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[「アイツ」
親しげに聞こえる呼びかけに、私は問うよに風の男を見やる]
…そなたら、知り合いなりや?
[黒猫であった男の子は、撫でられるまま。
黒猫の主が誰とは知らず、ましてやフルボッコ仲とは知らず、不可思議そうに問いかける]
いや、運んだのは俺じゃなくて、アーベル。
俺は、腕、塞がってたからね。
二人は……消えたと。彼からそう聞いたけど。
その前段階の君の負傷については、さっぱり。
どこで何をすれば、役に立つんか全然わからんな。
機竜の説得でもいってみるか…
言葉わからんが…。
[のそ、とゆっくり動き出す。
しかしおなかすいた…]
リディは帰れるもんねー!
[………。]
……。
どおしてー!?
[ギュンターが、見せてみろというので手渡した。
ギュンターが言うには、強制的な転送の際に壊れたのだろうということだった]
[暫く撫ぜていた手は、]
[編まれた赤の髪を]
[影の降りる頬を]
[なぞって、]
[そっと、 離れる。]
行かないと。
[――足りない][ないている]
[低く呻くような、機械の駆動音]
まだ、わからない。
でも、わかりそうだから。
わかりたい。
[小さな囁き][独り言のように]
[従魔は鳥が肩に止まると瞳を輝かせ、触れない代わりに頬を摺り寄せる。鳥もまた相手のその仕草に目を細め甘んじた]
ん、あ、いや。
直接の知り合いってわけでも無いんだが。
コイツの飼い主と、ちょっと昔一悶着あって、な。
[僅かに動揺したためか、誰の飼い猫であるかを言いそびれた。無意識に口に出すのを拒んだのかも知れない]
[足りないものは][何なのか]
[気付いたものはいただろうか]
[力が欲しいと言いながら]
[力を奪いなどしていない事に]
[欲したものは][欲したのは、]
< 猫もするめいかをたべました。
それから、映像をながめます。
いくつかのモニターが、いくつかの場所を――音はなしに、表示していました。 >
……どう、なのかな。
< ぽつり。つぶやいたことばは、音になったでしょうか。 >
[そうこうしている間にもどこからか沸いて出たドロイドを、ギュンターが撃破]
おじいさん、強かったのねー。
ミリィの試し撃ちですっ飛ばされたくらいだから、てっきり雑魚なのかと思ってた。
[しょんぼりギュンター]
ごめんごめん。
そういえば、リディのナイフどこ行っちゃったんだろ。
ドロイド相手じゃ、力も使えないしなあ。
相手が生き物だったら、いのちを吸い取っちゃったり、逆回復させればいいからいいんだけど。
[ちょっと物騒だ。
ギュンターは胸を張った]
え、お爺さんに任せとけって?
―屋敷前―
アーベルが、ですか?
[丸く目を見開いて、問い返す。見逃してくれた?のか、とは思ったが、まさかそこまで面倒見られてるとは予想外]
本当に、何も考えてないんだなあ…
[ぼそり]
ああ、ええと怪我は単なる家庭争議です。エーリッヒ殿に叱られました。
[説明になってません]
―森林地帯・北西部―
[銀に装う樹林の合間を、さく、と。踏みしめて。
水墨の世界に満ちた白の絨毯に、足跡を一つ残した。
小さく零した溜息は雪煙と変わって、消える。]
…――まるで、牢御所を模した様だな。
[くつりと、苦笑を零す。
少年の蒼を通して、見識っては居たけれども。
『封印』の領域を司る氷破の声の響く場所ならば、
そう感じるのも――或いは偶然では無いかも知れない。
頭の端で薄らと思いながら、僅かにその身を屈めて。
さらりと雪上へと零れる灰銀を気にも留めず、
掬う様にして、指先に真白を乗せた。]
[目を見開く様子に、軽く、首を傾げ]
ああ、そうだけど……。
何も考えてない……って?
[呟きに不思議そうに問いつつ。続いた説明?には]
家庭争議でする負傷ですか、あれが。
[きっちり突っ込み]
痛いのなら、此処に居て。
……大丈夫だから。
[淡々と紡がれる言葉は、]
[冷たかっただろうか?]
[彼にはわからない]
行ってくる。
[地下からでは、操作はままならぬから]
[行かなければならなかった。]
[彼女の答えを待たず、]
[*彼は向かう*]
―ファクトリーエリア―
なぁ、何で俺たちをここによんだんだ?
何かしてほしいことが、あるんだろ?
[無数のコードに拘束されているかのように見える大きな竜。
冷たいその身体に触れた。]
[彼の仔と小鳥の戯れに目を細めつ、風の男の様子には首を傾けるのみ]
『…なれば、この子を連れて行ってあげて下さりますか』
[昔の一悶着=現在仲良しの方程式かと、私は男にそう願う。
飼い主たれば、恐らく慰めてくれるであろうと。
それから、ふと私は大切な事を思い出す。
消えた者達を助け、今ある手掛かりを守るための事を]
―屋敷前―
邪魔者は排除する、と、言っていましたから。
自分の意志でやっているなら、僕を助けるのはどう考えても不自然だ。
[時空竜の目をまっすぐに見つめる]
アーベルは、機鋼竜に関わる者、ですよ。彼の介入で、二人が消えるのを見ました。
――…、
[冷やりとする感触に、僅かに眉を寄せて。
しかし其のまま、そぅと掌へと握り込む。
数時間と立っていた所為か。
指先が既に冷えているのか、水へと変わり成る事は無く。
薄暗い空にを見上げ、ゆるりと、蒼を瞬く。
灰銀へと、止む事の無い新たな真白の欠片が舞い降りた]
……模した物とは言え。
失うには、惜しい場所だな。
[ゆるりと、静かに呟いた言葉は、雪へと吸い込まれて。]
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