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[ゆっくりと、アーベルの元まで行くと。
パニックを起こしているクロエの肩を叩いて止血を代わろうと申し出た。]
俺の方が、力がある分。
止血の効果があるだろう。
……ライが、人狼だったとしても。
ライを殺したアーベルを、俺は許せない。
だが、もう、一人死んだ。
これ以上、死なせたくない。
[諦めた様に緩く首を振る]
貴方が先に居なくなるのでは、其の名前の意味が無いのに。
本当に、貴方と言う方は。
[眉根を寄せての呟きは、寧ろ呆れに似た]
[庇おうと思えば庇えた位置]
[其れをしなかった理由は、聞こえないと知ってなお告げない]
ヒースクリフ。
酷いコエをしているよ。
[感情を殺したコエを向けるのは、八つ当たりかもしれなかった]
今日も変わらずに、喰らいに行くよ。
[どの様な反論をされようと、封じる如くに告げる]
その時が来たのなら、また名前を呼ぶ。
[今夜は、もう一人の名前を呼ぶことが*無い*]
[フーゴーが語る、呪術の話が聞こえる。
泣きそうになった。
もっとも、視界がぼやけているのは、半分泣いているから、ともいえるのだけど]
ヴィリ、兄、さん……。
[肩を叩く感触と申し出に、顔を上げてヴィリーの名を呼ぶ。
何か言えるわけではないけれど。
死なせたくない、という言葉に、小さく頷いた]
ごめん…。
[途切れがちな意識。
それでも気を失うこともできない。
それが代償。ヒクリヒクリと身体が不随意に動く]
…人狼も、人…。
[瞼を閉じた]
[浮かんでくるのは無機質な声。
あの日見た光る碧には、漆黒の毛並みがよく映えた]
[でも今ではもう。
それは過去のものへと]
……あんたは、平気なのか。
それとも、これも愉しいことだってか?
[自分の周りを失う痛みは、かつての記憶にも繋がるか。
いつもとは明らかに違う囁きを向ける相手には、呆れの色を見せながら]
リッキー、灰皿くれ。
[取り出したのは銃でなく、いつもの煙草。
倒れたアーベルの傍には寄らず、ライヒアルトを運ぶ手伝いにも動かない]
売ってまで……ねぇ。
その割にゃ、死に掛けてるように見えるが。
[ユリアンの言葉が聞こえて、顔を向ける。
笑んだ口許と対象に、その目は暗い色をして見えるか]
[一方的に告げられた言葉には、分かったと返し]
[こんな時、ヴァイオラならなんと言うだろうか――などと
意味もないことを頭に巡らせながら*]
…大丈夫だ。
アーベルを、信じろ。
[小さく頷くクロエの肩を、もう一度軽く叩くとすぐさま止血を代わって。
呪術とやらは自分にはさっぱり理解は出来ないが、流れる血を止めなければ死んでしまうということは理解出来る。
止血のほかにも、フーゴーやリッキーに指示を受けながらアーベルの手当てを*手伝った。*]
[しばらくすれば血は止まる。傷口も閉じる。
残ったのは痛みだけだった。
ただ、失血の影響だけはどうしようもなく。
手を借りて移動することになるだろう]
謝れば、いいって、もんじゃ、ない、よ……!
[それでも、口をつくのはこんな言葉。
ヴィリーの言葉には、小さく頷いて、手当ての様子を見守る。
途中、ゲルダからも、落ち着くように諭されて。
少しずつ、気持ちは静まっていった]
[タオルをフーゴー達のところへ持ってきたリッキーは、続けて頼まれた灰皿をウェンデルへと用意し。状況を見ておろおろとした表情になっている]
傷口をタオルで直接縛ってやれ。
手首のは間接的にも対処しておく必要があるな。
[ヴィリーの手を借りながら、所謂直接圧迫止血や止血帯法を利用して傷口をそれぞれ押さえて行く。一通りが終わった頃、アーベルも誰かの手を借りて起き上がれるくらいにはなっているだろうか]
……それだけのことは、した。
[許せないというヴィリーに返す]
それでも。ごめん。
[クロエに言う。
フーゴーに動けるかと問われれば頷きを返し]
一人じゃちょっと。無理だけど。
[ユリアンの嘲笑は睨もうとして失敗した。
今度は疲れから目を閉じた]
[アーベルの返答に、「やれやれ」と息を吐く]
ヴィリー、クロエ、こいつを部屋に放り込んで来い。
この様子じゃどの道しばらく動けねぇだろ。
休ませておけ。
[そう指示を出して、フーゴーはアーベルの傍から離れた]
[相手から何か返ったにせよ返らないにせよ、続けて何か言うことはない。
指示の声を横に、男はリッキーから灰皿を受け取って常のように火を点けた。
その頃には遺体はもう移動していただろうか。
彼の倒れたその場所を眺めながら、天井まで紫煙を上らせる。
一点を見つめている筈の目は何処か遠く、いつしか笑みは失せていた]
……アーベルが人狼だった場合は、仲間を売ってまでやる可能性はあるんじゃねぇかね。
自ら死にかけながら仲間である人狼を殺す……普通ならあり得ないと思うだろ?
[ユリアンとウェンデルの言葉に対し、そう言葉を紡ぐ。それはあの状態になったアーベルさえも未だ疑いの対象だとしていると見えるか]
人狼が一匹だとは限らんしな……。
過去の系譜では二匹三匹居たこともあるらしい。
[重ねて謝られれば、それ以上は言えず。
視界をぼやけさせるものを拭って、一つ、息を吐いた]
……ホント、に。
ばかぁ……。
[まだ少しだけ、震える声で、呟くように言って。
フーゴーの言葉に、一つ、頷く]
わかった。
……ばかやんないように、ウチが、しっかり、見張ってる。
[返す声は、泣きかけた反動なのか、比較的しっかりとしていたけれど。
それが、違う意味での虚勢──意地張りなのは、誰の目にも*明らかか*]
……ふぅん。
確かに、裏をかくにゃぁいい手段かも知れんが。
ちぃと、リスクが高いようにも思うがねぇ。
[煙草を指で挟んで口から離し、フーゴーを横目で見た]
あぁ。
人狼は群れで行動するたぁ、聞いたコトあるな。
[言葉と共に深く、煙混じりの息を吐いた]
リスクが高くても、それで信じられて処刑対象に上がらないのであれば、生き延びる可能性は見えて来る。
…ま、可能性と推測の域は出ないがね。
この手段を選んだかどうかなんざ、人狼の連中にしか分からん。
[言って、軽く肩を竦めた]
今回この島に来たのが一匹だったってぇならそれはそれで良いんだが…。
何匹居るのかまでは分からねぇ。
まだしばらく容疑者扱いは変わらねぇだろう。
……人狼による被害が無くなるまでは。
…ちと出て来るな。
自衛団に報告して来る。
[ウェンデルだけでなく他の者にも出かける旨を伝え、フーゴーは宿屋を出た。今日は連行に来なくても良いと言うことと、人狼が見つかったと言うことを*伝えるために*]
泣かせたかったわけじゃ、ないんだけどな…。
[泣き声ではなくなったもののどこか張り詰めているクロエの声に、口にするつもりのなかった内心が零れる]
遠くて悪いんだけど。
[フーゴーに言われたクロエとヴィリーに頭を下げた。
意地だけでは歩けなかったが、自業自得だからというのか、少しでも寄りかからないようにして奥の部屋へと*向かった*]
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