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[カルメンが人狼だったと、娘の言葉から理解する。
娘も良く懐いていた。
そのショックは計り知れぬものだろう]
[村の者で無ければ良いと思っていた。
けれど、心のどこかでは村の者が人狼である可能性も考えていた。
それ故に、明らかになった場合に手を下す覚悟も出来ていたのだが。
結局、それを為したのは別の人間で。
何も出来ず、娘を苦しませる要因を取り除くことも出来ないのに悦びが湧き上がって来る左手が至極忌々しかった]
…イレーネ、部屋に戻るぞ。
横になった方が良い。
[それだけで緩和出来るとは思えないが、立った状態で居るよりは幾分楽になるだろうからと。
抱え上げてイレーネが寝泊りしている部屋へと向かう]
― 聖堂 ―
[亜麻色の毛並み、僅かに揺れた気がして、もう一度、そっと手を伸ばす。
相変わらず触れることは出来ないけど、撫でるようにして]
大丈夫、ここにいるよ。
だから、ゆっくり、おやすみ
[その魂が迷わぬように、そっと、願いを込めて]
[──本性を見せてみろ。
もうひとりはそう言ったのだけれど
人の姿も獣の姿も同じく自分だと思うから
何も答えることは出来なかった。
人を喰らい血に染まる亜麻色の獣も
演奏にあわせて歌い舞う老尼僧の娘であろうとした者も
どちらも私に他ならない。
もうひとりにしてみれば、半端にみえたのかもしれないけれど
獣としてのいきかたを望まれていたのかもしれないけれど
ひととして積み重ねてきた私を消すことなど出来なかった。]
/*
中発言失礼します。
遅くなったけどカルメンとミリィはお疲れ様でした。
カルメンを見ていたいけど、そろそろ睡魔に負けるので休みますね。
何か落ちるようでしたら明日拾います。
では**
/*
エーリッヒもミリィちゃんもお疲れさま。
一人にしちゃってごめんねとお返しありがとう。
遅くまでお付き合いありがとう。
おやすみなさい。
[直接関わったわけではないせいか、湧き上がるものは然程大きくは無い。
結果、それを厭うてもイレーネ程反動が来ることは無かったようで、共に意識を失う事態には陥らずに済んだ]
カルメン、が……。
[娘が人狼だと言った子が脳裏に浮かぶ。
親を知らず、老尼僧に育てられ、本当の親子のような関係を築いていた子。
だから、その子が老尼僧を襲ったとは思えず、そこに僅かな違和感を作り為した]
……シスターの時と団長の時、そしてエーリッヒの時…。
[全ての現場を見た男はそれぞれの光景を思い出す。
老尼僧とエーリッヒの時は常軌を逸した殺し方。
団長の時は、それらと比べると猟奇的には見えなかった。
そこから紡ぎ出される推論は]
───── 複数
[同一犯ではないと考えるとそれらの違和感も納得が行く。
また、カルメンは恐らく老尼僧を襲っては居ないだろう推測も]
あんな優しい子が、母と慕った相手を殺せるわけが無い。
[カルメンはここに来てからもイレーネを気にかけてくれていた。
月の獣であるはずの彼女が、だ。
何より、老尼僧が亡くなったあの時の様子が偽りとは思いにくい]
もしかすると、まだ───
[終わらないであろう推測は、ほぼ確信として心に残った]
[それから後、姿を探して部屋に来た者は居たか。
イレーネの様子を問われたなら、ショックが大きすぎたらしい、とだけ告げる。
ただそれだけを告げるなら、エーリッヒの遺体を見てのショックが大きかったのだと取られることになるだろう。
娘が死した者を視ることが出来ることは、本人が口にしない限りは言わなかった]
[カルメンのことを聞かされるなら、話題が出たことにほんの少し緊張するように瞳を瞠り。
その後視線を床に落として、そうか、とだけ言葉を零すことになる。
イレーネの手を握る手が、ほんの少し力を帯びた]
[その日の夜は、娘が請うなら付き添うつもりで、残りの時を過ごしていく**]
[先ず見えるのは見慣れた亜麻色。
床に手をつき上半身を起こす。
眸と同じ菫色の衣装に纏う女は視線を彷徨わせる。
傍に居てくれたエーリッヒの姿が間もなく映りこみ
はたりと一度瞬きをする。]
夢の、続き?
[途惑うような響きが滲む。
夢でなければこんなに都合よく彼がいるはずない。
人殺しの獣は同じ場所になんて行けないのだと思っていたから。
――思っていた、けれど。]
夢なら消えないで。
[ここにいると紡いだ彼に願う。]
[エーリッヒへと手を伸ばす。
触れられる距離なのに触れる前に動きが止まった。
指先が、躊躇うようにやわく握るような形となり]
触れたら夢から覚めてしまう?
