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[例え眠っているとしても両親と彼女が共に居てくれるなら安心だからと、両親の隣に彼女を横たえる。
それから、その傍らに腰を落とし]
こんな時にまで、頼ってすまんが。
親父とお袋の傍に、居てやってくれ。
己の本分を怠る訳にはいかんからな。
[普通の家族なら傍について心配するのが当然だろう。
だが、同じように眠り込んだ家族を心配する村人達がいる。
それを放って身内にかまける訳にはいかない。
同じく医者であった父も、その妻である母も、すべきことをしないでどうすると蹴飛ばしてくるだろう。
だから。すべきをして、この傍に戻ってくるために。
眠っている家族の顔をもう一度確りと見てから、家を後にした**]
─ →森 ─
[クレムが森の方向へと向かってからだいぶ時間が経っていた。
追いつくために駆け足で森を進み、クレムの姿を探す]
クレム君、どこ…?
[入り慣れていないと迷いやすくもありそうな森。
滅多に入らないポラリスにとって、どこもかしこも同じように見え始めた、その時]
─────!
[頭上からキョ、キョ、と甲高い鳴き声が聞こえた。
見上げると白の羽毛と黒の翼を持つ鳥がポラリスを追い越して行く]
──…クレー?
[ソーヤの傍に居ると思っていた子がそこに居た]
[クレーは数度くるりと頭上を回ると、ある方向へと飛んで行く]
……もしかして。
[案内されているような気がして、少し上がっていた息を押し込めてその後を追った。
空を飛ぶものの後を追うのは大変だったけれど、見失わないように森の中を駆けて、ややあって緑の中に別の色を見つける]
― 森の中 ―
[緑の中を、ふらつく足で彷徨い歩く。それは、遠い昔の幻影と重なった]
[祈り子の持つ力を利用しようとし、利用出来ぬと判った後はその力を恐れた者達に追われ、逃げ惑ったその果て、護ろうとしてくれた人達はみな傷ついて]
『コワイ...』
[ひとりきり、緑の中を]
『タスケテ...』
[誰ももう、応えてはくれないと知りながら]
『ドウシテ...?』
[けれど、本当に怖かったのは]
―自宅―
[結局駆け出したのか、駆けだせなかったのか。
エリィゼからクレムの名を聞いたのと、足を止めたのと…
低い嘶きと重たい衝撃音が聞こえたのが一体どれが先だったか]
アレッキオ!!!
[厩の中で倒れた騾馬を見たのと叫んだのとはほぼ同時]
ほんとに、クレムさんなの?
こんな、こと。
[かかりが緩かったのか、完全に倒れたわけではなさそうで
怪我はないように見えたものの…
もし足に怪我をしたりしたら、と思うと憤りが募る。
ドタバタのあいだに、エリィゼは立ち去ったかどうだったか]
―自宅―
[心配そうに寝息を立てている騾馬の首を撫でながら、
ふ、と視線を宙に向けたかと思うと]
…うるさいっ。
[むっとしたように声を荒げた]
わかってるけど、ボクはアレッキオにもしものことがあったら…
[むっとした声音は、誰かに向けられているようだが、独り言にしか見えず**]
― 森の中 ―
...僕が森を散歩するのは...いつもの、こと、だよ。
[近付くポラリスから、無意識に逃げるように後ずさる]
『コワイ...』
[胸の中震える声は彼女には聞こえないだろうけれど、表情からは怯えの色が見て取れるだろう]
......僕は大丈夫...もう行かないと......
[座ろうと言われても、首を振って、そのまま背を向けようとする]
[半ばまで背を向けたまま、抑揚を押さえた声で突き放すような言葉を紡ぐ]
だったら、話す必要なんてないよ。早く僕達を封じればいい。
[精一杯の拒絶。苦しさに堪え兼ねて、口元を押さえた]
理由なんて...!
