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[異変に動こうとすると左脇腹が重い。刺し傷は内臓には達していなかったが、部位が近い事を思うと冷や汗が流れる。表情には出さない。腰にさしたままのサーベルを片手で握り、支えにするようにしてから、真っすぐに立った。自身の動作は酷く緩慢で無防備に思える。暫くしてから、]
人為的行為と言う事は、
殺 人 か。
これだけ人数が居るのに、
一体、どうやってイレーネのバンドを?
そう、なの?
[ノーラの声にじゃあどうして音も声もしないのかと不安になる]
イレーネさん……。
[ノーラの手が離れた後、ハインリヒの声に頷くと、石になった彼女の名を呼んだ]
[ユリアンのピアノの音色。
キマイラが飛び去った方角は扉が無く、廊下のようなものが見え居た。位置関係を把握するなら、ヘリポートと休憩室の間にまた異なる部屋があるのだろうと思われる。]
/*
うーん、矛盾ない行動って難しい。
ガッチガッチに気にする必要は無いんだろうけど、やっぱ出来るだけ、ね。
そして頭が回んなくなってきたんで寝ます。
おやすみなさい**。
ごめんです、イレーネ……。
[懺悔の言葉と共に演奏を止めた。
部屋から出て行っている人間がいることに気付く余裕は無かった]
――…一度、全員集まろう。
…どこかに。
[ヘルムートにもそう告げて、
ピアノの音が止むと、ユリアンの方へ振り返る。]
……部屋を出るぞ。
[懺悔の言葉に悔しげにまた奥歯を噛みそうになるのを抑えて。
ユリアンに短く声を掛けた。]
先に行くといいです。
僕もすぐ行きます……。
[俯いたまま答えた。
心も体も今はまだ動いてくれそうに無い。
その証拠と言わんばかりに頬を伝うものはまだ止まってくれなかった……]
[ユリアンのピアノの音色は、同じピアノを弾いて居てもイレーネのものとは異なっていた。
──イレーネの旋律は、例えるなら
薄闇に光る、温かな灯火の色。
彼等が知る世界、繋がり、生きている、人々のいとなみ。
流れる時間を示すのは、灯火よりも遠い、星々の光。
先刻ヘリポートで見た広い広い空の色に似ていた。
瞬きをせぬまま、ユリアン音色を想う途中で演奏が終わった。ハインリヒに頷く。]
ユリアン。
―3階廊下―
[休憩室から出るといばらを避けつつ入り口傍の壁に背を寄せる。
その場から直ぐに動こうとはしなかった。
ヘルムートと、傍に居たのならダーヴィッドやエーリッヒにも。
腕を組んで、紺青の眸を向け]
―――…どう、考える?
[それは引き千切られたバンドに対してのものだろう。
視線は、床に落ちる。先程は…その先に、落ちたバンドがあった。]
……どう考えればいい。
[その先の結論は、できれば出したくなかった。]
ユリアン。
おそらく、イレーネは──
君が獣に襲われる事を望まない。
──私も望まない。
後で頼みたい事が有るから、忘れないでくれ。
[まだ動けそうに無いユリアンを残して、彼も廊下へ出る。]
……、 ――… 他者の存在 は
…薄い、ですわよね。
[老人は死んでしまった。
カプセルのErrorのアラートは残らずついていた。
片手を自分の手で抱くような格好。
伏せた眼、空気は重い。]
─ 三階廊下 ─
[顔を上げて首を横に振る。]
全員で固まって
お互いを監視し合った方が良い。
先刻の「一度、全員集まろう」は
そう言う意味だと思ったよ、ハインリヒ。
[壁にもたれ腕を組んだ。]
──冷凍睡眠で眠っていた者が、
不注意の事故でうっかり、
生命線のバンドを断つとは……考え難いな。
[ヘルムートの言葉に]
分かってます、大丈夫です。
頼みたいこと? 了解しました、後ほど伺い、ますです。
[普段ならその場で聞いていたに違いない。
しかし、今は役に立てそうに無い気がしたから聞くことはしなかった。
だけどイレーネを守れなかった自分にもまだ誰かに役に立てる。
それだけで少し立ち上がれそうな気分になってきた]
―3F廊下―
[ヘルムートを横に流し見る。]
……――事故には見えませんでしたわね。
でも、どうして 皆、生きるために…
此処に きた、 はず なの に
[たとえば じぶんは
かえる。 かえるには 外へ ――でも
再び湧き上がって来た記憶を沈めるように
頚を横に振った。代わりに、思考を割り込ませる。
苦しげな響きが聞こえれば其方へ視線を向ける。]
考えたく ない
考えたく
意味などない 意味などないの
帰れない もう いないのに
嘘、 違う
(千切れた記憶)
(違う、と沈ませる)
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