り仕切りますか?
[そして、そこにまだクロエが居たのなら、
彼女に視線を一度向けて、
フーゴーにまた視線を戻す。]
弔いのことばかりでなく、
他のことも貴方が取り仕切った方が良いのでは?
クロエさんに負担を掛けたくないのならば。
[伝承に則るならば――そうでなくとも、
その方が現状では理に適っていると。
昨夜のように勝手に自衛団に判断されることを厭うならば、
――そう言外で*告げた*]
―宿屋―
[聞こえた独白。人の死に何も思えない、感じない、という言葉。
死を身近に感じるが故に、悲しみを強く覚える自分とは、真逆とも言える視点]
……なん、で。
[そんな風に言えるの、と。
続ける声は掠れて。
常と変わらぬ挨拶に、戸惑いは募る。
大丈夫か、と言う問いにも答えられず、ただ、あかとくろとの間で視線を行き来させて]
あ……旦那。
[飛び込んできたフーゴーの声に、惚けた声をあげる。
見えなくなるいろ。
しかし、焼きついたそれは容易には消えず。
二人のやり取りを聞きつつ、自分自身を抱えるように両肩を掴む。
そうする事で、震えを押さえ込みたくて**]
[そして自身が振った話題に何かを思い出して、
もう一度、震えているクロエに視線を向ける。]
私が『こう』であるのは、
医者は、ある種の病気だろうと云ってました。
…――私は私でしかないのですけれどね。
[この時代、精神に関する研究は発展していたとは云い難い。
そんな中、仮としても『病気』と診断された学者は、
運が良いのか悪いのか。]
嗚呼、それと…――。
フーゴーさんが、守護者の存在に期待しているなら、
期待しない方が宜しいです。
亡くなってしまえば、護ることなど、きっと出来ないでしょうから。
[そしてもう一つ大したことはないように、
さらりと言葉足らずに、守護者について*述べるのだった*]
……自衛団には俺が行って来る。
アイツらに俺が結社であることはまだ伝えてなかったしな。
[何を言おうが態度の変わらぬライヒアルト。それが不気味に、そしてどこか腹立たしく思う。どうしてそんな態度で居られるのかと]
仕切りに関してはてめぇに言われるまでもねぇ。
そのつもりで明かしたんだからな。
[言葉遣いは負感情を抱いた相手へ向けるものに変化している。壊れている、と言いたくなるような心持にあった]
…阿呆。
守護者は期待するもんじゃねぇ。
存在そのものが牽制の材料だ。
それにてめぇの言うことが事実と言う証拠もねぇからな。
[ライヒアルトが何を言いたいのかを察しつつ、別の利用方法を口にする。話は半信半疑で聞き、クロエを促し酒場へと向かった]
おめぇはここに居ろ。
落ち着くのに飲み物が必要だったらリッキーに言ってくれ。
[クロエを適当な席に座らせ、言葉を紡ぐ。リッキーに状況を説明してから、「詰所に行って来る」と言い残し宿屋を*出た*]
…――そうですか。
[それは自衛団への報告と、
仕切りに関しての2つに対しての応え。]
確かにそうですけれど。
貴方は知っていたほうが動きやすいと思ったので、
お教えしたわけですが。
[相手の負の感情に対して気がついているのかいないのか、
首を傾げながら淡々と変わらぬ口調が続く。]
ええ、真実を証明することほど、困難なものはありません。
研究も小さな情報の積み重ねが重要なのですから。
[やはり疑われることには頓着した様子はない。
クロエを促すフーゴーに向ける視線は、
その小さな結果の積み重ねが彼に出来るのかと問うようなもの。
やがて彼らが去るのなら、ホツリと零れる言葉。]
…――困りましたね。
このような時、どう反応すれば良いか本当に分かりません。
奇異の目で見られることには、慣れていますけれど。
[途方にくれたように呟く表情はしかし、やはり動かぬままで。
鳥籠を酒場に残したまま、学者の歩む方向は森。
緑に迎えられた学者は、そこではほんの微かに、
穏やかな表情を*浮かべていた*]
―回想―
[フーゴーが結社の人だと言うのに、驚いたように瞬き。
口を挟むまもなく、皆が次々と喋るのをただ聞いている。
回復したらしいダーヴィッドの姿にほっとしていた所で、不意に自警団員がやってくれば怯えたような視線を向ける。
そして連れて行かれるダーヴィッド。
ソレを止めようとしたヴィリーが自警団員に殴られる姿。
あまりの驚きと怯えに動くこともできず、傍にいたクロエが震える手で腕をつかんでも、ただ呆然としていた。]
あ……
[クロエが駆け出して往くのが見える。
ドアの外の喧騒が収まり――ぎゅ、と瞳を閉じた。
これでは、まるで殺させるために助けたみたいじゃないか、と唇をかみ締める。
外に出て行く勇気もなく、倒れたヴィリーを運べるわけでもなく、ただその傍で立ち尽くしていればフーゴーとクロエが戻ってくるのが見え。]
あ、うん……クロエ、大丈夫?