[案じる色を乗せた声に更なる拒絶を投げようとして、響いたもうひとつの鳴き声に、言葉を詰まらせる]
......ただ、重なっただけだよ。ここから逃げ出したいって思った僕と、解放されたいと思った、祈り子の願いが。
[張りつめた糸が緩むように、声は僅かに和らいで]
だって、仕方ないでしょう?僕はここに居ても何の役にも立たない。父さんにも棄てられた。
もう嫌なんだ、誰かの同情に縋って生きて行くだけなんて...
[それは、半分はホントウで、半分はウソだ]
僕一人じゃ、出て行く勇気も力も無かったけど、祈り子が力を与えてくれた。
本当は周りの人だけをみんな眠らせて、そのまま...行くつもりだったけど、邪魔された、からね。
[邪魔した当人、アルカの追ってくる気配のない事が、気にかかる。一緒にいたエリィゼは無事だろうか?魔は、人を傷付けるようなことはしないとは、判っていたけれど]
[エリィゼにだけ伝わるコエを今は使おうとは思わない。これからしようとしていることは、彼女には知られたくなかった。いや、誰にも、だ]
― アルカの家→ ―
[駆け出そうとして聞こえたのは、重いものが崩れるような音>>41]
えっ?
[アルカがそちらに向かうのをみれば、騾馬が倒れていて
そんな事をするのは一人しか思いつかなかったから]
ごめんね、アルカお姉ちゃん…
[それだけを残して、クレムを探すために駆け出した
その後の独り言>>43には気付かないままで]
― 村 ―
[遠くに探す相手の影を見つけて駆け出そうとして、聞こえてきたポラリスの声>>29に立ち止まる
ヒューゴを呼ぶ声は、誰かが倒れたことを伝えるもので]
アルビーネお姉ちゃん?
お姉ちゃんも眠らされちゃった、の?
[昨日、誰よりも頼りになる、と言っていたアルビーネ
彼女を診たヒューゴがいつもより辛そうに見えたのは気のせいだろうか?
彼女を眠らせる必要があるのが誰か、ポラリスには何かが判っているように見えて]
お姉ちゃん、見つけた、の?
[森へ行く、というポラリスにそう尋ねる。森には「彼」がいるから
返るのは、肯定だろうか。困ったような表情は、多分隠せなかっただろう]
……ごめん、なさい。
[小さく零すのは謝罪の言葉。クレムの事を知っていたのだと、そう打ち明けて]
……どうしても、封じないといけないの?
[零した声はポラリスには聞こえただろうか
自分は知っている、「彼」が悪意を持って眠らせたことなど一度もないこと
とても、とても優しいこと
だけど、それは、自分も少なからず祈り子の影響を受けているせいでそう思うだけなのかも知れず
答えを見つけるには少女はまだ子供だった
だから、ポラリスや、もしかしたら追いついたかもしれないほかの人の言葉を、ただ聞いているしかなかった。
一緒に行く、と言ったならポラリスには止められたかもしれない。だから、その時は見送った、けれど]
やっぱり、行かなくっちゃ……
[ヒューゴがアルビーネを家に運び込む、その一人になった隙に、森に向かって駆け出した]
― →森の中 ―
[森の中、やっと見つけた二人は、とても真剣で
声を掛けられる雰囲気じゃなかったから、話し声が聞こえる所で立ち止まって
クレムには、こちらの姿は見えるだろうか?
「コエ」が聞こえないのが少し不安で、だけど、こちらから「コエ」を送るのも躊躇われて
ただ、何も出来ないのがもどかしく思いながら、二人を見ていた]
………皆が、同情で貴方に接していたと、本当に思ってるの?
[声にも込められる憤り。
じっとクレムを見詰める]
同情で相手をしてもらってるなんて思ってるなら、それは他の人に失礼だわ。
…ソーヤは貴方が来てから、本当に楽しそうにしてたわ。
それも同情だと言うの?
役に立たないと思うなら、役に立ちたいと思わないの?
身体が弱くても、やれることはあるはずよ。
ねぇクレム君……お願い、”逃げないで”。
[その言葉を紡ぐ時は、眉が下がった]
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