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カヤだぁ?
[名前を聞くと、苦々しげに頭をかく]
あー……ったく。
まあ、散々っぱら状況的にはそうであると言われてたからしゃーねえっちゃあしゃーねえんだろうけどよ。
ローザん時共々、いまいち気に食わねえな。
―――で?証拠はなんだったんだ?
『目撃証言。それから、昨日は事件が起きなかったことからも明らかだろう』
目撃証言については、散々聞いた。そこに異論を挟むつもりはねえ。だが、それだけか?それは具体的な証拠ってやつかい?なら、アタイもアンタを事件の直前にベッティや団長と一緒にいるところを見たって言えば、有力な証拠になるのか?……違うだろ。
それに―――。
[昨日、去り際にハンスから聞いた言葉を思い出す]
単独犯じゃねえってのは確実なんだろ?それなら、昨日事件が起こってないってのは、全く証拠にもなりゃしねえ。
つまり……アンタ達が言ってる証拠ってのは、ボロボロに積み上げられた程度の証拠なんだよ。
─翌日・宿屋─
[目覚めた男は外へ出る準備をする]
[紙片を隠した荷物はそのままにし]
[ジーンズの左のポケットに白い術符があるのを確認]
[胸ポケットから媒体を混ぜた手巻きタバコを取り出し口に咥えた]
…さぁて、行くとするか。
[戦場にでも赴くような心地]
[真実を知るため]
[疑問をぶつけるため]
[己が制約を全うするため]
[不敵な笑みを湛えたまま、宿の外へと足を踏み出した]
―自宅・自室―
[しばらく意識を澄ませていたものの、届くものはなく。
波長がズレたり、絶たれたり、という気配もなくて]
……にーさん。
無事、か……。
[続く言葉は声にならない。
零れたのは、重苦しい吐息一つ]
に、して、も……。
きっ……つ、い、これ。
二回は……無理、かも……。
[のし掛かるような疲労に、掠れた呟きを落とすのと。
意識が途切れて倒れ込むのは、*どちらが先か*]
[レナーテが次々と上げる反論に、目の前の男は「ぐ」とうめいた。
だが、すぐに気を取り直したように二の句を吐く]
『……それでも、だ。
事件に関与している可能性はとても高い。なら、この先厳しく尋問すれば何かが―――』
―――おい。言っておくがな。
[男の言葉は途中で切られた。
レナーテの声は、細く、鋭い]
犯人と確定もしてねえ奴にひでえことすんなら、こっちもそれ相応の考えがあるぜ。それを覚悟してやるか、あくまで、紳士的に話を聞きだすってんなら、構わねえがな。
[それは、あからさまな脅しの言葉。その言葉を吐くときのレナーテはいつもの調子ではなく、外へもれ出る圧倒的な威圧感。野獣を目の前にしたときのようなぬぐってもぬぐいきれないような、内にこもる恐怖を引き出させるには充分な迫力を持っていた]
『……っ!?』
[一笑に付すどころか、怒ることも出来ずに、その雰囲気に飲まれた自警団が口をぱくぱくと動かした]
[ほんの少しの間、レナーテが刃の切っ先のような鋭い目で自警団を見渡していたが、不意に表情を崩し、笑いながら]
……ま。
いくらなんでもそこまでやりゃあ、街からの評判も最低まで下がるんだと分かってっから大丈夫だと思うがな。
それにそんな集団じゃないって、信じていいんだよな?
『………………む、無論だ』
[長い沈黙の末、やっとのことでレナーテに気圧された自警団がそれだけを紡いだ]
んじゃま、今日はこれで失礼させてもらうぜ。
またな。
[そう言って、ひらひらと手を振りながら詰め所から出て行ったレナーテをしばらく見送ったまま固まっていた団員が、やがて大きな息を吐くと、細々と呟いた]
『……な、なんだ、あれ……?
まるで、野放しにされているモンスターじゃねえか……』
『……おっぱいでかいのになあ』
―――露店巡り―――
ふーむ。
カヤやローザが犯人じゃないって思うのはいいけど、それ以外が全く進まんな。
どうしたもんか。
[そんなことをぼやきながら、24個目の大判焼きを口に放り込む]
他の奴はどうなってんのかね。
ま。ヴィリー以外は荒事に向いて無さそうなのばっかりなんで、あんま危ないことに頭突っ込んでなければいいんだがなあ……おっと、噂をすれば影か。
[27個目の大判焼きを飲み下すと、今名前に出ていた人物―――ヴィリーが歩いているのが見えて、レナーテがそちらに近づいていった]
よっ。ヴィリー。
経過具合はどんなもんだい?
