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[閉じていた蒼氷を開き、緋を見やる。
周囲にあるのはただ、静謐]
[『死が音のない世界だったら耐えられない』]
[言ったのは誰だったか。
ピアノの前で笑う者。
記憶の霞は少しずつ薄れ行く]
……うっとおしい。
[零れた呟きは何に対してか。
晴れきらぬ霞か、その奥に囚われる自身か。
それすらも定かではなく。
そんな様子に、紅蛇が伺うよに闇色の眼を向ける]
[紅蛇の視線など気にした様子もなく。
触れられぬ手を緋に伸ばす]
彼岸の花、死人の花……後、なんだったか。
他にも呼び方があるんだよな、これ。
[好ましい花としての認識はなく。
故に、その名を気にした事はない。
だが、今はその縛の内に己があると認めるが故か。
今更のよに、それが気にかかった]
……一回、聞いた気がするんだが……思いだせんな。
[チリン]
[鈴を鳴らし、緋の花の中、女は立ち上がる]
[誰かの声がした事に漸く気付いたかの様]
[緩やかに眼差しを巡らせる]
お前は知る必要がない
[ラッセルの言葉>>64に、それだけを返す]
お前はそんなものを知る必要はないんだ
誰の死も、お前が導く必要はない
……お前にとって、良いものではない
[口元に浮かぶのは、困ったような表情]
[男は、それからキャロルの話を聞き、ナサニエルの言葉>>71に肩をすくめた]
残念ながら、己の言葉じゃないぞ
言ったのは番人だ
[情報は増えることなく城に戻る。廊下を進むと変な匂いが微かに漂い、片方の眉を上げ様子を伺う。短い赤の髪が廊下の薄暗がりに消えるのを見、声を上げず追いかけ始める]
…一人ならちょうどいい。
ちっと刃物見せたくらいで騒がれるのも厄介だ。
[人気のないところまで言ってから声をかけ、足を止めさせる。人形のような表情でキャロルの死を話すのを聞きながら、片手でポケットの中の鞘を外す]
[響く鈴の音。
先に捉えたのは、真紅の蛇。
鎌首が揺らぎ、闇色の眼が異なる方を向く]
……ん。
[その動きにつられるよに。
蒼氷は緋から離れ、闇色の見やるもの──緋の中に鮮やかな、金を見る]
……あんたか、こっちに来てたのは。
[問う声は、静か]
死んだら終わり
なら、死なないように、殺せばいい
[ナサニエルにのみ向けた言葉]
[その後、空気は変わり、男はキッチンを出、一度部屋に戻る]
[*窓の外は緋い*]
…何かしら。
[廊下に漂うのは、ここ数日で染み付いた血の臭い、だけではなく。
妙な臭いに眉を寄せながら、また薄暗がりに消えた影に気付くこともなく、辿り着いたのは数日振りの広間でした。]
はい。
誰かが来る事が分かっていたのでございましょうか?
[女は瞬き、問い掛ける]
[そしてまた、問いを重ねた]
此処は彼岸にございましょうか?
[流れたのは一筋の緋。ナイフに付いた血を舐め上げた顔に愉悦が浮かぶ。芳醇な酒に酩酊しジビエを口にした時と同じ表情で、城中に響く大声を上げる]
終焉の獣がいたぞーーーっ!!
赤毛のちびだ!!
[逃がさないと*ぎらり目が光る*]
ああ。
これが、感づいてた。
[これ、という言葉と共に、蒼氷は腕に絡みつく真紅の蛇へと向く。
ぞんざいな物言いが不服なのか、紅蛇はしゅ、と抗議するよな音を立てた]
そう、こちらは彼岸。
とはいえ、あちらの連中と同じく、囚われたままに変わりはないらしい。
[その不満は無視して。
向けられた問いに、静かに返す]
!
[空気を震わすような声に、振り返り廊下に眼を向けます。
声が誰のものかを理解する前に、その内容に意識が向きました。]
…だから、言ったのに。
[直接ではないにしても。
零れ出た言葉は、意外に淡白でした。]
[気を張っていたことで神経も研ぎ澄まされていたのだろう。遠く離れていた場所からの大声にも直ぐに気付くことが出来た]
あの声…飲んだくれのっ!
[何故終焉の使者だと分かったのか、そんな疑問も忘れ声が響いた方へと駆け出す]
これ、ですか。
…あか。
[生前は白の巻かれていた場所を注視する]
もう痛みはしないのでございましょうか。
[ずれた言の葉を、くれないが零した]
そう。花の名と、同じ。
私は囚われとは言え、此処から離れようとはそもそも思いませぬが。
[紅蛇は、しゅるり、と腕の周囲を巡り、鎌首をもたげる。
闇色の眼は、どこか興味深げにあか、と呟く女を見つめ]
痛みを感じる器からは、切り離されたからな。
[どこかずれた問いに、軽く肩を竦め]
……離れようと思わない、か。
随分と、思い入れがあるようで。
[“危険”は既に承知の上だった。
同胞から伝えられた情報に拠って]
[男の振るう刃など、平時であれば躱すのは難しくはない。
されど一手遅れたのは、身体を覆う倦怠感の所為。
ナイフは傷を負っていた左腕を掠め、新たに滴を落とす。
――目に映る、鮮やかな、あか。
花よりも甘い、甘い毒。
くらりとする。]
っ、
いきなり、何――…
[あげる非難の声を上回る大音量。
素の足は床を蹴り、逆方向へと駆ける]
[夜か朝かは分からぬ折に、ふと目を覚まして身体を起こす。]
―――だるい。
[それでも身体を起こし、日課となって久しい柔軟体操を始める。
1、2、3とフランス語で数え、身体をしならせ――]
[――大声が、城内にこだました。]
死なないように殺せばねえ……
生憎、あなたみたいに犯人かどうかもわからない人間をあっさり殺せるほど度胸が据わってる人間ばかりじゃないんですよ。
ある程度良心を誤魔化せる、免罪符みたいなのが欲しいものなんですよ。
[再度嘆息。]
[会話しながらシンクに水を注いで、汚れた鍋を浸した。]
[口許のくれないが笑みを模った]
[男の腕の上、這う蛇にあかのネイルに飾られた白の指先を伸ばす]
ご機嫌よう。
お気づき下さり、ありがとうございます。
[挨拶などを、告げてみた]
[痛みが無いのは、確かにと頷いて]
思い入れが有る…。
いいえ、ただあかを好いと感じるだけにございます。
[或いは]
[音には成らず、口許のくれないだけが動いた]
―――誰だ!?
[目を閉じ、耳を澄ませる。]
あの声、ネズミ男………!
[慌てた様子でシャツを着込み、部屋を飛び出す。]
どうした!ネズミ男ッ!!
何があったんだ!!
[何を叫んでいるのか、内容は分からない。それ故に、ギルバートは声がする方へと駆け出した――]
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