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確かに、そうかも知れないですけど。
[淡々とした言葉に、小さく息を吐く。
瞳には、やや、冥い陰り。
それは、浄めた憑魔の最期の言葉を思い出しての事だろうか]
それにしたって、普通はもっと、気味悪がりそうなものなのに。
……冷静、ですよね。
………、よす。
[軽く手を上げる。
少しぎこちないのは、仕方ないだろうか。
扉から離れて、1歩、2歩と足を進め、
寝ているアズマを通り過ぎてフェンスまで向かう]
んー。
ジンセイについて。
悩んでた。
[ガシャン、揺れる音。
視線を上げた先、青空が広がる。
頭に乗ったままの仔犬も、同じように見上げた]
[似たようなことを、フユにも言われたな、と思い出す。僅かに笑みが浮かんだか]
………目に見える恐怖の方が、相手にしやすいから、な。
[ぽつりと、言葉が零れたのは、ポケットのメモを見たばかりだったからかもしれない]
何か、良くは分かんねーけど。
あいつを殺したのは、ヒトじゃないんだって聞いた。
[桜を見上げたまま、淡とした声で。]
そいつが今残ってる奴の中に居るんだったら。
[目の前の少女を疑うことはしないのか。]
――殺す。
[僅かとはいえ浮かんだ笑みに、ほんの一瞬、戸惑うか。
それでも、刹那覗いた柔らかさは掻き消えて]
目に見える恐怖……確かに、そうかも知れないですね。
見えないものは、必要以上に怖いもの、だから。
[ぽつり、と呟かれた言葉に、小さく呟いて]
見えないから……道に、迷うんだろうし。
[続いたそれは、どこか独り言めいていたか]
[よ、と小さな声を上げて立ち上がる。
一晩中寝転がっていた所為か、背中が小さく音を立てた。]
おや、奇遇ッスね。ちょーど俺も悩んでました。
[何処か棒読みにも近い発音でけら、と薄い笑みを浮かべ。
自らもフェンスまで歩み寄った。
ショウからは、少し離れた位置まで移動して
ゆるりと眼下に広がる景色を眺める。
桜の木の下に佇む2つの人影を見つけて、僅かに目を見開き]
……、あれは
視線を向けられた少女は、くすり、と笑んだように見えたかも知れない。
その笑みが何を意味するかは、はっきりとは読み取れぬだろうけれど。
人は、迷うものだ。
迷わなければ、辿り着けない場所もある…と、
これは、親父の受け売りだが。
[マコトの顔をじっと見つめる]
………迷っているのか?
[フユによって持ち去られた肢体
その死体の血を啜り、肉を喰い千切り、臓物を貪り喰うフユの姿をただ見下ろす
その瞳には、死体を辱められる怒りも体を失う悲しみも宿ってはいない
ただ一つその瞳に宿る感情。それは]
…………可哀想な先輩
[フユに対する憐れみ]
これの……。
[言いつつ、手にした木刀を見やり]
剣の師も、そんな事を言ってましたね。
[小さな声で答え、それから、投げられた問いに表情を引き締める]
迷いは……捨てた、つもりです。
今の俺には、なすべき事は、一つだけ、ですから。
[静かな、答え。
瞳は静かで、でも、どこか冥く]
………そっか。
[返す言葉は、短い]
なんで。
こーなっちゃったんだろーな。
誰がどうかなんて、
わかんなくて。
みんな信じたいし、
みんな信じらんねえ。
[ぽそり、呟きを落とした。
小さな声に反応して、視線をゆるりと動かす。
人影が見えた。]
本当は、
もう誰でも良いから
もしかして、妹さんを殺したかも知れない奴が
居るかも知れないんだったら、
手当り次第に殺して
しまいたいと
そう思うんじゃないの?
[フユはヨウスケの笑みを、目を見つめた。]
[そうか、という言葉に、一つ、頷いて。
唐突に変わった語調に、僅かに首を傾げる]
悪趣味なこと……ですか?
まあ……答えられる、事なら。
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