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[私は傍らを飛んでは休み、飛んでは休みして移動する彼の仔を見、勝手に動いては心配をおかけするやも知れぬとコエを投げる]
…セレ…ス…と……果…じゅ…ぇんへ……
ちゅ…ぼう…は…何や…ら……こわ…い……ゆぇ…
[その危険と正面決戦中たる時の竜が、いかなる表情で応えたか知ることなきは幸いや否や]
[痛む喉に固き果実は辛くて、私は柔らかな実のなる温室へとゆく。
機鋼界の制御が狂いつつある中、たわわに実るは陽の麗人の恵みであろうか。
見た事なき果実の数々に目を丸くする彼の仔を、優しく導いて、辿り着くは紫と翠の垂れ下がる棚]
『いただきまする』
[唇の動きでそう告げて、豊かに房なすその実へと指先を伸ばす。
一房は食べられぬやもと思い、幾粒かを摘んで掌へと転がせば、彼の仔は興味深げにその珠を突付こうか]
[うろつく黒い猫の興味を引こうと、猫探しの時に鳴らす音を投げかけてみる。一度黒猫はこちらへと視線を向けたが、寄ってくることは無くまたうろうろ]
……飼い主が飼い主なら、ってことかね。
[嫌われていると認識したらしい]
[時の竜の瞳に似ているとはしゃぐ様子に、私は仄かに目元を和ませる]
『そなた…おとどのが すきなりや?』
[勿論と応える彼の仔に、私は良い仔だと頭を撫でる。
彼の竜にも見せたいと言わば葉に包み、その場を後にしようか]
[瑞々しい果実を食み、喉を潤して。血の匂いを嚥下する。
濡れた指先を舐めれば、彼の仔も真似をして前足を舐める姿に、仄かに目元を和ませようか]
[葉に包んだ土産を前足に抱いて飛ぶ姿を招きつ、私は翠の木立へと足を向ける。彼の仔に見せたき物がありしゆえに]
[風が緩やかに流れる。昨日より風精の数は少なく、元々このエリアに存在するくらいにまで落ち着いている。耳に届く声は相変わらずいつもより減っているが]
[リンゴを食べ終わり、流れる風を身に受けていると、小さな黒い影が目の前、立てられた膝の上に降り立った。それは対なる獣が連れていた鳥]
あれ、お前アーベルと一緒に居たんじゃ無かったのか?
[彼の者の下から逃げていたとは知らず、鳥に向かってそう声を投げかける。否定するように、ぴー、と鳴いた鳥は再び羽ばたき宙を舞う。眩しげにそれを眺めると、その先に影を2つ見た]
ん…ナタ・リェと、セレスティン?
[昨日オトフリートから倒れたと聞かされていた天聖の者。傍には機鋼の従魔の姿。2つの姿を見つけて、思わずその名が口から漏れ出た]
―果樹園―
[足を向けしは、私が種を植えし地。
なれどそこで待っていたは、小さな双葉でなく小さな若木。
不可思議そうに見つめる彼の仔の鼻先へと優しく触れ、次いで若木の萌える緑へと触れる。そなたと、こなた。そう告げるよに]
『そなたは まだ わかぎ』
『いずれは おおきくなり 実もなろうが』
『今は まだ まもられるが良い』
[彼の仔は幾度か瞬いて、小さく鳴いてみせた]
[痛い? という問いにビクンと反応]
…………ううん。大丈夫
[首を横に振ると、壁に寄りかかりながら立とうとし]
あっ……
[膝がカクンと落ち、前のめりに倒れそうになる]
『これは わたくしが うえしもの』
『いずれ おおきくなり 実をなし』
『その実がまた 芽を出し きとなりて』
『――ずっと そなたが そばに』
[どのような顛末になろうと、何れは来る別れ。
なれどそなたが側に心はあると、そう告げるように見つめる。
彼の仔は幾度か瞬いて、小さく小さく…鳴いてみせた]
―厨房―
[オトフリートに何をどうしたのか聞かれれば]
お肉炒めて。野菜も入れて。見たことのあるハーブ入れて。
[見たことのある?]
黄色い調味料と、あれとそれとこれと…これを入れて。
[赤黄茶緑白。最後のが砂糖の壺っぽいのは気のせいか]
煮込み始めたところだよ?
[甘辛くてちょっと苦い。そんな代物になりかけていたが。
今ならまだ薄めて味を作り直すのも可能だろうか。
自分でも味見してごらんと言われればやっぱり硬直]
…おかしいなぁ。
[そんなこんなで徹底指導受けながら作り直し開始。
ちょっと不思議風味は残ったけれど、匂いも味もとりあえずカレーらしいものになった…かな?]
こっちのスープはどうすればいい?
[こちらはまだ味も何もつけていなかったから。
マトモなものが出来上がることでしょう。
陽光の精霊も作ってくれてるようですし。きっとちゃんとした食卓に*なるはず*]
[よっ、と言う声と共に木の根元から立ち上がり。ナタ・リェ達の傍へと歩み寄る。宙を舞っていた鳥もその後をついてきた]
よ、もう起きて大丈夫なんか?
[声をかけた相手が完全なる人型を保てぬ姿であるのを見れば、疲弊も大きかろうとその身を案じ。宙を舞っていた鳥はハインリヒの肩へと降り立つ。ぴー?と鳴いて首を傾げるような仕草をしたか]
[その場から立ち去りゆこうとする背に、聞き覚えのある声がかかる。風が吹いて髪を乱すは、主が為に引きとめんとするかのよう]
『…かぜの』
[唇を動かして、小さく頭を下げる。
既に人間と知るが故に、近づくか、近づかぬか…しばし迷う。
その間に疾風の男は近づいていて、私は少しだけ首を竦める。
彼の仔は肩の鳥を興味深げに見つめようか]
『……ええ もう やすみましたゆえ』
[風に愛されし男には、口の動きだけでも滑らかに通じようか]
[首を竦めるのが見えれば、必要以上には近付かず。手を伸ばしても触れない位置辺りで立ち止まる。動く唇、されど発されないその声に僅かに目を見開くか。それでも何を言いたいのかは風がその補助をしてくれて]
そか。
…あんまり疲れは取れて無いみたいだな。
喉も、痛めてるみてぇだし。
[自分の喉を示しつつ。肩の鳥は興味を示されればぱたぱたと羽ばたき己を見つめる従魔の前に舞い降りる]
[恩人に癒してもらえば、とも思ったが、彼の娘はここには居らず。この者を一番心配するであろう流水の猫も居なくて。人間を恐れるとも知っているが故にどう声をかけるか迷っているのが目に見えて判るだろうか]
[咄嗟に手を出して]
[支え、]
……、
大丈夫、じゃないね?
[以前と似た体勢]
[覗きこむようにして]
[問いと言うよりは、確認。]
[歩みの止まる足。私は僅かに申し訳くなりて柳眉を下げる。
僅かに見せる驚きには、少し視線が揺れやも知れぬ]
『……そう みえまするか…』
[疲れているのは事実ではあれど、人目見て言われるは流石に堪えて。私は僅かに眉を寄せる。
なれど風の男の困った様子に、視線が揺れて…黒の猫へと移る]
『あの子は エィリ殿の 仲良き子』
『…探しているので しょうか…』
[そう告げる傍ら。
彼の仔は近づく鳥を触ろうとして、手の中の荷に困り顔]
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