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―廃墟―
[路地の一つに足を向けたら背筋がゾクリとした。
何の気配も無い。だが今ここに踏み込むのは良くないと、本能的な何かが感じ取る]
…やめとこ。
[もう一度意識を澄ませる。
耳に届いたのは鍵盤の奏でる旋律]
んー、余裕あるんだなー。
[誰の手によるものかまでは分からない。
そちらに足を向け始めてすぐに]
にゃっ!?
[響いた別の音にぴくりと動きを止めた]
─廃墟・中央近辺ビル屋上─
[ふわ、と舞い降りた先。
飴色はやはり、一瞬だけ銀へと惹かれるが、すぐに狐へと向き直る]
……そーだねー、やること決まっちゃってる状態だし。
それより何より……。
[やや低くなる、声。
左手が、右手の銀の蔦をつい、と撫でる]
……殴る、って。決めたから。絶対、殴る。
……Sturm,Anfang!
[言葉と共に、銀の蔦は銀の戦輪へと形を変え、右の手に。
直後、低い体勢で駆け出して距離を詰め、横に構えた刃の輪を左から右へ向け横一文字に薙ぎ払った]
[屋根の上にいるため、見下ろす形で一部始終をみていたまま営業スマイルで]
こうして、面と向かって会うのは初めてでしょうかねぇ〜。ブラウンさんですよね。
私なりのおもてなしはいかがでしょうか〜?
[一切悪気はない笑みである]
嗚呼。噂には聞いていたがねぇ。
初めまして、と言うべきかな。
『ザ・フール』のマスター、ディーノ君?
[瘤が出来てそうな頭には触れずに]
こうしてみると、おじさんの方が『愚者』に見えるねぇ。
[く、く、と小さく笑う]
[二人から同じようなことを言われて、あぁ、と零して]
まぁなぁ、元気だけがとりえだから、俺。
[言葉の内容までは知られていないかと、少し安心したようで笑みは少し柔らかくなり]
あ、怪我なら平気。
久しぶりに派手にやられて骨が折れたけど。
[さらっと言ってへらっと笑う。
嘘は言っていない、だからどう取られるかは気にしない]
[銀狼は屋上の隅へと待機させ、『デュエル』の邪魔にならないようにする]
おっふぉ!?
なんぞ怒っちょおか!?
[急に距離を詰められたことよりも、殴ると言われたことにわざとらしく驚きの色を出す。そんなことをしながらも、足元の影がせり上がり両腕へと纏わりついて。現れる幅広の刃を備えた男の得物、トンファーブレード。己が右から迫る戦輪に対し右の得物を持ち上げ打ち合わせるようにし。次いで左の得物の鋭い先端を、脇の位置からエリカの腹部目掛けて突き出した]
おやおや、噂になるようなことをした覚えはなかったのですがね〜。
[笑みを浮かべるそれはむしろ白々しさほど感じるだろうか]
ですがしってらっしゃるなら光栄といったとことでしょうかねぇ〜…ま、普段とは違って、今はなんの不思議でもないでしょうけど
いえいえ、あなたは愚者ではございませんよ〜。あなたは…人の負の部分をたくさん浴びて生きていながらも良くも悪くも人間的に見えますしねぇ〜。
私の適当さには到底及びませんよ〜
[と、くく、と小さく笑うブラウンへやんわりと否定の言葉を投げて]
では、お互い目的も同じことでしょうし、やりましょうか
[屋根の上。そこより更にゆらりと浮き上がり。片手の中にある銀縁のトランプを十五枚。
それをブラウンの体中に特にこだわるほどの狙いもなく一斉に放つ]
元気なのは良いことですよ。
元気がなくちゃ何にもできないもの。
[青の花を手にしたまま伸び上がろうとして。
一瞬痛みに強張り、脱力する。
ある程度の治癒を受けたとはいえ、完治に遠ければ当然だが]
まあ、カードマスターとして集まってる人たちだし。
苦労するのは当然だと思うけど。
[そして、思いっきり認識間違い]
[実際、男には傷一つない]
[が]
[服があちこち破損していては、どうにもおかしいことになるのだが。
特に足元の焼け焦げと、左肩の大きな破れは]
…骨が、って。
そ、それは痛そう、な…?
