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[やや乱れ、顔にかかる髪を後ろへ払う。
銀色の輪がシャラ、と音を立てた]
……決めたからには、やり通しましょう。
正しいの正しくないの、なんてものは、二の次でいい。
[願いに応えたときに見た笑み。
他者にどう見えたかは知らぬけれど、それは、女にとってはまもるべきものと見えたから]
……徒花は、徒花なりに。
やる事やるだけだわ。
[呟き、薄く、笑む。
艶やかな笑み。
それは名乗る名に、毒持つ花のそれに相応しくもあるか]
そうなると、問題になりそうなのは、あの二人、か……。
[今朝の状況から、そして、昨夜聞いた話から。
障害となりうる者は絞り込める。
もっとも、少女に害なすというのであれば、何者も敵と見なせるのだが]
……は。
あの子の事を、怒れやしないわねぇ。
[掠める苦笑、思い起こすのは、殺せば見分けられると言ってのけた少女。
障害は、取り除いてしまえばいい。
そう考える自分と、あの時のセシリアと。
何が違うというのか。
そんな事を考えながら、二階の客間へと足を向ける。
余り長く、ひとりにしておいては、と。
そう、思いながら]
─2階・客間─
[部屋の前まで戻った所で、ふと、手ぶらで戻ってきた事に気づく。
少年の亡骸を見つけた事で、多少、動転していたか]
……ま、仕方ないか。
それに、引きこもっていると、逆に不利かもしれないし。
[そんな呟きと共に、ひとつ、息を吐いて。
それから、ドアを開ける]
戻りました。
遅くなって、申し訳ありません。
[ドアを開けたなら、表情は、常と余り変わらぬものへと変わる。
それは半ば、無意識の変化]
―キャロルの部屋―
[一人で在る事が不安になり始め部屋の中を右往左往して居た。
扉が開いたのは如何しようかと近づいた時だった]
お帰りなさい!
[普段と変わらぬ様な表情に安堵の笑みを浮かべて迎える。
お茶の用意が無い事に気付いたのは一拍遅れてからだった]
…あの。
何か有りましたでしょうか。
[安堵は一転し再び不安の色を帯びた顔でキャロルを見上げた]
―自室→廊下―
[机の中から銀製のナイフを取り出す。なにかあったときはこれであいつを刺すんだと言っていたとうさんの、アーヴァインの姿を思い出す。
人狼には銀が効くんだと、二人からはよく教わっていた。本当かどうか自分は知らない、試す気もなかった。]
とうさんは……わたしを…ひとにしたかった…?
[小さく呟く疑問の声に応えるべきものはもう死んでいる。
いくらかの時がたち、ふところにナイフをしまうとまずは一度ユージーンにあって話すべきか、それとも…考えながらとりあえずは自室を出ることに。]
……
[廊下は静かなまま、遠くで微かにドアの音がしていたかもしれないが。
ユージーンの姿を探しながらうろつく、先に他の人物に会うかもしれないが。]
─2階・客間─
[不安げな問いかけに、やや、眉が下がる]
……ええ。
また、狼の爪に裂かれた者が。
あの子が……トビーが、人狼の手にかかったようですわ。
[問いへの答えは、ごく静かに]
まだ、ここを出るのは難しいようです。
狼が残っている間は、助けを呼ぶこともできぬでしょうし……。
―玄関―
[墓守の元に知らせはあったか如何か。
何れにせよ、其処に事実はあった]
トビー様ですか。
[少年の亡骸を見下ろす。
誰の所業か墓守は知らないが、短い髪の一部は更に短く刈られていた]
未だ居るということですね。
[短い黙祷の後、敷かれていたシーツの端を持ち上げて、小柄な身体を隠す。
今までのように何処かに運ぶことはしなかった]
―広間―
[広間には自分ただ一人。あれだけ賑やかだったこの場所が、今はこんなにも暗く静かだ。
だが、それも今日終わる。今日こそあの人狼めの息の根を止め、トビーや他の者達の仇を討とう]
見ていて欲しゅうござるよ、皆の衆・・・
[腰の刀から覆いを取り去り、いつでも抜けるようにする。さすがにこの国では、なるべく人前では抜かないようにしていたのだが、今はもうそんなことを言ってる場合ではない。
奴は今自分の部屋にいるだろうか?それともキャロルの部屋に?]