[クロエを部屋へ、とフーゴーに頼まれたなら、僅かばかり色を没くした顔で頷き。
大丈夫だと言うクロエに心配そうな視線は向けるものの、無理に居座ることはしなかった。]
うん……じゃあゆっくり、休んで。
[こくりと頷き。
酒場へと戻る。
占い師と名乗った人たちももう部屋に引き上げた後だろうか。
リッキーに毛布をもらって、ヴィリーの傍に座り込む。
一人で家に帰るのも恐くて、そのまま夜を明かした。]
[うつらうつらとした朝の時間、フーゴーがやってきたことにも気づかない。
ただ、宿の部屋のほうからざわめきが聞こえれば、半分覚醒したような、寝ぼけてるような視線を一度だけ、向けた**]
―回想終了―
―回想・昨夜―
[飛び出してゆくクロエを追いかけるフーゴーの後に続くこともできなかった。
ユリアンから寄越された声に応じることもできなかった。
立ち尽くすゲルダに声を掛けることもできなかった。
戻ってきたクロエの視線を受け止めることもできなかった。
世界が紗に包まれているかのような倦怠感だけがその時の全てだった]
…っそ。
[かなりの時間が経ってからようやく身体を起こした。
酒場の片隅には横になったヴィリーと、隣で座り込み眠っているらしきゲルダ。
そして椅子に座ったままのライヒアルトが居た]
ライヒアルトさんも残ってたのか。
…怖くはねえの?
[起きていれば問いかける。
答えが返れば曖昧な笑みを浮かべ。
それよりも心配が勝つのだと聞けば下を向いただろう]
[それじゃ、と言って酒場を出て行った。
自分の部屋に戻る前、従妹がいるはずの部屋の前で足を止め]
占いじゃ自分の証は立てられない。
…親父さんには悪いが、羨ましいとすら思っちまうよ。
[苦い溜息]
可能性は一つずつ消していってやる。
少なくとも、あいつは…ユリアンは。
[誓うよな言葉に続け、小さな声でおやすみと呟いた]
―回想・朝方―
[ユリアンの部屋の反対側、逆の角部屋で目を覚ました。
荷物の中から革のポーチを取り出し、白い布の上に置かれていたカードケースを仕舞う。
後はいつもと同じに身支度を整えて部屋を出た]
この匂いは。
[鼻にかかったそれが何であるかは容易に想像がついた。
廊下の先には酒場へ入ってゆくクロエとフーゴーの背中。
扉の中を覗けば無表情のライヒアルトが死体の傍にいた]
説明、頼んでいいのかな。
[客観的な状況を聞くことはできただろうか。
感想は特に語らず、分かったと言って酒場へと*向かった*]
―朝・酒場―
[夢現で聞いていた声がちかくなり、クロエがフーゴーにいわれて酒場にやってきたころに、ようやくのそりと動き出す。
ヴィリーはまだ眠ったままだろうか、すこしばかり心配そうな視線を向けてから、クロエや、外に出て行ったライヒアルトを見やる。]
……誰か……が?
[血の匂いは此処まで届かなくても、皆の雰囲気でなんとなく察せられるものがあり。
誰にともなく、小さく呟いた。]
病気……?
[返された言葉に、小さく呟く。
その説明だけで、納得できるかと問われれば、否なのだが。
それ以上追求しても、何かが変わるとは思えず]
……なんか……さびしい、ね。
[極小の呟きは、誰かの耳に届いたか。
フーゴーに促されるまま、酒場へと歩む。
ぶち猫は、ライヒアルトを見て。
それから、ちょこちょこと後を追ってきた]
[酒場につくと、詰め所に行くというフーゴーを見送り。
やや間を置いて現れ、外へと向かったライヒアルトを見送る]
……リっくん、なんか、甘いものほしい……。
あー……レモネード、少し甘めでちょうだい。
あと、ツィンになんか食べさせてあげて。
[リッキーに向けてこう声をかけ。
それから、ゲルダの呟きに、そちらを振り返った]
……リディちゃん、だよ……。
ライ兄さんが、最初に見つけたみたい。
[静かに返す声は、微かに震えを帯びていた]
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