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それは……俺だって、そうだった……。
[そう思えたのは、二人だけで。
だからこそ。
病状が悪化するたび、その姿を見せたくなくて、村を離れた。
心配させたくもされたくもなくて]
…………馬鹿野郎が。
お前だって……消えるつもりだろ……ルーツィアと同じに。
いや……あの時は。
俺が、手を離した。
聖痕に負けて。
……雪の中に、置き去りにしたんだ。
[側に居ると誓ったのに、と。小さく呟いて]
[ゆらり、僅かに、ひかりが、強くなる]
怖かった、よ…
[けれど、すぐに薄れて]
いいんだ、キミは、泣かないで…
[ゆらり、ふわり、包むように、撫ぜるように、ひかりは、少女に触れる]
[答えはない。でも、それは答えとして十分で]
……ああ。
だから、俺は、これに従う事を拒んで、抗っている。
これは……大切なものすら、手にかけられる……呪い、だから。
なら、あなたに心はあるんだよ。
私は、あなたの聲を、聴いたもの。
[聴いた――いつ、聴いたのだったっけ?]
[記憶は、ひどく、あやふやで]
泣かないで、
泣いていた、
泣いている。
[触れる光に、くすぐったそうに、目を細めつつ。言葉を繰り返す]
あなたにもイレーネにも…出会わなければ良かった
[小さく口唇からこぼれる]
そうすればあなたを苦しめることも
イレーネを殺してしまうこともなかったのに
[そして]
[ほほえんで]
[抱きしめられ、少女はきょとんとした表情になる]
ありがとう?
[届いた声に、何かを、感じはしたのだけれど]
大切な、ひと……?
[――誰だったっけ]
[目を閉じる]
[感覚は無い筈なのに]
[触れているそれは、あたたかいように思えて]
泣いている……
[――何が? 誰が?]
[触れられた唇に、そっと目蓋を開く]
[白に広がる、黒]
…[手をのばす]
[その口元のあかを拭う]
殺されていればよかった
[でもとつぶやき]
あなたたちとあえて、しあわせだと思うんですよ
あなたが苦しんでいるのに
[触れられた瞬間、蒼の花が激しい痛みを伝える。
拒めと。殺せと。意識に囁く声。
それに、黙れ、といわんばかりに。
蒼の花に、爪を立てる]
お前……ほんとに、馬鹿野郎だなっ……。
[かすれた、声。振り絞るように]
……俺は……かわりたくないから、逆らってるだけだ……。
別に、誰かの……お前のせいだなんて、これっぽっちも……。
[瞬きの間に、彼の姿は見えなくなっていて]
[耳の奥に残る、羽ばたきの音]
いない…… 消えた……
[口の中で呟く]
雪は、冷たくて…… 人は、あたたかくて……
[空を見上げる。何処までも遠い]
[苦痛なのだろうと思う]
[それでも]
馬鹿ですよ、私は。
ずっと、もう、ずっと前から
[微笑みは絶えず]
[抱きしめる][そっと]
――したら……
自分の ものに なると 思った のに
[とおい。とおかった。こぼれることば]
……大切な、ひと……
[もう一度。*目を、閉じる*]
ああ……まったく、どうしようもねぇよな。
[俺もだけどな、と呟いて。
抱きしめられて驚くものの。
逆らう余力もなく。
そのままで]
[ぽふ、ぽふ、と背中をなでて]
[微笑を刻んだまま]
馬鹿ですみません。
[小さく笑って]
あなたは……
[言いかけて]
[口ごもった][目を伏せる]
[一つ、頷く]
……終りにしたい。
誰かに、罪悪感を与えたり、自己嫌悪に陥ったり……もう、繰り返したくない……。
[だから、と。そこで言葉は途切れるものの。
言わずとも、意味は届くだろうから、と]
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