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そうか。
私の「当たり前」は、異なる。
それだけの話か。
[彼女は組織の中で生きて来た。
それだけ、と切り捨てたにしては、珍しく、僅かに俯き伏せた眼は思案げないろを見せる。
ゆるりと顔を上げると、腕を解いて鞘を戻した。
今、戦う意志はない、という表明。]
大切なものが居る事は大切なことだ、と。
そう言っていたのは「ブリジット」だったかな。
あれも、貴様らを羨んでいたようだ。
[悪趣味との一言には、違いないと同意を示した。]
[声が返って来たのは、その時。
二人との対話を一時中断して、口許に手を添えた。
一拍を置いて。
指の合間から除く朱唇が、微かに動く。]
[「不要品」の一言には動揺を見せる。
今しがた囚われていた記憶、それを刺激する一言だから]
今は…?
[含みのある言葉に眉を寄せる。
だが続いたのは合理的であり、自分たちにとってもまず間違いなく正しくあろう言葉で]
それは…そうだな。
[内心ではこっそりと「ここが治療所なのか」と確認していたりもしたのだが。ユーディットの様子も測りながら息を吐いた]
――
[響く声。 たった一度、ゆるりと瞬いた。
言葉を返す事無く、揺れる鈴から視線を逸らして。
鉄の扉が、ぽっかりと口を開けた先へと乗り込む。
地上へと向けて動き出す小さな箱の中で
何かを見上げるように、ゆるりと視線を上へ向ける。]
……、駒でも構わないと。
そう思っていた筈じゃないですか。
[違ったんですかね。ぽつりと、独りごちて。]
そりゃ、全員の『当たり前』が同じ訳ねぇさ。
同じだったら……こんなくだらない遊びなんざ、なかったろうしよ。
[静かに言って。
戦意がない、という事を感じたなら、こちらも四肢の力を抜いて、伏す]
大切なものは、支えになる……強さになる。
……勿論、弱さにもなるがな。
[呟くように言って。羨んでいた、との言葉にやや、首を傾げる]
……俺と……イレーネ、を?
[零れた疑問は、不思議そうな響きを帯びて]
[小さく、溜息を零す。]
[僅かな浮遊感と共に、低く響いていた駆動音が止まる。
白の壁に隠された、鉄扉がゆっくりと開いて。]
―地上・モニタールーム―
――…、…!
[モニタの前に居座る、思いがけない人物に僅か眉を寄せた。
『下』のモニタでは、友人が映っていないのを確認していたから
てっきり、一緒に居るとばかり思っていたのに。]
研究生 エーリッヒが「時間を進める」を選択しました。
不要品じゃないもん。
ボク、不要じゃないもん…。
[ブリジットの言葉には、泣きそうな表情になり、手に持った棒を一度地面に打ちつけた。]
/中/
明日っーか今日は遅番シフトだから、朝、30分遅く入ればよいし。
その分、あっちで寝られるから、多少の無理は効くんだけど。
とにかく、人がいないとどうにもできないよ。よ。
[そのまま、何かをぶつぶつと呟きながら。
ブリジットの肩に手を伸ばし、避けられなければ突き飛ばすようにしてメディカルルームを出る。
そのまま向かいのhの部屋へと入り、バタンと音も荒々しく扉を*閉めた*]
…………?
[何が動く音。モニタールームの椅子で聞く。
先に球体2つが音の発生源にレンズを向け。
ワンテンポ遅れて少女自身も振り返る。]
…………。
[目に入る姿にいささか安堵。
何故なら、彼は確かユリアンのおともだち。]
くだらない、ね。
そうだな。
全く以て、くだらない――
[口許を歪める。
それは形づくられたものよりも余程、笑みに見えた。
愉快さを感じているとは思えなかったろうが。]
己には何も無いから、
有る者に対して、羨望の念を抱く。
浅ましいが、人間らしい感情だよ。
好意と同時に、嫉んでもいたわけだな。
だからこそ、イレーネ=ライアーに挑んだのもあったのだろう。
[避けられなかったか、避けなかったか。
押されて、倒れはしなかったものの、壁に背をぶつける形になる。
息を吐き出した。]
全く。
子供を虐めているような気分になるな。
[億劫そうに言って、前髪を掻き上げた。]
―回想―
[払われた手は抗う事なく寝台の上に戻る。
喉を鳴らす仕草には]
どうして、笑う――の。
[冷えた色に臆する事はない。
慣れているのだから。
だからこそ、温かさにも敏感でその尊さも知っている]
―回想終了―
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