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―地下―
[音が無い。
何一つ、音がしない。
息遣いも、鼓動も、生きるモノの証全てを拒んでいるような。
寒い。
ひやりとする空気が全身を包む。
其れともこれは怯えなのだろうか?
魔の力の掛かった空間の階段を、降りて行く。]
……ん?
[何か、聞こえた気がした。
歌う、声。
ああ、と思う]
……歌姫か。
[呟いて。
ふわり、蒼はそちらへと向かう。
理由は特に、ないけれど]
[歌う様子を、離れた所でぼんやりと眺める。
邪魔をする気はなく、ただ。
彼女の歌をちゃんと聴いた覚えがないから。
聴いておこうかと。
そんな気まぐれが、働いて]
/中/
そこで、声をかけろといわないように。
基本的に、そーゆーヤツではないのだからして。
……表の動き待ちみたいなとこもあるんだい!
[長く続くように思えた階段は途絶え、目の前には幾枚かの扉。
どれも同じ様に見える中で、一つ。それを選んだのは偶然だったのだろうか。
手を伸ばす。]
・・・・・・・!
[硬い。
触れられない筈の手が触れたのは、此処が異空間であるからだろうか。
扉を押す。音の無い場所に初めて音が生まれた。]
[歌は唐突にやんで]
…アーベル。
[振り返らずに、顔は月を仰いだまま]
考えていたの。消えうせたあなたの身体、エーリッヒの身体…どこへ行くのかと。
[呼びかけに、ふと我に返り。
視線を、月を見上げる歌姫へと向ける]
俺の身体……『幽霊』の形骸、か。
確かに、気にはなっていた。
最初の犠牲者……ギュンターの身体が消え失せるのを、目の前で見て。
エーリッヒの身体も、いつの間にか消えていたし。
俺自身の形骸が消えるのも見た、が。
それがどこへいったのかは……全く、わからん。
しかし、少なくとも、生きていた頃には、そんなものを幾つも置けるような場所は……見ていないんだよな。
ああ……。
[振り返ったエルザに一つ、頷いて]
死によって解放される……とベアトリーチェは言ったが。
俺たちは、ここに留め置かれたまま。
勿論、箱庭の主の悪趣味もあるんだろうが。
それ以外にも、何か要因はありそうだな。
この空へ駆け出そうと思った。月の光を受けて、高く、遠く。
でも途中で見えない壁のようなものにぶつかって、あたしは堕ちてしまった。
…こんな天国がありうるものか、あの神父様やシスターに聞いてみたいものだわ。
[皮肉な微笑]
[要因、と言う言葉に感心したように頷いた]
[それからかすかに首をかしげ、尋ねてみる]
ね、アーベル。
あなた、ここから出られるとしたら、出て行きたい?
――二階階段前――
[階段の手摺にもたれかけ、銃弾を確認した。
クレメンスは、拳銃の扱い方に長けている方ではない。]
〜♪
[教会でよくしていたような、アメイジンググレイスを鼻唄でうたう。Iの部屋から物音が聞こえてきている。]
空に、壁……。
正真正銘の、箱庭……閉じた場所、って事か。
[蒼の瞳を一瞬、空へ投げて]
聞いても、望む答えは返らねぇと思うぜ?
信仰に生きるヤツらってのは、そんなモンさ。
自分の信じるものに、盲目的で。
他者からの否定を拒む。
……ま、だから、俺は教会もカミサマも、全く信じちゃいねぇんだけどな。
[視線を空から下ろして。ひょい、と肩をすくめつつ軽く言う。
その声には、皮肉の響き]
……出られるとしたら?
[その問いは、全くの予想外で。
戸惑うように、一つ、瞬く]
俺は……まあ、正直どっちでもいいが。
この場所は気にくわねぇ。
長居したいとは、思わんかね。
[アーベルに向けた笑いに、一瞬こもる憎しみ。それは、『カミサマ』と言う単語に反応してのもの]
…あたしは、この閉ざされた場所について、神の下僕たちがどう言い訳をするのか聞いてみたいと思っただけ。
神なんか、信じないわ。
その点だけは意見の一致を見たわね。
[開けた扉の先は真っ暗。それでも見えたのはあの血のお陰なのか、それとも既に生きてはいないからか。
同じ形の、幾つか立ち並ぶオブジェの傍へと。]
――あ。
[透き通ったオブジェの中に、何処か見覚えのある顔を見た。
“武器を取って人を殺せ”そう言っていた老人と良く似た精巧な人形。良く見ればあちこちパーツが欠けて・・・
・・・・・否、人形では無かった。
硝子の棺に納められた、死体そのもの。]
[アーベルをじっと見て]
エーリッヒは、元の生活に生きて帰る事を望むでしょう。ハンスも。
あなたは?
ベアトリーチェが言うような目覚めがあるとしたら、あなたはそれを望む?それとも、天国へ召されたい?
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