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―回想・広場―
[オーフェンのそばにより、声をかけ、体をゆすれば、やがて意識は戻るだろうか。しかしそれでオーフェンがずいぶんと弱っている事にようやく気がつき、表情がわずかに曇る。口が、への字になった]
君、一体何を隠している。
[――と、凛とした声が響いた。
自らの力について語る、エリカの声。
銀の翼を広げた少女は月下に宣言する。ネロが堕天尸ではないと。
不信と好奇にざわめく周囲。リディアが堕天尸ではないとの言葉には、昨日のエリカの様子を、短く言い添えたかもしれない。
そうしてオーフェンに傍らに膝をついたまま、一部始終を聞き、見届けた。
やがて話が終われば、鳥と少女はこちらにやってくる。
金の鳥は、ふわり、ふわりとあたりを舞う。思わずそれに目を奪われていると、エリカの声がして>>77 >>79疑わしそうに言うだろうか]
今度こそ、本当に大丈夫なのか。
……連日倒れている患者を放って置けとは、薬師にずいぶんな注文だな。
先生は、自分の意思で出て行く人は放っておけばいいといっていたけれど…少し残念そうだったよ。
[アヤメの喝が聞こえれば楽しげに目を細めるだろうか。オーフェンの言葉には>>83わずか、考え込んで]
ああ、あの子の事だから、樹の中に入っても、構わず笑っているのはあり得そうだ。……寂しいか?
……飛行、気をつけて。
[言うと、去り行く白い翼を見送り、視線を広場に戻す。周囲が未だ、遠巻きなざわめきに包まれているのを見て、軽く肩をすくめた。そのまま早足で広場を横切り、エリカを追っていったアヤメに追いつこうとする。広場を出て、人気のないところまで行けば、オーフェンが虚の気配に当てられやすいと、先生が考えたことを話すだろうか]
……だから。虚の影響からオーフェンを護るような術が使えるのならば、使ってあげられないか。
[と、相談した。用が済めば、夜闇に銀の光を零す翼を広げ、飛び立つ]
― 森中 ―
ラスさん、来なかった……ね
……家の場所、聞いておけば、よかった……
[立ち去る寸前、何気なく地に落ちている薄金の羽を拾う]
……え、なに?
[痺れるような感覚が全身に走る。間をおいて、快感。驚きの表情で羽をみつめ、ラスがしていたように羽根を]
――くる
――くる
――くるり
[羽根の表と裏が、交互に変わる。何かに憑かれたような瞳は、やがて縦に細まっていく*]
―夜・結界樹―
[アヤメと別れて向かったのは、施療院ではなく……結界樹。降り立ち、幹に背をとんと預けて、頭上に広がる葉の天蓋と、合間に差し込む月の光を見つめる。]
クローディア、ジョエル、リディア。こっちは相変わらず、落ち着かない。
…………………。
ネロ。翼がなくなって、上手く飛べなくなって……それは、本当に楽しい世界だったか?私は、怖い。
[ちいさな、ちいさな声。語りかけるでもない、呼びかけの形を取っただけの、独り言。そのまま、しばらく動きたくなくて、結界樹の根元に座り込んだ。風除けに翼で体を覆うようにしているうちに、やがて、そのまま眠りに落ちる。……目がさめて慌てて施療院に戻ってから、*先生に存分にお小言を食らうことになった*]
[ゆると、翼を開いて顔を上げた。
そろそろ動けるだけの力は回復していた。
ゆさゆさと、翼を動かしてみる。動く。
目を暫く瞑ってその眉を寄せると、漆黒の翼は薄金へと変わる――戻る。
…たとえ、仮初でも。]
じゃ、さんきゅ。行くわ。
俺確認したい事もあるし、またな。
[相変わらず本を読む部屋の主に手を上げると、翼を広げてベランダの手すりを蹴り、空へと飛び出した。]
─回想─
[エリカを追って、駆け出した歩みはカレンの声に止まり]
……オーフェンを?
ああ……確かに、あの子は『虚』の影響を受けやすいらしいね……。
護りの陣を向けるかどうかはともかく、制御の仕方は教えてやれる。次に会ったら話しとくよ。
[軽く請け負い、飛び立つ姿を見送って。
追いついたエリカの謝罪の言葉にははあ、とため息]
なんで、謝るかね、この子は。
……アタシは、謝ってほしくてアンタの世話役買って出たんじゃないんだからね?
[冗談めいた言葉を返して。
裾を掠める手に気づいたなら、ひょい、と当たり前のよに引いて行ったやも知れず]
[次の日、いつもどおりの施療院の仕事をこなしているところに、重い翼の音が降ってくる。露台から姿を現したのは、スティーヴ。ラスの父親が熱を出し、ラス自身も急病のようだという。なるべく早く来しいと言い残し、スティーヴが去った後]
残りは私がやっておく。先生。早いところ、行ってあげてほしい。
[言って仕事を切り上げさせて先生を送り出し、自分は施療院で留守番をする]
……ラスか。昨日も、無理をさせてしまったかな。大した事がなければ、いいけれど。
[竜胆色の髪の青年を案じて呟いた]
[家に落ち着いて間もなくの尋ね人。
向けられた小言にははいはい、と頷いておいた。
一応、エリカを狙う『虚』を弾いた事だけは伝えるものの、その時拾った気配の事には触れず]
……オーフェンが……力を持つ者?
[聞かされた話に、カレンの相談が重なる。
これはやっぱり後で話すようか、と思いつつ。
自室に戻り、ため息一つ]
……それにしても。
[窓辺により、空を見上げる。
瞳は、暗い]
……あんの、バカ……。
もし、アタシの予想が正しいんだったら……。
[ぐ、と握り締められる右手。
震える声に、ラウルがぱささ、と羽ばたいた]
……思いっきり、引っ叩いてやる……!
[零れ落ちたのは、ある意味物騒な決意。
捕えた『虚』、それと共に感じた気配が馴染み深かったが故に、言葉は強く。
ただ、俯きがちの瞳に宿る想いが何かは、例えそこに他者がいたとて読み取れまいが]
― 聖殿前 ―
[焦点の合わない瞳、ふらふらと聖殿前へ。長老への目通りを頼む]
……こんにちは
その、堕天尸のことで、お話が……
[聖殿のお付の人々から向けられる、訝しげな視線。忌み、嘲り、侮蔑。それらを意にも介さず、口元に薄く笑みを浮かべ]
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