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おはよう。
…アベル?
今日はまだ、見てない、、よ。
[起きたばかりなので、挨拶はおはようのままで。][兄のような人の名を問われても、そう応える。]
[動きを注視するのは、彼女の時の癖か。]
そっか。
[パチり、][火の弾ける音に人の声が重なる]
ええ。
場所も、必要でしょうから。
[扉を押し開く。
温度がぐっと下がる。
乾きかけの髪が、風に煽られるのが鬱陶しかった。
白い雪が、陽のひかりが、目に痛い]
人狼も、人。
[初めて聞いた言葉には、少し驚いた様子で。]
[だが小さな笑いに、こちらも笑う。]
そうは見てくれない人の方が多いデスけどね。
それはきっと、正しい。
[どこか乾いた笑みだった。]
[同質の存在の気配]
[すんと鼻を一つ鳴らす]
[アーベルと野菜のトレードをしていた娘]
[あの騒がしい声は もう聞こえない]
[共に過ごした短い時間と][こみ上げる喪失感と]
[全てを胸にただ歌う][世界に向けた子守唄]
[ぼんやりとしたまま、また、歌を紡いで]
あー……そういや。
忘れてたなあ。
[ふと、ある事を思い出す]
この曲の、楽譜のコト……。
確か、慰霊碑の、前だか横だかに埋めてあんだっけ……。
っても、大分前の事らしいし。
もう、ぼろぼろかねぇ……。
[父さんがここに来てすぐ、だもんな、と。
ため息混じりの呟きが零れる]
[目を擦って、歩み出した]
[ざく、ざくり、]
[雪を踏む音は大きく響いて聞こえる]
[村の方角から歩いて来る人影が、視界に映った。
足を止めて、顔を向ける]
さて、な。
どこへでも行けるかもしれんぞ。
ここを綺麗に片付ければ。
自由に。
[投げやりな声にも揶揄を含みながら。][楽しげに。]
くく…。
大事だろうが、なかろうが。血肉の味は変わらなかった訳か。
[所詮、餌と。][呟いて。]
[内に眠る卵は少しだけ、揺れる。][靡くように。]
[空気を震わすことのない歌声。]
だれ?
[ゆるりと首を傾げた。
何処かに落としてきてしまったのか、淡とした、感情のない声。]
……片付ければ、ね。
そんなコトしなくても、俺は。
……自由に、なってやらぁ……。
[呟かれたのは、密かに固めつつある、決意。
だが、それを遮るように。鈍い痛みが走る]
……ああ、そうかも、しれねぇなっ……。
っても。
あの、あおいとこは。
また、あまさが違ってたけど。
[揶揄の響きに苛立ちつつ、吐き捨てるように返し。
また、違和感]
……なんか……今までと、違う……?
[疑問のコエは、ごく自然に、零れて]
[出て行くユリアンを止める事なく見送り。][その視力の衰えは見えていたが、今はどうでも良く思い。]
[ぱちりと薪が爆ぜて。][その下でゆっくり燃えている香は、その姿を半分ほど失っただろうか。]
青年 アーベルは、貴族 ミハエル を能力(襲う)の対象に選びました。
[意識は浮かび上がる。鮮明にはならぬままに]
あかいはな さかそう
しろいゆきのうえ たいりんの
[呟くのは、最初の切欠となった]
あおいはな ちらそう
くるしまぬよう あかいろにそめて
[あの時失われていた記憶は殆ど戻った]
システムだからって。
諦めることはないのだと。
希望もあることを知っているのだと。
そうも、言っていたんだっけ。
[けれども、それはアーベルではないようだったから、声をかけることはしなかった。青はよく似ていても、違った]
……やっぱり、森かなあ。
[事件が起こってから、踏み入ったことはない]
[空を見上げる。まだ、明るかった。
いなければいいんだけれど。
呟いて、歩を進める]
―二階・自室―
[いつ部屋に戻ったのかは覚えていない]
[ただ、目覚めて、昨日までの事を思い返す]
……エーリッヒさん。
[目の前で消えたもの。
だけど、それは彼が同じように他の誰かにしたことで]
[誰かがこれからするかもしれないことで]
……終わらせるには、見つけなくてはいけない?
[人狼を]
[だけど自分にその術は無くて]
――でも。
壊さないことには、終わらない。
止まることは、ない。
[だから、あの時もあんな結果になってしまった]
時は川の流れのように変わらない。
場所は全てが決するまで開かない。
選べるのは。
命を、どうするのかだけ。
[自嘲の笑み]
無駄になんか、できるわけ、なかったのにね。
[男は集会所の手前で、人影を見つけた]
ユリアン?
