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青年 アーベルが「時間を進める」を取り消しました
[咳き込む様子に、従魔はきゅ、と声をあげ。
労わるように、そう、と擦り寄る]
─厨房─
おはようございます、と。
いや、料理ではあるんでしょう、けれど。
[……なんで異様な気配を感じるんだろうか、とは。
さすがに言いはしなかったが]
[首を傾げつつ、屋敷の玄関をくぐる。階上に風精の気配、ああ、無事だったのだな、と安堵の色を浮かべる]
んーと…
[匂いの元は気になったが、厨房には複数の気配があったので、そちらには向かわず、階段を昇る]
……影輝界では薬物調合をりょうりって呼ぶのか……?
[ひくりと顔がひきつる。
料理じゃない料理じゃない料理じゃない。
これは絶対薬物調合だ。
ビジュアル的にも料理とは言えない]
…ちなみに、何を作るつもりで?
[そろりと鍋を恐ろしいもの見るような瞳でのぞきこもうと]
[ドアの向こうから感じるのは天聖の気、それと機鋼の…アーベルではなく従魔の気配だというのは判った]
麒麟殿?
[そっと声をかける。そういえば彼の麒麟は、消えた羽根猫と親しかったのだと思い出して]
うん。ハインリヒさんと、昨日お約束したし。
[微妙な間違い。まあ昨日やるはずだったのは嘘じゃない]
薬物?そんなことないよ?
[何でそんな顔をするんだろう、と言いたそうな顔]
えぇと、カレー?
お野菜だけのはスープ。
[うん、確かに黄色い。ただ微妙な匂い(しかもちょっとキツい)なのは変わりない。
一応慣れてないから簡単そうなのを目指したのは不幸中の幸いだっただろうか]
[代わりに映ったのは、揺れる元気な尾。
私は一つ瞬いて、大丈夫と問う声に応えるよに優しく見つめる]
[元気な報告の後、耳に届くは探していた時の竜のコエ]
………ぇ………
[私は安堵しつつ応えようとして、上手く声が――コエも――出ない事に、訝しげに眉を寄せる。
指先を喉に滑らせ――急激に蘇るは意識を失う直前の出来事]
――…す…じゅ………にげ……っ!
[叫びつつ身を起こそうとするも、果たせず。
口内に広がる仄かな血の香りに、小さく咳き込む]
……はあ。ハインリヒ殿と。
[なんてー約束を、と。思ったのは内緒の話。
ヘルガの薬物調合、という物言いには、カレーってある意味薬物調合料理だよなあ、なんて。
少し、遠い世界へ]
……。
[カレーってこんなに目が痛くなるものだっただろうか。
こんなに不思議な香りがするものだっただろうか]
……なぁ、おとっつぁん。
味見してやんなよ。
[ひきつった表情でちらりと見て]
[刹那、気をやる直前の状況と今が混乱する。
落ち着いたのは、擦り寄る温もりゆえに]
………
[大丈夫というよに、柔らかなその背を優しく撫でて。
掛けられた声に驚いて顔を上げるも声は出ず、返事は叶わない]
「きゃう! 無理、ダメ、無理!」
[視線に落ち着いたのも束の間、咳き込む様子にセレスは声を上擦らせ]
……っ!?
無理、するな!
明らかに調子悪いんだから!
[投げる声には、微か、焦りが宿ったか。
自身の不調は、見事に棚上げではあるが]
え? あ?
いや、俺は。
[ヘルガの言葉に、思わず上がった裏返った声。
……と、不意に、異眸が瞬かれ]
……。
[視線は上へ、ついでに意識もそちらへと]
酒場のママ ヘルガが「時間を進める」を選択しました
[咳き込んだ理由は本能的に理解し、擦り寄る温もりに心落ち着け。
大丈夫と言うように彼の仔を撫でて、自らの喉を指差し、首を振る]
……コ…エ……な…ら……
[時の竜の声に耳を伏せて身を竦めつつ、セレスを見つめて。
声は無理、コエなら少し、その意図は伝わるだろうか]
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