[けれど、言葉と反する様相に首を傾げ。
念のため、と、いった風情で]
…治療は、必要でしょうか……?
そうかい?
"此処"でなくても、裏でお前さんの名前を聞いたんだがねぇ。
[良い意味か、悪い意味でか。
それは言わずに奇術師を見上げる]
テキトーに見えて、ソレが適当って事もあるモンだ。
クソ真面目に生きたって、たった一つの"破滅"でどう転ぶか分からない。
なら…お前さんのような生き方が一番"賢い"のかも知れん。
[否定の言葉には疑問の言葉を投げかける。
答えを期待しているわけではないのは、右手をポケットから出して『ジ・タワー』のカードを軽く見せたので分かるだろうか]
だろうねぇ。
ま。俺程度の"障害"で、そう簡単に崩れてくれるなよ?
[かぁん。
金タライを蹴り上げると左手でキャッチ。ソレを盾にディーノとの距離を縮めようと前屈みで走る]
[横薙ぎの一閃は受け止められ、動きの勢いが削がれる。
急制動にバランスを崩しつつ、後ろに飛びずさる事で突きの一撃は避けた]
怒るもなにもっ!
乙女の純真、惑わした罪は、重いっ!
[翼の生み出す揚力で体勢を整え、手にした輪をびし!と突きつけながらきっぱりと言い切る。
きっちりしっかり、目はマジだった]
さって、と。
近接戦のレンジは、同じくらいかな……Sturm,Teilung!
[銀を二つに分けながら宙へと舞い。
左手の一本は残したまま、右手の一本を、勢いをつけて投げつける。
念の込められた輪の軌道は、直線ではなくジグザグ不規則。それが狙うのは、狐の右の肩]
あー、びっくりしたー。
[金属製の何かが落ちた音らしいと遅れて認識する。
音の跡を追おうとしてたせいで酷く大きく聞こえたようだ]
向こうの音も消えちゃった。
でもってこの気配は、動き始めたってことかなー。
[近くのビルに空色を向け、外壁をひょいひょいと駆け上る]
あの翼は雷鳴のおねーさんだね。
でもって今の音は、手品師さんたちか。
[少し離れた場所と、すぐ先で始まった戦闘を交互に見た]
空元気かもしれないけどなぁ。
[へら、っと。
マイルズが辛そうにしてるのには僅か顔を顰め]
あんたは相当酷そうだなぁ…あの瓦礫の中じゃ無理もないけど…よく生きてたな、あんた。
お互い、挑んだ相手が悪かったかねぇ。
本当はお前さんから色々奪うつもりだったんだけどなぁ、俺。
[さらっと。不穏だが多分深い意味はない、多分]
あ、いやいや、ほら「物の例え」ってやつ?
骨は折れてないから大丈夫だぜ?
[治療を申し出るロザリーに、申し訳なさそうにそう返して、大げさに腕を動かしてみる]
[実際、骨は折れていない
今は]
さてさて、何が賢いか。何が賢くないかは。各々の判断するところでしょうねぇ〜
いえいえ、人間なんて塔でなくても石ころでもつまずく生き物ですよ〜
[暢気な口調でありながらも、目は猟犬より離さないで]
そんな使いかたしますかぁ〜。まいっちゃいますねぇ〜
[タライを盾に前進されたことで的を失い突き立つカード。それを見もせず、両手を前に突き出し力なく垂れさげると、鈍く輝くトランプが滝のように落ちて一つの形…針山の壁を形成する]
手品にはこれはつき物ですよねぇ〜
[暢気にいいながら、その壁をは向かってくるブラウンへとのしかかるように傾いて倒れこむ]
はっは、参るのはこっちだと思うがねぇ。
頭に瘤は出来るし…
[針山の壁を見やれば小さく笑い]
カードを使わされるんだからねぇ。
――『破滅の塔』!!
[倒れてくる壁よりもカードが光を放つ方が早いか。
男の足下から針山の壁よりも高い塔がそびえ立つ。
そして、頂上に立つ男は小さく笑った]
ほれ。追いついたぜ。
[とん、と塔から屋根へと飛ぶと同時に、左手の甲から銃身が出てきて。
特にねらい打つわけでもなく、ディーノに向かって乱射した]
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