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謝れば、いいって、もんじゃ、ない、よ……!
[それでも、口をつくのはこんな言葉。
ヴィリーの言葉には、小さく頷いて、手当ての様子を見守る。
途中、ゲルダからも、落ち着くように諭されて。
少しずつ、気持ちは静まっていった]
[タオルをフーゴー達のところへ持ってきたリッキーは、続けて頼まれた灰皿をウェンデルへと用意し。状況を見ておろおろとした表情になっている]
傷口をタオルで直接縛ってやれ。
手首のは間接的にも対処しておく必要があるな。
[ヴィリーの手を借りながら、所謂直接圧迫止血や止血帯法を利用して傷口をそれぞれ押さえて行く。一通りが終わった頃、アーベルも誰かの手を借りて起き上がれるくらいにはなっているだろうか]
……それだけのことは、した。
[許せないというヴィリーに返す]
それでも。ごめん。
[クロエに言う。
フーゴーに動けるかと問われれば頷きを返し]
一人じゃちょっと。無理だけど。
[ユリアンの嘲笑は睨もうとして失敗した。
今度は疲れから目を閉じた]
[アーベルの返答に、「やれやれ」と息を吐く]
ヴィリー、クロエ、こいつを部屋に放り込んで来い。
この様子じゃどの道しばらく動けねぇだろ。
休ませておけ。
[そう指示を出して、フーゴーはアーベルの傍から離れた]
[相手から何か返ったにせよ返らないにせよ、続けて何か言うことはない。
指示の声を横に、男はリッキーから灰皿を受け取って常のように火を点けた。
その頃には遺体はもう移動していただろうか。
彼の倒れたその場所を眺めながら、天井まで紫煙を上らせる。
一点を見つめている筈の目は何処か遠く、いつしか笑みは失せていた]
……アーベルが人狼だった場合は、仲間を売ってまでやる可能性はあるんじゃねぇかね。
自ら死にかけながら仲間である人狼を殺す……普通ならあり得ないと思うだろ?
[ユリアンとウェンデルの言葉に対し、そう言葉を紡ぐ。それはあの状態になったアーベルさえも未だ疑いの対象だとしていると見えるか]
人狼が一匹だとは限らんしな……。
過去の系譜では二匹三匹居たこともあるらしい。
[重ねて謝られれば、それ以上は言えず。
視界をぼやけさせるものを拭って、一つ、息を吐いた]
……ホント、に。
ばかぁ……。
[まだ少しだけ、震える声で、呟くように言って。
フーゴーの言葉に、一つ、頷く]
わかった。
……ばかやんないように、ウチが、しっかり、見張ってる。
[返す声は、泣きかけた反動なのか、比較的しっかりとしていたけれど。
それが、違う意味での虚勢──意地張りなのは、誰の目にも*明らかか*]
……ふぅん。
確かに、裏をかくにゃぁいい手段かも知れんが。
ちぃと、リスクが高いようにも思うがねぇ。
[煙草を指で挟んで口から離し、フーゴーを横目で見た]
あぁ。
人狼は群れで行動するたぁ、聞いたコトあるな。
[言葉と共に深く、煙混じりの息を吐いた]
リスクが高くても、それで信じられて処刑対象に上がらないのであれば、生き延びる可能性は見えて来る。
…ま、可能性と推測の域は出ないがね。
この手段を選んだかどうかなんざ、人狼の連中にしか分からん。
[言って、軽く肩を竦めた]
今回この島に来たのが一匹だったってぇならそれはそれで良いんだが…。
何匹居るのかまでは分からねぇ。
まだしばらく容疑者扱いは変わらねぇだろう。
……人狼による被害が無くなるまでは。
…ちと出て来るな。
自衛団に報告して来る。
[ウェンデルだけでなく他の者にも出かける旨を伝え、フーゴーは宿屋を出た。今日は連行に来なくても良いと言うことと、人狼が見つかったと言うことを*伝えるために*]
泣かせたかったわけじゃ、ないんだけどな…。
[泣き声ではなくなったもののどこか張り詰めているクロエの声に、口にするつもりのなかった内心が零れる]
遠くて悪いんだけど。
[フーゴーに言われたクロエとヴィリーに頭を下げた。
意地だけでは歩けなかったが、自業自得だからというのか、少しでも寄りかからないようにして奥の部屋へと*向かった*]
どうかね。
奴等、そこまで賢いようにゃ思えなかったが。
……まぁ、そりゃそうだ。
[肩を竦める様を見、煙草を咥え直した]
被害が無くなるまで、なぁ。
何をもって判断するやら。
まだ居るかも知れねぇ、全滅すっまでヤれ、……なんてぇのは御免だぜ?
