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ユーリー。
[相変わらず世界は暗いまま。だけどその声が誰のものかはもう分かる。
2つ年下の友人、と言える程親しくは無かったかもしれない。
彼に向けられた言葉に、僕は多分苦い笑みを浮かべていた。]
……悪い。
でも、きっと無理だった。
[僕を今まで引き止めていた存在はもう居ない。
あの時獣が来なくても、きっといずれは死を選んだ。
それに大事な息子を手に掛けた殺人者を、イヴァンの家族は許すだろうか。
生きて償う。そんな事ができる程の強さは、僕には無かった。]
ミハイルが「時間を進める」を選択しました。
ミハイルは、 ロラン を投票先に選びました。
カチューシャが「時間を進める」を選択しました。
[呼べど返事はない。
聞こえていないか。
それとも会いたくないか。
分からぬまま、飴色を掻く]
――…みつかれば殺される、と思ってる、か。
[ぽつ、と呟いて花色を閉ざす]
[銃声が届いたような気がした。
目を開ける。
どこかとても遠い場所のように、赤い血の色を眺めていた。
次いでまた意識は閉ざされ、次に認識するのはやはり墓地。
生ある者たちの感情が重く、空気を沈めているような気がしたけれど、
死した者たる彼女に、それは関係なかった]
……しばらくしたら、勝手に、消えるのかしらね。
[首をかしげて墓を眺める。]
長生きしたほうだと思うのよ。私。
消えたら褒めてちょうだいね。
――…家、見てこようかしら。
…ごめん。
[何に対して謝ったのか。
ロランの表情は少し虚ろで、疲弊を見せていた。
ゆるゆると頭を横に振り]
――キリルの体、どこにあるか、知らない?
[できるだけ低く淡々とした声で紡いだ。
黒銀の狼の首を撫ぜると、唸り声は止まる]
[ロランの虚ろな表情に、痛みをこらえるように眉を寄せた。
低い問いかけには小さく首を振って]
ミハイルさんが、連れて行ったから……
あたしはしらない……
[ロランが撫でて、唸りがとまる狼を見る。
それからロランへと視線を戻し]
――もう、戻れない……?
今からでも、やめられない、の……?
[幼馴染を失いたくはない。
そんな気持ちが表情に滲んで、じっとロランを見つめた]
[小さく首を振るのに、そっか、と呟いて。
すぐに踵を返そうとしたけれど。
カチューシャの視線に視線を絡められ、動きを止める]
…キリルの事は殺すつもりだったんでしょ?
じゃあ、俺の事だって殺すってちゃんと思わなきゃ。
[カチューシャの表情が必死に見えて。
思わず、少し眉を困った風に寄せて、声を返してしまった]
ユーリーを…信じるんでしょ。
[恐れるように、でも堪えきれぬように名を呼んだ。
ああ、そういえばここはどこなのだろう。
皆ここにいるのだろうか。
イヴァンも、兄も、マクシームも、イライダも]
っ、……それ、は……
キリルのことも、止めてくれるなら……ユーリーさんを説得しようとはおもって、いたよ。
――嫌だよ……おにいちゃんも、キリルもいなくなったのに。
ロランまで、居なくなるの……?
[当たり前に大切な人たちが傍にいた時間は遠い。
ぎゅ、と皮の水筒を抱きしめ]
ユーリーさんを信じていても、
生きていてほしい、って思うんだもの……っ!
[叫ぶような、悲鳴のような、そんな訴えがこぼれた]
[やくそく。と、言った。
彼を縛りたかったわけじゃない。
どこか自棄な彼に、絆を感じて欲しかった。
生きるために、生き抜くために約束をした]
[幼馴染の叫びが、突き刺さる。
胸元をぎゅと握って少し前によろけかけた。
目を閉じる。ぐ、と、強く唇を噛締めて、顔を背け
ぐい、と目元を拭った]
――カチューシャ、…ごめん。
俺、…有難う……そう言って貰えるのが、
とても…嬉しい。
[震える声で告げてから、ゆると顔を向ける。
真っ赤な目は、少しだけ笑っていた]
けど…
[続ける言葉。眉を下ろし、困った声。
ふるふると頭を横に振る]
…やらなきゃいけないことがあるんだ。
キリルを探しに…ミハイルのとこ、行ってくる。
[遠くから、名を呼ぶ声が聞こえた気がする。
人の耳では聞く事叶わぬ程微かなそれが届くのは、
人でない事を自覚させる、一端で。
ガサリと音をたてて身を翻した。
行き先を告げてしまったのが何故だったのだろう。
――――考えるだけの余裕は、とても無かった。]
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