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ぐっ!
[ふらついている身体ではまともな抵抗などできるはずもなく。
勢い良くタイルへと顔が押し付けられる。
エルザとベアトリーチェと...から流れた血が広がる床へ。
悲鳴を上げた口の中にその錆びた味が広がる]
うぁっ。
[逃れようとする...の背中に神父の声が降る]
[必死に首を振る]
ち、が…!
[細い悲鳴が漏れる。全身を恐怖が包む]
…だめ。
[いつの間にやら神父の首筋にナイフをあてて。]
みっきーは、まだやること あるみたいだから、だめ。
…くーちゃんも、まだやること あるみたい…だけど。
頑固だなあ…
[のんびりしたクレメンスの言葉が、ミハエルの頭上から降る。ぐいと血に顔が染まるように更に押しつけ]
本当は悦んでいるんだろう。
伯爵家の人間は、人間というより人ろ……
[首筋にあてられた月のナイフ]
うん…まだあるよ。
[少女に首を回し、答える。
血の筋が出来る。]
ねえベアトリーチェ、君の本当の名前は?
[茶色い眸が微笑んだ]
いゃ…や、め……
[力無くもがき続ける。
涙が流れる。
恐怖と、悔しさが入り混じって]
[全身を駆け巡る痛みの中、それでも神父と少女の声はハッキリと聞こえていた]
Leerkarte。
…Schachbrettだったかもしれないけど、わすれちゃった。
わたしは、予備の駒。
なんにでもなる白紙のカード。
たりないぶぶんを、おぎなうための。
[クレメンスは、体の下で喚き声をあげる少年の脆弱な声を無視する。
あらがわなければ生きていても仕方ない。]
うん、その名前は見たよ。
[Schachbrettと呟き、]
けれどもっともっと昔の話。
人狼が生き、月が今より大きく近かった頃の名前。
ベアトリーチェは月が好きかい?
おつきさま、すきだけど…
おつきさまひとりじゃ、たぶんだめなんだ。
きらきら おひさま かがやいて、
おひさまが かがやくから、おつきさまも かがやくの。
―corridor to room I―
神父さま。
[困ったように呼び止めようとするも、彼の姿は部屋に消えていく。
そこはミハエルの部屋。]
…どうしたのかしら。
[そちらの方に、歩を進める。]
「可哀想」だね、ベアトリーチェ。
[クレメンスはおさえつけていたミハエルから離れ、]
対の少女はもういないのかな。
・・・・・・・
それとも、起きてしまった?
[立ち上がる]
[ラム酒と称し「あかきもの」を混ぜ込んだグリューワインを飲む。
ぎょるりとあかくなった瞳は広間にある物をどれも見てはいない。]
イレーネは。私に。お任せ下さい。
[けれども響くコエは力強く]
わたしは、わたし。
ひとりでも、ふたりでも、さんにんでもよにんでも。
それでも、たぶんわたしだよ?
[思い出す、暗い暗い穴の向こう。]
めがさめたかもしれないけど、わたしはわたしで…まだここにいるの。
っく。
[押さえられていた手が退かれれば、必死に力を掻き集めて身を起こす]
[弾き飛ばされた剣の代わりに、腰に付けた短剣へと手を伸ばす]
!
[床についていた手を踏まれ、悲鳴を上げそうになる]
[しかし逆の手で抜いた短剣で神父の足を浅く薙ぎ]
調子に、のるなっ!
[膝をついた体勢から睨みつける]
[目を覚ますと暗くて。
身を起こす。
見覚えのある、黒く長い外套が、...の身体を隠すように掛けられていた]
・・・・・・。
[何かを感じて、自分の頭に触れてみる。
横に居るのはオトフリート]
―room I―
神父様?
[呼びかけとともに中に入る。
しかしその中に人の姿はない。
音が、声が聞こえるのは、
部屋の中の扉の中。]
…っ
[驚いて、扉のところで立ち尽くす]
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