[口調は軽く。
知らせると出て行くフーゴーを見送り、煙草が短くなるまでは暫く*そのままで*]
[泣かせたかったわけじゃ、という言葉に、また、反発が口を突きそうになる、ものの。
それは、ぎりぎりで飲み込んだ。
もしかしたら、ヴィリーやゲルダに突っ込まれたりしたのかも知れないが。
手を借りながらも、寄りかかろうとしない様子には、少しだけ呆れたようないろを覗かせ]
……ん、後は、ウチ、ついてるよ。
だから、兄さん、休んでて。
……ありがと、ね。
[部屋までたどり着いたなら、ヴィリーにこんな言葉を向ける。
それは、先に自分を落ち着けてくれた事への礼だけれど。
それ以外の意味合いも、少なからずあった]
[ヴィリーが戻って行くのを見送ると、小さく息を吐いて。
ベッドサイドまで椅子を引っ張り、ぽふ、と腰を下ろす。
力の行使に伴う疲労が今更のように感じられたが、それは押さえた]
……そういや、さ。
聞いて、いい?
なんで……最初にみたの、ウチだったの?
[読み易いところから、と。
そんな言葉も聞こえた覚えはあるけれど。
それは、ずっと引っかかっていた事だったから。
やや、ためらいがちに、*問いかけた*]
─宿屋─
…ならば、死ぬな。
[それだけのことをした、そうつぶやいたアーベルを一瞥すると、険しい表情で言い放つ。]
お前が、人ならば。
生きて、使命を果たせ。
お前が、人狼だとしても。
生きて、償え。
[そのまま手当てをすませ、フーゴーの指示に従ってアーベルを部屋まで連れていき。
クロエの言葉には、ただ、気にするな、とだけ告げて部屋を後にする。
ゲルダはその背についてきただろうか。
ヴィリー兄、と声をかけられれば、振り返りもせず。]
…俺は、家に戻る。
少し…一人に、させてくれ。
……すまない。
[立ち止まって、そうとだけ告げると、そのまま自宅へと戻り。]
…ライ。
[呟いたのは、幼馴染の名。]
俺は…お前を。
友だと、思っていた。
理解していると、思っていた。
…それは。
間違って、いたのか。
[そう、呟くと、ただそのまま、立ち尽くして虚空を見つめ。]
……お前は、俺を…
友だと、思ってくれていたか。
俺は、お前を。
苦しめた、だけか。
[そこに、幼馴染の姿があるかのように、ただ、語りかけた。
答えなど、返ってくるわけもないのに。]
[ライは人狼だと、アーベルに告げられた。
クロエも、そうだと言った。
ならば。
リディを殺したのも、ライなのか。
否。
フーゴーは、まだ人狼がいるかもしれないと言った。
己自身の知る伝承も、複数名の人狼が人に混じっていたものが多かった。
だから、せめて。
リディを殺したのはライではないと、信じたかった。
そんなことばかりを、考えて。
まんじりともせずに、いつしか白み始めていた空を見つめ。]
……朝、か。
[一睡もしてはいなかったが、眠る気にもなれなかった。
それに、宿に残っているだろう面々も気にかかった。
クロエは恐らくアーベルの側についているだろう。
ゲルダは、家に戻っただろうか。
それとも宿に残っただろうか。
…一人、置いていった自分をどう思ったろうか。
それも、気にかかって。
まず、ゲルダの家に寄り。
家人が帰っていないことを己が目で見て、改めて宿へと向かった。]
……?
[最初に、気付いたのは。
この数日で何度も嗅いだ、鉄錆の臭い。
それは、宿に近付く毎に、強まっていって。]
………ゲル…ダ…?
[宿のすぐ横の路地に広がる、大きな赤い池。
そこに横たわる者を、見止めて。
呆然と、名を、呼んだ。]
ゲル、ダ。
そんな所で、寝るな。
目を、開けろ。
[そんな、見当違いな事を言いながら、傍に行って。
血で汚れるのも構わずに、膝をついてその身体を抱き寄せる。
彼女の顔は、まるで寝ている様に綺麗なままなのに。
身体は無残に引き裂かれ、かろうじて人の形を保つばかりで。
誰の目に見ても、人の仕業ではないことは明らかだった。]
………ゲル、ダ…ッ!
[一人にしなければよかった。
傍にいてやれば、よかった。
後悔を堪え切れなくて、力強く抱きしめる。
手も足も、もう冷え切っている彼女を温めるかのように。
けれど、ずっとそうしている訳にもいかず。
彼女を弔ってやらなければ、と、顔をあげたその時。
壁に書かれた文字に、思考が止まった。]
………ふざ…けるな……!!!
[すべてを理解した瞬間、男は、怒りを爆発させた。]
………許、さない。
人の命を、弄んだことを、後悔させてやる。
[ぎり…と、握った拳から血が滴り落ちた。
ゲルダの身体を横たわらせると、自分の上着をかけて無残に裂かれた体を覆い、もう一度抱き上げると血に塗れた自身の姿も気にせぬまま酒場へと向かい。]
……おっさん。
ゲルダが、殺された。
人狼は、まだ、居る。
[そう、フーゴーに告げ。
ゲルダを寝かせる場所を作って欲しいと頼んだ。]
……ここの外の壁に。
メッセージが、あった。
ゲルダは、その前に、倒れていた。
…俺は。
ゲルダを、こんな目に遭わせた奴を、許さない。
[それだけ言うと、ゲルダの傍について。
誰かに問われれば、己の見たモノをそのまま告げる*だろう*]
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