消えてしまうの?
[不安に眸を揺らし尋ねを向ける。]
[レナーテが行商人を追ったあの日。
父か娘のどちらかを選べと彼女は言った。
「お前が決めろ」とそんな風に言われたから――。
「決めていいなら、どちらも選ばない。
今夜は、誰も、襲わない。」
そんな風に返していたのだけれど。
それを聞き彼女は「残念」と紡いだ。
「私が決める」と続けた。
結局、誰を襲うとも彼女は言わずにいたけれど
カルメンは自身の言葉がエーリッヒの命を奪ったのだと思う。]
[あいたいと思っていたから
今見る景色はその想いが見せた泡沫の夢。
触れても消えはしないと確かめられるまで
その考えは消えてはくれない。**]
(……これ以上、は)
[目をそらしてはいけない、と。
そう、思った。
過去に居合わせた閉ざされた空間であった事、その全ては思い出せない。
だから──この哀しみの影にあるものは知らないまま。
ただ、終わりにしなくては、という願いからそう、思い定めて]
……アーベル。
[月のいとし子に眠りもたらした者へ、呼びかける]
……ここじゃ、寒いから。
彼女も、部屋に。
……エーリさんも、そのままには、できない、し。
[ちゃんと、ねむらせよう、と、提案して。
亡骸を部屋へと安置した後は、いつものようにお茶を淹れたり、聖堂の掃除をしたりと忙しく動き回って、その日を過ごした。**]
ー 前日 ー
……なんで、彼女だったんだろう?
[月のいとし子だったカルメンの死を聞いて。
呟いた問いに、明確な答えは返ってこなかったか。
その後は、簡単に食べれるものを用意してすごした。*]
[アーベルに止めて欲しいと願ってから。
エミーリアの声>>3:171もまた届いていたのだけれど
その時は彼女に何も言葉を返せなかった。
どこか憧れるような、そんな眼差しを感じていたから
本当はそれを壊したくないとも思っていて
そんな眼差しを向けてもらえるような存在でないと知りながら
それでも、彼女が向けてくれた好意が、嬉しくて。
彼女にも獣の姿は見せたくはなかった。
人のままでいたかった。
これまでの関係を壊したくないと思いながら
にんげんのいのちを喰らい壊したのはカルメン自身。
罪は重く償いきれぬもの。
獣を抱える自分にはそんな我儘はゆるされない。]
[獣の姿をみればエミーリアは少なからず衝撃をうけるだろう。
それを思えば、また心がきりきりと痛むけれど、
――彼女が見続けていたとしても
御伽噺の幕引きにもう一つの自分を晒す事は欠かせず
己の意思で選んだ道を違えることは出来なかった。]
[カルメンの名は老尼僧が与えてくれたもの。
レアンの名はその魂に刻まれていたもの。
月の綺麗な夜には知らず獣の姿になって
ちいさな頃はみんなそうなのだと思っていた。
けれど図書室にある御伽噺を老尼僧に読み聞かせてもらって
人狼という、人とは違う存在があるのだと知った。
母と慕う彼女とは違うのだと知った時はさびしくて
めでたしめでたしで終わる御伽噺のように
人狼である自分は退治されてしまうのがこわくて
理由も言わずわんわん泣いたカルメンを
老尼僧は「だいじょうぶ」の言葉を繰り返し撫でてくれた。]
[エーリッヒがくちびるだけで綴った言葉。
心のどこかで信頼をよせていた彼に
「だいじょうぶ」の言葉を貰えて想いは強まる。
不安を拭うその言葉。
助けてほしいと願っていたカルメンにとって
それは心を支える特別な言葉のひとつだった。**]
―前日/聖堂―
[突き立てた刃を引き抜く。
未だ勢いを落とし切らない赤が溢れて、彼女を、自身を染めていくけれど、厭うような気持ちの隙はなかった]
[彼女は何か言っただろうか。
――耳鳴りが酷くて、何も聞こえない]
[初めて彼女を知ったのはどれ程前だったろう。
老尼僧の奏でるピアノに裾を翻し舞う姿を覚えている。
ある年を境にぱたりと姿を見なくなったことを気にしてはいたけれど、問い問われるのを厭うようになっていたから聞けず終いで。
月日を経て酒場に顔を出すようになり、そこで見掛けもしたけれど、艶やかに彩られた顔立ちに気付けなかった。
気付いたのはこの白に閉ざされて、暫くしてからで]
……カルメン、
[せめてそちらでは幸せに]
[紡ぎかけて、やめる。
そんな言葉、エゴ以外の何だと言うのか]
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