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[かの男と、人に殺された哀れな女中の埋葬が終わると、ギルバートはふらふらとした足取りで自室に戻っていった。それから幾時間か、泥のように眠り、夜中にふと目を覚ました。]
[ベッドから起き上がり、彼は月に向かって祈りを捧げる。その傍らには、倉庫から拾ってきた、小さな聖書があった。]
……主よ。
あなたが力を与え賜うたのは、あの傷のある男でしょうか。
私は愚か者であるがゆえに、
隣人をすぐにそれと信じることができません。
「汝の隣人を愛せよ」とおっしゃった貴方は、
隣人よりも近しき男に裏切られ、十字架に掛けられました…
隣人をそう簡単に愛することができぬと我らに伝えたのは、
他ならぬ、貴方なのですよ……
主よ。
何故貴方は、この世に「疑念」を残して、かの地へと旅立ったのでしょうか……
……どんな気分かなって、思ったの。
[それ以上の言葉は次がず、一端口を噤んだ。
視線を戸口の男へと流す]
お早う、ナット。
ナットも、無事だったんだね。
[その場に漂う雰囲気に一瞬言葉を失ったのは否めない。]
[僅かの沈黙の後]
――ええ。お陰様で。何とかね。
[男の視線は、隻眼の男と少年の、交互に向けられた。]
だいたい……
[月明かりに照らされた窓の外を眺め、盛大に溜息をつく。]
『真夜中に女が一人歩きをしていたから、怪しいと思って殺しました』
……だなんて、ジャック・ザ・リッパーが残した供述調書とさほど変わらないだろうに。そんな殺人鬼を信じろっていう方がおかしいってば。
まあ、それこそ判別している姿を見ればどうにでも信頼できるんだが、な。それを嫌っている可能性がある…。「見たければ見ろ」だなんて、堂々としすぎているだろ。
或いは、彼は……
[もうひとつ、溜息。]
……他人に信頼させて生き残りたい、悪魔の遣いか……
[少し頭を傾けてクインジーをまじまじと見た後]
ああ、そうだ。
キャロルさん…でしたか。あの方亡くなりました。
終焉の死者に襲われたようです。
[思い出したように、話を切り出した。]
無事を喜んでいいのかは、わからないけれど。
[カップを己の手に戻し、足を揺らす。
吐き出す息は、やや物憂げ]
いつまで続くのかな、
終わるまでか。
[眼下に広がる泉を見て、もの思いに耽る。]
スワン・レイクかと思いきや。
出てきたのは優雅な白鳥ではなく、人喰い狼ときたものだ。
せめて黒鳥の姫君であれば、その美を堪能できたのだがな。
……まあ、白鳥の姫君が出てきたところで。
そいつを演じる人間は、悪魔の遣いたる「黒鳥」をも演じるわけだしな……信用ならんさ。
[そう呟いて、ベッドに潜る。
夜歩きをして、ジャック・ザ・リッパーに殺されぬように。]
流れ者 ギルバートは、お尋ね者 クインジー を投票先に選びました。
流れ者 ギルバートが「時間を進める」を選択しました
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>ギルバート
寝落ちは身体にも悪いから気を付けるのが良いんだよ。
寒くなって来てるしね。
寝落ちる前に退席符だ!
[淡白な反応の少年を見遣る]
……あまり驚きませんね。
まあもうそろそろ慣れっこになってきてますけどね。
私も、薄情ですが自分じゃなくて良かったという気分ですよ。
[口の端にちらりと皮肉な笑みらしきものが浮かんだ。]
まあ何時終わるかは、皆目見当がつきません。
見分ける人が居ないのだし、この怖い人が殺して回るしか方法が無いと言うのでしょう?
[ちらとクインジーを横目で見て]
当たりを引くまで待つしかないなんて。
その前に自分が死んだらそれでお終いですから。
驚いて嘆いて、それで帰ってくるのなら、
するのかもしれない。
でも、そんなこともないから。
[カップに口はつけぬまま、
ゆらゆら揺れる水面を見る。
眼が映すは己の眼、男の笑みは映さなかった]
死んだら、終わり。
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