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[麒麟の反応に、目を伏せる]
僕は傍にいたのに、止めることが出来ませんでした…。すみません。
[謝罪を口にしてから、顔を上げる]
今まで消えた方々も皆、廃棄エリアという場所に送り込まれたようです。
恐らく、皆、無事なはずです。
[これまで生命の娘たるリディが出入りし、今もそこに居るのなら、命を脅かされている者はいない筈だ、と、内心の確信を込めて告げる]
……どうか、した?
[妙な響きのこもった一音に、一瞬、きょとりとして。
それから、あ、と短い声。
こんなやり取り、前にもあったような、と。
……確か、呪印が酷く痛んだ時に]
……いや、まあ。
少し、呪印が痛んだりはしたけれど。
でも、大丈夫だから……。
[無理はしないよ、と。
できるだけ、穏やかに告げる。
後で、呪印の事も説明しないとならないか、などと*ふと考えながら*]
― 廃棄エリア・非常用倉庫前 ―
[数体のドロイド徘徊しているのが見える。場所柄、蟲をかたどったその姿は某家庭内害虫を連想させ暗鬱な気分になったかもしれない。]
こんなところまで出張してるんですか。ご苦労様です。
[声に反応し放たれる破壊の光はエプロンドレスの少女の遥か前で捻じ曲がり壁の穴をあける。
次の瞬間、少女の黒い瞳が紅く染まり通路の一角を白い世界へと変えるだろう。]
所詮は、子供の玩具ですね。
[氷に閉じこめられ機能を停止させたドロイドを見ることもなく倉庫の中へと入っていった]
[私は言葉もなく、雷精の言葉に耳を傾けた。
手が震えるのが判る。
なれど何も言えぬは喉のせいでなく、雷精の目を伏せる姿ゆえ]
……
[雷精の謝罪に、私はそなたがせいではないと緩やかに頭を振る。
目の前の青年でなくとも、誰も止められてはおらず――私とて止められはせぬのだから。責める事など出来はしない]
『はいき…えりあ』?
[続く言葉には瞬くも、無事、との言葉には細い肩が揺れて。
傍らの碧の獣へと手を伸ばし、縋るように抱きしめようか]
『…ええ、きっとぶじで』
[確信の込められし言葉に、私は静かにそう応える。
淡い菫色は祈るように天へと向けられ、啼き声が一音零れた]
[祈るように啼き声を漏らした麒麟の姿を見つめる。否…見つめていたのは抱きしめられた機鋼竜の従魔か]
『聞こえるか…?』
[この声が、と…それは、誰に向けての呟きだったのか]
[倉庫の中を見渡して。必要になりそうなものをチェックしている。]
キャンプセットのようなものはありますね。
固形燃料もあるので火の心配もいらなそうです。
運ぶとなるとわたし1人だと少し大変そうか。
パッと転送できると楽ですのに。
[食料の山と厨房器具を見ながら考え込む]
必ず、連れ戻しますから。
エーリッヒ殿も、他の皆も。
[鋼の瞳に決意の色を滲ませて、そう告げ、立ち上がる]
麒麟殿は、ちゃんと休んでないとダメですよ?でないとエーリッヒ殿が心配します。
[にこりと笑って]
[私は緩やかに頭を垂れて、少し不安げな様子の彼の仔を優しく撫でる。歌う事も、啼く事も出来ぬ喉の代わりに。
知らせてくれた雷精に礼を伝えようと口を開き掛けて、私は彼の精が腕の中の仔へと向ける視線に気付く。
今まで屋敷から消えたは二人づつ、なればエィリ殿以外にもう一人]
『……だれが きえたのですか? そなたも…?』
[気遣うように見上げて、そう訊ねる。
腕の中の仔を見つめる彼が、それに気づくか否かは*知らねど*]
[何かを思いついた顔になり、ポンと手を叩く]
転送装置に比べたら、あれ1つ動かすくらいは何とかなりそうですね。
運んでもらうことにしましょう。
[蟲形ドロイドにリュックを背負わせて通路を歩き去る*]
[麒麟の問いかけには、気付いたとしても答えはしなかった。ただ安心させるように笑って]
セレス、この麒麟殿を頼むよ?なんだか無理をされているようだから。
[もう一度、従魔を撫でてから踵を返した]
−中央塔外周通路下部・メンテナンスエリア−
[かけられていた毛布が落ちた。]
……、
……………。
[息を吸って、][吐き出して]
[緩やかに首を振る]
[散る青]
[私は決意の色の滲む彼の精の言葉に、同意するよに頷く。
心配は…もう既にたくさん掛けてしまったけれど。
きっと今もさせてしまっているのだけれど]
『…はい』
[「ボクも」と言うように鳴く彼の仔を優しく撫でて、私は問いに答える事なく笑みて出てゆく雷精を見送る。
彼の仔も頼まれた事に応えるよに鳴き声を上げたろうか]
『……どうか、ごぶじで』
[命の恩人の優しい猫を、そして今までに消えた者達を想い、私は静かに目を閉じる。
彼等を助け出す為にも――直接ではなくともその役に立つ為にも、もう少し休まねばならぬと*心に戒めるように*]
[薄闇の中]
[立ち尽くす]
[白の衣服にはくすんだ赤]
[左手と右足には未だ外れぬ枷]
[片側の青は、ただ、前を見つめて]
[人の形をした右の手を][伸ばす]
[*その先に在るのは――*]
[数多のコードに囚われた翼を持たぬ竜]
[移ろう空の如き双眸に青を映す]
[『魂』無き『器』のみの存在]
[なれば]
[今此処に在るものは何だと言うのか]
[彼らの会話を聞く者がいたとて]
[理解には及ばなかったであろう]
[各人に届く声は異なっていたが故に]
[まるで、心を鏡に映したかの如く。]
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