[立ち止まった、足元の雪に、獣の足跡。けれどそれは、今となっては物珍しいとも思えない]
[ユリアンの事は、信じて良いのかとも思う]
[だけど、昨夜の出来事は]
……影響を受けるのでしょうか。
組み込まれたものではない、人も…いずれは。
[溜息をつく]
[自分とて例外ではない]
[慣れてしまった血の匂い]
[終わらせなければ、と言う思い…それは死を望むことで]
わたくしは……
[その先は、黙して心の奥に]
[ドアを叩く音]
[誰何に返るのはクレメンスの声]
……リディさんが……?
[手伝いを、との声に頷いて、リディの元に向かう]
[ベッドの上の赤。慣れてしまった匂い]
[リディの元に居るイレーネに声を掛け、共にリディをきれいにしていく]
[言葉は少なく]
[やがて全てが終われば、誰かが埋葬を始めるのだろうか]
[もう何も言わぬ少女に別れの祈りを]
[そして言葉少なくそこを後にする]
なるほど、それが貴様の今の望みか。
[大事なものを守りたい。][自由になりたい。][渇きを満たされたい。]
[そんな沢山の想いの中から、今はそれを選んだのかと。]
[滲み出る苛立ちには、やはり笑みが浮かぶ。][からかって楽しんでいるような。][自覚はないが。]
…違う?
[違う、には心当たりを探しかね少し思案したが。][内で眠る白い卵の震えに気づけば、嗚呼と、呟いて。]
…これの所為か。
そこから見えるかは分からんが。
[内に抱く卵を、ほんの少し外側に出す。][見えなくても、より鮮明に感じ取ることが出来るように。]
ブリジットの意識だ。向こうで起きぬように閉じてはあるが。
[卵はまた少し、震えた。]
[自室に戻る]
[持ち込んだ荷物の中から、取り出すもの]
[清められた銀の短剣。本来は護りのための]
「もし、神の花嫁として屈辱を受けるときがあれば、この剣で胸を突きなさい」
[それが、隠された本当の理由]
…使わないですめばいいと、思っていましたのに。
[修道服の、隠しポケットに、それを忍ばせる]
[守るために……それとも……]
[ユリアンが扉に向かう]
[ため息を吐いた]
ちょっと待ちなさい
[が、そのまま行ってしまった]
…暖かい飲み物でも持っていけば良いのにねぇ。
そう思いませんか?
[ブリジットを見る]
ここにいる人たちは、いわば被害者ですからねぇ。
ギュンターさんも、満月の時に集めなければ良かったでしょうに。
[昔を思い出す。
先陣を切っていたのは、リューディアだった。
面白そうなものを見つけた、そう言って駆け出していく。
僕がそれに続いて、アーベルが呆れたように、それでも後を追う。
目的は、なんでもよかった。
小さな花でも、珍しい獣でも、ちょっとした、隠れ家でも。
ただ、三人で駆け回る。
それだけが、楽しかった]
[吐き出す息は白い。
踏んでいく雪には足跡が残る]
[目を開く。
寝ていなさいと言われたけれど、それでも]
リディちゃんたちに、笑われるかな。
それとも、怒られるかな。
…アーベルさんにも。
でもね、決めたよ。
[音楽室から持ち出してきた黒いケース。
中にあるのは琥珀色の楽器]
自分の為に。
条件を崩すよ。
[ゆっくりと、その楽器を手に取った。
最初の手習いだけで、弾かないまま10年。
まともな曲は弾けるはずもなく]
……ああ。
この、くだらねぇシステムとやらに……。
逆らってやる。
全力で。
俺は、俺の意思で、生きてやる……。
[コトバを紡げば紡ぐほど、痛みは高まるが、それは押さえ込む。
コエの響きから感じる苛立ちすら、堪える力へと変えて]
って……ブリスの、意識?
なんでそれが、そこに……。
[白い卵。それは、見ることは叶わないが、少女の気配は感じ取れた。
しかし、彼女とここを完全に切り離すために、彼らがいたのではなかったかと思いつつ。
問いは、自然と投げられて]
[人の声に近い楽器。
それを使って訴えかける]
私は、ここにいます。
だからあなたの姿を見せてください。
[無心に弾くそれは。
独特の旋律となって流れるだろうか]
あなたの真実を。
教えてください。
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