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[いつもと変わらない、無邪気に唄うベアトリーチェの姿が視界に入って。
まるで死神のようだと思う。
死者を連れて行く。迷わないようにね。もう戻ってこないでね]
[例えばベアトリーチェの撫でるものが、可愛いクマのぬいぐるみであったなら。
そうでなくても、平気な顔をしていつものように歌って聞かせる少女のその声に、少しでも悲しみや動揺が感じられたなら。
こうも恐ろしくはなかっただろうに。
せめて怒りであって欲しかったと、ユリアンは思う。
かつて人間であったことを踏みにじり食事途中で散らかされた肉片のような姿に変えられたアーべルを前にして、歌うベアトリーチェ。
鈴の鳴るような声で「よかったね」と、喜ばしい祝福を得た者にかける言葉で語りかける少女。
それを前にして今感じるのは怒りではなかった。これは恐怖だ]
ベアトリーチェ…おまえ、おまえは……
[ベルトに手をやった。そこにナイフがあるはずなのだ。
覆いを外して、刃を向けよう。
そう思っているのに、刃と覆いが触れ合ってカチャカチャ鳴るだけ。
手が震えている]
…にんげんか?化け物じゃないのか?
>>21
かたき…?
[静かな静かな、イレーネの声。
あまりに遠く、霞の向こうからそれが響く。
代わりにはっきりと聞こえるのは、逝ってしまったギュンターの声。
――人狼は人を食べるもの。
御伽噺などではない。その血が現実に今蘇っている。
食べられてしまう。もう逃げられない。
殺せ。武器を取って、誰かを殺せ。
殺される前に、誰かを――]
そうだ殺さなきゃ。アーベルさんの仇…人狼を、殺さなきゃ…
ああだけど――…どうやって?
[悲痛な叫びは喉の奥から、自分でも聞いた事のない声で耳に響く]
アーベルさんでも駄目だったのに…
あの強いアーベルさんでも、負けてしまったのに!
どうやって勝てって言うんだ。どうやって殺せって言うんだよ!!
[ベアトリーチェへの恐怖はあった。
でもそれはユリアンのものと同じではないだろう。
この子は死をいいことだと、本気で思っている。
殺してあげようと、思っている。
ユリアンがベルトに手をやるのにはっとして。
咄嗟にその腕を掴んだ]
だ・・・
[「ダメ」?ほんとうに?とても、危険な子]
>>25
もう駄目なのか…?
[およそ希望というものが見えずに、頭を抱える]
みんな…人狼以外、みんな死んでしまう…?
悲しいかだって?
辛いかって?
もう、見たくないか?
[穏やかな声が怒りを誘う。
顔を上げ、ベアトリーチェを火のような目で見て]
当たり前だ!
おまえはどうなんだ?
悲しくなくて、辛くなくて…これ以上まだ、こんなのを見たいってのか?死ぬのが嫌じゃあ、怖くはないのかよ!
[ユリアンの悲痛な叫びのような言葉に]
どう、やって・・・。
[どうやって?
アーベルは、とても強いと聞いていた。
さっきの仇の言葉に理性が宿っていないことは、明らかだ]
[自分の呟きに、激しく首を横に振った。
そんな。そんな。戦闘なんてしたことは無く。
人狼を、殺すことなんて。
自分はやはり、混乱している。
方法など何も浮かばないのに。何を考えなくてはいけないかも、分からない。分からない。
ベアトリーチェとユリアンのやり取りは耳に入ったが、すり抜けて]
みたくないから。
みせたくないから。
だから、おこしておわらせてあげるの。
わたしはなれてるから、だいじょうぶ。
みんなでやれば いいんだよ。
ひとりじゃだめでも、みんなでやれば。
>>27
[腕を掴んできたイレーネを見る。
その仕草は子供を思わせて、今守るべき対象だと想定することで、勇気を振り起こせる気がした。
そのままベアトリーチェからの、イレーネの盾になるように二人の間に身を佇ませて、いつでも抜けるようにナイフの取っ手を掴んだ。
いなくなったアーベルのように自分も人を守れると信じようとするだけで、震えが小さくなるのが嬉しかった。
金の髪、人形のような顔の小さなベアトリーチェに対峙し続ける。
イレーネの小さな声が耳に届いて、顔を向ける]
――あんたが…何だ?
[ユリアンが自分を守るようにベアトリーチェと対峙して、はっとする]
・・・・・・!
[今どうするべきなのかも、分からず。
もう全てを放棄してしまいたくて。
ユリアンの問いに]
分から、ない・・・分からない。
[ただそう答えるだけ。自分の頭を両手で覆う]
[分からないと答えて、両手で頭を覆うイレーネ。
混乱を無理ないと肯定するように小さく頷いてから、ユリアンは努めてイレーネを背に庇い続ける]
…俺も分からない。アーベルさんの仇…人狼が討てるのかとか、そもそもどいつがそうなのかとか…
でも。
[「見たくない、見せたくないから」
「起こして終わらせてあげる」
「私は慣れてるから大丈夫」
「皆でやればいい」
「一人じゃ駄目でも、皆でやれば」
ユリアンには到底意味の理解できない言葉を呟くベアトリーチェに、油断なく顔を向けたまま]
わけのわからない奴に注意深く目を向けて、妙な事をされないように気をつけて、警戒して…
そうしながら、何とか生き延びる道を考えるくらい…
それくらいなら!
[できたっていいはず。
少女が目の前から立ち去れば、それで良し。
駄目ならばせめてイレーネの手を引き、まだしも理解できる話の叶う人の多く居る筈の屋敷に駆け戻る隙を狙って、*足に力を込める*]
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