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終わらない……それとも。
終わらせない?
[拳握り締めつつ呟いた後、ぎ、と唇をかみ締める。
肩の小鳥が不安げに囀る声が、辛うじて冷静さを繋ぎ止めてくれた]
……だいじょうぶ、だ。
皆に、知らせない、と。
[低く呟く天鵞絨に浮かぶのは。
痛みと憂いと、憤りの混在した、いろ。**]
―回想/談話室―
[ライヒアルトの眉が下がるのがみえて>>43、はっとする。
彼も五年の間、老尼僧の傍にいたのだから名を出せば心が痛むだろう、と。
けれど表情によぎる感情の片鱗に気づくと
彼に気をつかわせてしまったのだとぼんやり理解した。]
――…ええ、あなたの歌が祝福のように聴こえた。
[決して自分には得られぬだろうものに触れた心地がして
少しだけ眩しげに目を細める。
聖堂で暮らしながらも銀の十字架を身につけられなかった女は
彼の視線の先にある銀色に一度視線を遣った。]
そうね。
シスターは皆を愛していたから
皆の為に、祈り、幸あれと願っていたと私も思う。
[こくんと同意の頷きを向けて、見えた苦笑に僅かに眉を下げる。]
[行商人を弔い戻ったイレーネの震え>>39に気づくと
年下の彼女のその手に自分の熱をわけようと手を伸ばした。
編み物をする彼女の器用な指先に目を落とす。]
ありがとう。そうだと嬉しいけど。
[傍らで騎士のように守ってくれる存在は思い浮かばない。
自分は守られるようなものではないと思うけれど
憧れる気持ちも多少なりともあるのは事実で
イレーネの言葉をそっと受け止める。]
少なくとも、イレーネちゃんが大事なお姫様だから
二人の騎士様は守ろうとしたんじゃないかしら。
[マテウスとエーリッヒの二人をちらと見てから
内緒話をするようにイレーネに囁いた。]
[浴室前での護衛などイレーネの為であれば二人の騎士にとっては造作もない事だろう。
自衛団長を発見されたあの朝も寒い外でイレーネの傍についていたエーリッヒ。
老尼僧がみつかったあの時も聞こえた声から付き添っていたはずと思う。
行商人を追いかけたあの時もカルメンの言葉がなくともイレーネの傍についていただろうから。
マテウスにいたっては愛娘のことなのだから当然と思う。
老尼僧の死に衝撃を受けくずおれかけたカルメンを支えてくれたやさしい人だ。
自分の予想ははずれていないと思える。]
イレーネちゃんの為なら少しくらいの寒さもへっちゃらじゃないかしらね。
[行商人の死には結局触れようとはせず、悪戯な言葉を常より多く用いながら
甘えてくれる彼女と共に湯あみをすることにした。
邪魔はするな、と言われてはいたけれど
狙いがいつのまにか変わった事も知らぬまま
ささやかな抵抗のように、その夜は時許す限りイレーネの近くに在った。]
―回想/了―
[渇きが
飢えが
満たされない
エーリッヒでは駄目なのか。
闇の御子たる人狼を見たしてくれるのはやはり……光を行く者か。
ならば───]
―翌朝/個室―
[悪夢をみた。
繋がりがみせた悪夢か不安がみせた悪夢かは知れない。
虫の知らせのような、夢。
誰かの命が奪われようとする夢だった。
自分でない誰かの為に助けを乞う。]
――、 や、 。
こ さないで。
け、て。
[助けて、と、己の声で目が覚める。
誰の為に助けを乞おうとしたのか、それさえもわからぬまま
焦燥に駆られる胸は酷く締め付けられる思いがした。]
[大きく上下する胸を押さえる。
眠る前は部屋をあたためていた暖炉の火も消えて久しく空気は冷たい。
冷たさが肌に触れるのに寒さを覚える余裕もないほどの焦りがある。]
――…、夢。
夢よ、夢なんだから……
[この焦燥も夢が覚えさせたもの。
自分に言い聞かせながら、落ち着こうと深い呼吸を繰り返す。]
………。
[内容を思い出そうとするけれど思い出せず
恐怖と焦りだけがまとわりつくように残っていた。]
[前日と同じ形の、黒の装束を身に纏う。
似合わないと思いながらも他の衣装は華やかすぎて場にも心にもそぐわない。
髪飾りも化粧も施さず、最低限の身だしなみだけ整えた。
思い出したように枕元へと手を伸ばし、とるのは小瓶。
ふたをあけると薔薇の香りがふわと広がる。
好んで使う精油の香をハンカチに数滴含ませて胸元に忍ばせて部屋を出た。]
昨日のクッキー、まだあるかしら。
[気を紛らわせようと意識を別の方向に向けようとする。
けれど、胸元から香る薔薇とは別のにおいが鼻についた。
ピク、と指先が跳ねる。
ぐ、と拳を握り、においを追い辿りついた扉は開かれていた。>>40]
――…。
[ああ、と小さく漏れるのは何かに気づいたような音。
紅く紅く、この場所を彩った血の主は彼女ではない。
彼女が流した血であれば立っている事は出来ないだろう。
真紅の主が誰なのか考える前に、
何かを覆いふくらむ布団へと視線が引き寄せられる。
それが誰であるか知らなければと思うのに
知るのがこわくて動けない。
大きく息を吸い込む。]
……、誰か……っ!
