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[流れたのは一筋の緋。ナイフに付いた血を舐め上げた顔に愉悦が浮かぶ。芳醇な酒に酩酊しジビエを口にした時と同じ表情で、城中に響く大声を上げる]
終焉の獣がいたぞーーーっ!!
赤毛のちびだ!!
[逃がさないと*ぎらり目が光る*]
!
[空気を震わすような声に、振り返り廊下に眼を向けます。
声が誰のものかを理解する前に、その内容に意識が向きました。]
…だから、言ったのに。
[直接ではないにしても。
零れ出た言葉は、意外に淡白でした。]
[気を張っていたことで神経も研ぎ澄まされていたのだろう。遠く離れていた場所からの大声にも直ぐに気付くことが出来た]
あの声…飲んだくれのっ!
[何故終焉の使者だと分かったのか、そんな疑問も忘れ声が響いた方へと駆け出す]
[“危険”は既に承知の上だった。
同胞から伝えられた情報に拠って]
[男の振るう刃など、平時であれば躱すのは難しくはない。
されど一手遅れたのは、身体を覆う倦怠感の所為。
ナイフは傷を負っていた左腕を掠め、新たに滴を落とす。
――目に映る、鮮やかな、あか。
花よりも甘い、甘い毒。
くらりとする。]
っ、
いきなり、何――…
[あげる非難の声を上回る大音量。
素の足は床を蹴り、逆方向へと駆ける]
[夜か朝かは分からぬ折に、ふと目を覚まして身体を起こす。]
―――だるい。
[それでも身体を起こし、日課となって久しい柔軟体操を始める。
1、2、3とフランス語で数え、身体をしならせ――]
[――大声が、城内にこだました。]
死なないように殺せばねえ……
生憎、あなたみたいに犯人かどうかもわからない人間をあっさり殺せるほど度胸が据わってる人間ばかりじゃないんですよ。
ある程度良心を誤魔化せる、免罪符みたいなのが欲しいものなんですよ。
[再度嘆息。]
[会話しながらシンクに水を注いで、汚れた鍋を浸した。]
―――誰だ!?
[目を閉じ、耳を澄ませる。]
あの声、ネズミ男………!
[慌てた様子でシャツを着込み、部屋を飛び出す。]
どうした!ネズミ男ッ!!
何があったんだ!!
[何を叫んでいるのか、内容は分からない。それ故に、ギルバートは声がする方へと駆け出した――]
[声の源に人が集う。
逃れる先に、宛てはない。
一先ず玄関から外へ出ようとして、
前方には男の影、階上には少女の姿。
背後には、あの“鼠”も来ているのだろう]
鬼ごっこは得意じゃないんだけれど。
[呟きつつ、選んだ先は外ではなく階段。
一段飛ばしに駆け昇る]
[歩みを進めて行けば、向かって来る足音が聞こえます。
近くの部屋に隠れました。
目の前を少年が駆けて行くのを確認してから、何も知らぬ振りをして廊下へと出て来ます。
恐らくは追って来ているであろう者を、少しでも足止めする為に。
それに何の意味もなくても、できることといえばそのくらいでした。]
[階段を降りようと向かったところで件の少年が駆け上がって来るのが見えた]
っ、ラッセル!
[立ち位置から立ちはだかる形になるだろうか。クインジーが護りたいと思った人物。しかし彼は不精髭の男に言わせれば終焉の獣だと言う。信ずるに足るを考えれば、自分はどちらにつくことになるか──答えは、一つ]
……なんだ?
ネズミ男に危害が……?
いや。そういう類の話じゃあ無さそうだ。
[音を立てずに階段を降りる。いくら朝でも、獣の巣くう城の中で警戒を解くわけにはいかぬのだ――…]
[ギロリ。
琥珀色の右目が、周囲を見渡す。]
[小さくとも、城と呼ばれる程の場所。
階段の幅は、ゆうに人が三人ばかり通れる程。
四足の獣の如く身を屈めて脇を擦り抜け、背後を奪おうとする]
[一言の断りもなくナイフを振るったのは、相手が獣だったことを思えば結果的には正解だったのだろう。逃げ出した少年を追いかける。走りながら叫ぶのはさすがに無理]
獣だっ! 追え!
[途中で問う声に短く返し、剥き出しのナイフ片手に廊下を走り階段を下りる]
[「ネズミ男」の声が、先ほどよりもくっきりと聞こえてきた。]
……獣?誰がだ……?
[足音を立てず、ひとつ、ふたつ、階段を降りる。]
(獣を告発する声ならば、きっとその先に「逃げている」人間がいる……。
落ち着け。耳を澄ませろ。
………見極めるんだ。)
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