[やがて踵を返し、遺体に背を向ける。
この場に足を運んでから、然程時間は経っていない]
あの方は、どの部屋をお使いでしたかね。
[微かな声で独りごちながら、階段のある方へ向かった]
―二階客室―
狼の爪にあの子が。
[其れは既に知る事実の確認。何より望んだのは自分。
驚いたのは半分演技で半分はキャロルが彼女と遭遇したかもしれなかったという事実に気付いたからだった]
そうですか。
助けを呼ぶのでは無く此方から出る方法は無いのかしら。
彼の言っていた人達が来る前に逃げてしまいたい。
[実際は其れも問題無いだろうと思って居た。
微笑みたくなるのを押さえようと努めて表情を消した]
─2階・客間─
……ええ。
[ひとつ、頷く。
ヘンリエッタの驚き、その理由までには思い至らず]
ここから出るのは、難しいかも知れません。
崖を下りる道も、あるかどうか。
[消える表情。
それは、女の目には、見えぬ恐怖によるものと映る]
追手……ですか。
それに関する情報を少しでも得たかったのですけれど……。
相手がわかれば、対策の立てようもあったのですが。
[情報源となり得る少年はもういない、と。
零れたのは、嘆息]
[廊下を歩いていると階段を上ってくるユージーンの姿が見えたかもしれない上りきるのを待ち]
……(ぺこり
[小さな会釈]
ゆーじーん…いた……
[小さな声で呟くその声は近づかない距離ではきこえたかどうか]
―二階・廊下―
[階段を上がりきった時、墓守は養女の姿を目にした]
御早うございます。
[微かな声は聞こえたか否か、触れることはない。
常通りの礼をし顔を上げると、僅かにずれた髪の隙間から、左の目が一瞬覗いた。
馴染みの少女を見つめるそれは、右と同じ静かな色]
シャーロット様。
―広間→二階―
奴がどちらの部屋にいるにせよ、両方当たってみればよかろう。
ただ、問題は・・・十中八九キャロルが傍にいることでござろうな。
出来れば余計な犠牲は出したくはないが・・・
[説得はするつもりだが、彼女がこちらの言葉に耳を傾けるとも思えなかった。そんなことを考えながら広間を後にした]
―二階・廊下―
[わずかに覗いた左目に一瞬気がいく。
すぐに視線はユージーンの方を見るように、名前を呼ばれて]
……おはなし……あった…
[小さく呟く声、口の動きだけでも伝わるかもしれないが。
僅かばかり警戒の色を示しながらユージーンの方を見て微かに首をかしげ]
ユージーンは……てき…みかた…?
[かける言葉の意味はどうとられただろうか?]
―二階客室―
難しいですか。
如何しても吊り橋が直るまで待つしか無いのかしら。
[其の時はまた頼らなければいけない。
其の分はもっと此処で役に立たなければいけない]
捕まった時に私も少しだけ話をしました。
母さまと同じ力を持っているだろうと言われて。
[其れは他者に内緒で意思を交す事が出来る力。
人ではなく狼と共鳴する力]
でも絶対に内緒だと言われたから黙って居りました。
母さまも此の人達の事に気付いたから逃げろと言われたのだと思って必死に逃げました。
この力を邪魔と思う人達。其れだけは分かります。
此処で起きた事を知れば其れこそ殺されてしまう…。
[人狼と闘う者達。
此後も彼らを厄介事に巻き込むかも知れないと思い俯いた]
[ユージーンに問いかけ、かしげた首はそのままにユージーンの方を見ている。
その後ろからマンジローが階段を上ってくる姿が見える]
……
[視線はユージーンの後ろの人物に一瞬動きユージーンの方にまた戻る。]
−外−
[崖を覗くと、苔に覆われた石肌はだいぶ乾いてきているようだった。
これなら降りれるか…もう少し待つべきかは悩ましいところだった。
そうしてもう一度崖を調べなおした後、館の方へと戻っていった。]
─2階・客室─
……ええ、恐らくは。
[もっとも、村の者がこちらを救いに来るかはわからないのだが、それは言わずに]
お母様と、同じ、力……。
[少女の持つ、真なる力は知らぬから。
それは、他者を視る力と女の中で位置づけられる。
軋みを訴える一部分は、押さえ込まれていた]
……そうなのですか。
それが、何者であるにせよ。
エッタ様を殺させるような事はしませんわ。
[死なせたくはない。それは真意。
状況や真理を越えた、個の想い。
それが他者から見て歪んでいたとしても、女には意味を成さぬこと]
―二階・廊下―
何でしょう。
[常と変わらない態で、話を促す。
背後の気配に視線を逸らす事も無い。
問いを発する養女を右目が、否、既に髪に隠れた左目も共に見ていた]
それは貴女次第です。
[澱みない低音の返答は、すぐには是も否も返さなかった。
かつて書庫にて少女を殺めた銀の刃は、今も身の内にある]
―二階階段付近―
[階段を昇った先にはユージーンとシャーロットが居た。何やら話をしているようだ。
隣を通り抜ける時に軽く頭を下げつつ、さりげなく尋ねる]
おや、こちらに居られたのか。
ところでお二方、ヘンリエッタ殿を見なかったかな?
―館内→―
[広間に向かおうとして、先に広間から出てくる者の後姿を見止め、獣のごとく気配を殺す。
ユージーンやマンジローなら気づくかもしれない故、変に勘ぐられないよう振り返り注視すればすぐに見つけられる位置にはいたが。
前から感じる声と気配に耳を傾けた。]
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