[助けを呼ぶかのように、声を張る。
何かあったと知らせる声とライヒアルトが動くのとどちらが早いか。
いずれにせよ、誰が襲われたかは、望む望まないに関わらず知れるのだろうけど。**]
─ 昨日/→談話室 ─
[イレーネ達と共に談話室へ戻ると、数名の姿が確認出来た。
イレーネが顛末を口にし>>34、僅かに沈黙が落ちる。
それを見て、右手をイレーネの肩にそっと置いた。
カルメンやライヒアルトの言葉に表情もやや和らぐ。
茶を用意される>>44とありがたく頂こうと思考が働くが、それを遮るように左手が僅かに疼いた]
……すまん、先に手を洗ってくる。
[左手に紅が付いたのも事実だったから、一度断りを入れ近場の水場である厨房へ。
娘らが入浴する際の見張りについては耳に届いていたものの、どうするかは恐らく目に見えていただろうから、特に反応はしなかった]
─ 昨日/厨房 ─
[溜めてある水を少し拝借し、左手に流して紅を落とす。
左手が抱いていた熱はなりを潜め、水の冷たさに僅か息を飲んだ]
………………
[紅は流れ行くも、朱は手の中央に咲いたまま。
あの時のような激痛は無いものの、何かを示すように鈍い疼きを残し、やがて消えて行った]
……そうする必要は無かった、か。
[思い起こすのはイレーネがあの時零した言葉>>7。
状況を鑑み、言葉通りに受け取れば、行商人を殺す必要は無かったと取れる]
知っていた?
でもそれなら追いかける前に言うはずだ。
[余計な犠牲は出さない方が良い。
けれど、事前に知る術が無いのだから、手探りにならざるを得ない]
─ 昨日/談話室 ─
[手を洗い終え談話室へと戻り、用意された紅茶を口にし身体を暖める。
食事もしっかり取り、今日は身体を休めるのを優先してそれ以上外には出なかった]
[団長が襲われ、自分の身にも異変をきたし、行商人が殺されるのを見届けた。
今日一日で随分と沢山のことが起きたと思う。
明日もまた何か起きてしまうのではないか。
妙に確信的な予感を抱きつつ、その日も早めに就寝した*]
─ 翌朝/自室 ─
[肉体的、精神的疲労が大きく、眠りは深かった。
どこかで物音があったとしても、起きられぬくらいに。
その深い眠りに水を差したのは、左手に走る痛みだった]
──────ッツ!
[団長を発見した時ほどの激痛では無いが、目覚めるには十分なもの。
起き上がり、呼吸を整えていると、左手の痛みは徐々に治まっていった。
まるで何か異変を告げるような、そんな痛みの現れ方]
………まさか。
[また誰かが、と思考が巡るのは早い。
上着を引っつかみ歩きながら袖を通し、急くようにしながら部屋の扉を開ける。
それと同時、近くで助けを求める声>>58が聞こえた]
─ エーリッヒの部屋 ─
何があった!
[声の場所は直ぐに分かった。
開け放たれた扉、廊下を漂う臭い。
問いはしたが何が起きたかは明白で]
カルメンか?
……イレーネ!
[最初に見えたのは声の主であるらしい女性。
その直ぐ横には娘の姿。
紅いいろが見えて、顔が蒼褪めた]
イレーネ、大丈夫か!
[娘へと駆け寄り両手で頬を包む。
可能ならば、そのまま顔を持ち上げて顔を覗き込もうとするだろう]
[娘に掛かりきりになってしまったため、部屋の中にある布団の膨らみ手を伸ばすことは出来ず。
イレーネの反応如何に関わらず、部屋の外へ連れ出そうとする]
カルメン、一旦出るぞ。
[このまま室内に居ても良くは無いだろうからと、カルメンにも声をかけて移動を促した**]
― 前日/図書室 ―
……色々有るんだなぁ。
――……あ、これだ。
ミリィ、これ。
[図書室に着くと、ライヒアルトから聞いた『おまじない』のある書棚の前に行き、数点を抜き出し。
ペラペラと読み進めていると目的の『おまじない』を見つけて。
メモに書き止めると、着いてきていたいもうとに手渡して。
その後は何かしらの会話をし。]
[あるべき場所にあるべきはずのものがない。
細い喉から漏れるのは引き攣るような音。
手が離れ、持ち上がっていた布団が落ちてまたその人の姿を隠した。]
う そ 。
エーリッヒ、なの ?
どうして、無い、の……
[顔は、頭は、何処に――。
そう思うと同時、弾かれたように辺りを見回す。
家具の陰、寝台の下、クローゼットの中と探してみるが見つからない。]
─ 朝・廊下 ─
[二日酔いに頭をやられフラフラと廊下を歩く。服は返り血で汚れてなんとも酷い有様だった。]
ふふふ…
[だかその表情に商人を手にかけたあとの陰鬱な面持ちなどなく、むしろ上機嫌なぐらいの笑顔であった]
……エーリッヒ?
[いつも何か言えばいちいち返してくるその面倒な男は、今日はやけに静かだった。
一見すればただ眠っているような顔の、違和に気が付くのには少し間が空く。
頭、首、そして本来ならその下に繋がっている筈の――]
―― ッ、
ゃあああああああああああああッ!
[悲鳴を上げたのなんて、これが初めてかも知れない。
声はすぐに止んだが、歯ががちがちと鳴るのは抑えきれなかった]
な、……なんで、 なんで、
人狼……、
[思考が思うように声にならない]
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