─ →広場・露店付近─
[目的地は教会]
[そこに目的の人物が確実に居るかは分からないが]
[可能性が一番高い]
[その場所を目指すべく大通りを歩き、広場へと差し掛かった]
…よぉ、筋肉馬鹿。
[もう少しどうにかならんのかと言う呼び名で相手を呼び]
[口元に薄ら笑いを浮かべた]
まぁ、上々ってとこか。
これから取材だ。
[指を鳴らし、未だ火を灯して居なかった手巻きタバコに火をつける]
[薫りを漂わせぬ文字通りの紫煙が立ち上った]
[呼び名には全く気にしたそぶりも無く、ヴィリーの答えを聞くと]
ほー。
さすが、たいしたもんだな。
こっちはさっぱりでなあ。昨日は事件が起こってもいねえから、ますます分からん。
[事件についての調査は、本当に全く進んでいないのが実情であった]
まあ、アンタや、他の人が解決してくれるもんだと信じているけどな。
荒事なら、手助けも出来るもんだがね。
[そんなことを言いながら笑ったが、不意に相手の目を見据えて、少しだけ真剣な顔で続きを話す]
―――アンタのこれからやることに、手助けいるかい?
へぇ、誰も消えてねぇのか。
それは初耳だな。
[己に対するものが失敗したとまではまだ知らず]
荒事な。
その内手を借りるかもしれん。
犯人を捕まえるにしても、横暴な自衛団を抑えるにしても。
[そんなことを言いながら]
[真剣な表情で問われることに、薄ら笑いを浮かべたまま]
──いや。
今のところ必要は無い。
必要があれば、その時言う。
犯人をしょっ引く時とか、な。
[相手が戦いに長けているというのなら]
[男の雰囲気が戦場に向かう覚悟に似ているというのを感じることが出来るだろうか]
―自宅―
[昨晩の出来事は知らず、朝目覚めて軽く身支度を整えて、一番にするのは朝食の支度。
楽団は今日も、楽器の音色より閑古鳥の方が勝っているのだろう]
――…どうなったのかな。
[ぽつりと呟く。
焼きたてのパンは少しばかり、焦げていた]
ん。
まあ、今回は見送ったのか、それとも、他の妨害があって事件が起きなかったのかは、アタイの頭じゃわかんねえけどよ。
[続けて発せられた横暴な自警団のセリフには、ニッと笑いながら]
自警団には釘を刺しておいたよ。
捕まえるのはしゃーねえとして、手荒なことはすんじゃねえってな。
多分、少しは効果あるんじゃねえかな。
[そんなことを言いながらも、最初見たとき同様目つきや、雰囲気が違うのは、薄ら笑いを浮かべたままでも伝わってきていた。
これから先に、何をするのかもある程度予想はついた。だが、それでも、相手が必要ないと言うのならば]
―――そか。分かった。
ま。アンタは地雷だからな。爆発するときに周りに被害を与えたくないんだろうし、今回は見送っておくよ。
精々、爆発しないように頑張れ。
─自宅・自室─
[目覚めを呼び込んだのは、朝の陽射しと気遣うよに巡る風。
崩れ落ちた不自然な姿勢で寝ていたためか、身体の節々が痛むものの]
……確かめ、いかないと。
[昨夜の出来事が意味すること、それを確かめずにはいられなくて。
ふる、と一度首を振るとやや覚束ない足取りで、部屋を出た]
にしても、制御具あってもこんだけ疲れるとか……どんだけ。
……無茶すぎるっての、御師さん……。
[口をつくのは、愚痴めいた言葉]
どちらにせよ、被害が出無かったのは僥倖だろ。
自衛団の方も了解だ。
効果があるならそれで良い。
[連行された者を心配しているわけではないが]
[それが無いに越したことは無い]
[被疑者として連行された無実の者の安全確保も]
[行商人との契約だったから]
……ばぁか。
地雷は爆発しねぇと効果がねぇんだぜ。
[爆発しないよう、との忠告にはくつりと笑みを浮かべた]
[しないはずがないとでも言うように]
要件はそれだけか?
それなら俺は行く。
──……ああ、何か他に情報が欲しけりゃハンスを頼れ。
あいつも調べるっつってたからな。
[それだけを告げ、その場を立ち去ろうとする]
[紫煙がゆらり、宙へと立ち上り霧散して行った]
ははっ。
いいじゃねえか。たまには爆発しない地雷があってもよ。
[笑いながら返し、立ち去ろうとすると、ひらりと手を振って]
おお。邪魔したな。
気ぃつけて、行ってこい……ん。ハンス?師匠さんか。
分かった。そうするよ。
[去り際に、情報を商品だとするヴィリーからそんな言葉が漏れ出ると、いよいよ持って二度と会えないようなそぶりにすら聞こえてきたが、それでもレナーテは笑みを絶やさない]
んじゃ、またな。
─自宅─
[ゆっくり歩く事でひっくり返るのはどうにか免れつつ、廊下を進み。
出る前に、水を一杯、と思ったのは良かったのか悪かったのか]
……ありゃ。
[思わず、惚けた声が上がる。
進んだ先にあったのは、家事に勤しむ姉の姿]
[ひら、と女剣士に対して後ろ手に手を振って]
[目的地目指し歩き始める]
…爆発するかどうかは、あいつの返答次第だろうな。
[振った方の手で手巻きタバコを摘み]
[紫煙を吐き出しながら呟いた]
[問い詰めてどんな反応が返って来るのかは分からない]
[穏便に済むならそれに越したことは無いが]
[そうじゃないなら──]
…ま、あいつの話を聞いてから、だな。
[手巻きタバコを戻すと、また口元に不敵な笑みが浮かび上がった]
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