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さて、此れで満足か?
――随分と、ノイは心配していたのに。
相変わらず冷たい奴だな。
[小さく笑う声に、鴉が黒の瞳を向ける。
ゆるりと、小さな頭を傾いで紡ぐ声は、何処か呆れた様な]
「こうでもしなければ、――”あの場”でも。
貴方は出てこなかったでしょう」
――…、
「ノイに冷たいのは、どちらですか。エテルノ」
[言葉を返す前に、するりと。
右腕へと填められた腕輪へと吸い込まれるように消える。
――正しくは其処に装飾されたサファイヤへと。]
[休んだ方が良いと言う2人の先制パンチには苦笑いを返すよりなく。事実、このままで居るのは無理な話だし。エテルノにより力を行使されれば、礼を述べて]
あっちがノイで、お前さんがエテルノ、か。
困惑してたのは…やっぱ俺のせい、だよな。
もちっとスマートに事を運べたら良かったんだが…この体たらくだ。
こっちこそ迷惑をかけたな。
[色々スマン、とエテルノだけでなくブリジットにも謝罪する]
[情報交換が終わり、部屋へと送られ。礼を述べれば今日は大人しくベッドへと横たわる]
[エーリッヒとリディが消えた。あの時リアルタイムで状況を把握する余裕は無かったが、風精達運んできた情報を頼りに今状況を整理する]
[リディがユリアン達に事の真相を告げようとした時のアーベルの言葉。「言わない。そういう、話だった」これは一体何を意味するのか。言葉通り受け取れば、アーベルも、真相を知っているということになるのではないか]
…協力者は、複数。
[あり得る可能性。天井を眺めながら口を突いて出た。「邪魔者を消した」つまり、エーリッヒとリディを消したのは、自分で行ったと言う事。アーベルがもう一人の協力者である可能性は、かなり高い]
確固たる証拠は、無い。
されど、状況証拠は、ある。
[力のコントロールが出来なかったが故に齎された情報。通常ならば知り得ることの出来なかった情報。力の均衡が崩れたが故に得られたは、何と皮肉なことか]
[今回集まった情報で、状況は大分クリアになったように思える。好転はしていないかもしれないが。機鋼竜の思惑、その協力者達の思惑、この界の行く末。様々考えを巡らし、途中で襲い来る睡魔に意識を手放し、深い眠りの中へ]
―二階個室―
[朝の光が差し込んでも、私は目覚める事なく。未だ昏き睡りの中]
[時折、摺り寄せられる温もりに心守られつ*白金の輪は時を刻む*]
[目を開く、傷は治療が施されて、既に痛みも無い]
あー…どじった。
[寝台の上で身を起こし、獣じみた仕草でぶるりと頭を振る]
[裂けたり汚れたりしている服を着替えて、部屋を出る]
ハインリヒさんは無事かなあ…
[昨日感じた異変を思い出して眉を顰める、生死に関わる程の衝撃とは思えなかったが]
[そっと足音を忍ばせて階段を降り、玄関から外に出ると、果樹園へと足を向ける。足元のふらつくようなことはなかったが、僅かに普段よりその動きは緩慢だった]
―屋敷→果樹園―
―果樹園―
[昨日より、また伸びたように見える若木の傍、自分が意識を無くした際に落とした短剣を見つけて拾いあげる。暫し、手の中でくるり、と弄び、思案]
これなら、なんとかなるかな?
[短剣を懐に入れ、結界を超えて中央塔へと歩き出す]
―中央塔―
[幸い、雷撃の一閃で排除できる程度の小さなドロイドしか途中では襲ってこなかった。中央塔の外周区画に足を踏み入れると、バンダナを外して短剣を取り出し、封じられた壁に両手でその切っ先を突き当てる]
雷光の名によって…命ずる…
[紫電の輝きがその身から短剣へと流れる。それは生き物の胎動にも似ていたか]
汝が主の元へ…
[パチリ、と雷光が弾け、見えない壁に吸い込まれるように…短剣は姿を消した。或いはシステムの中に流れる電流の中に溶込んだか。運が良ければ、地下に居る筈の生命の娘の元へと、その武器を届けるだろう]
後は自力でなんとかしろよー
[どこか気の抜けた声で、呟いて]
ふう…
[反対側の壁を背に、ずるずると床に座り込んだかと思うと]
ねむ……
[眠った]
[ミリィの攻撃を防ぐために行ったことなど何もなかった。
けれど、傷などない]
…翠樹の力でこの身を傷つけることなど、叶わない、か。
[皮肉っぽく小さく呟き、そのまま消えるミリィを睨んだだろう]
[ブリスを軽くにらんだのは、そこに本性を解放しようとする可能性を見たから。
結果として何もなかったが]
…まったく。
[ちいさくぼやいて、精霊は相変わらず不機嫌そうに壊滅を免れた部屋へと戻る。
―――微かに翠樹の気配を残して]
─二階・自室─
[ふ、と戻る意識。
目覚めを呼び込んだのは、訴えかける従魔の声]
ち……きつ……。
[掠れた声で呟いて、ベッドを寄せた壁に寄りかかる。
白梟から向けられる、睨むよな視線]
……そう、怒りなさんな、と。
[部屋へと戻ると手荷物のなかから煙草を探し火をつける。
香りは蜂蜜のように甘く。
実際には煙草ではないのだけれど]
……まったく。
ここのやつらと来たら本当に後先見ないのばっかりだねぇ……。
[疲れた、と小さく呟いて吐息ひとつ。
薄青の煙がゆらゆらと揺れては消えた]
どいつもこいつもバカっていうのか、騒げない方がバカなのか。
[首をかしげればこきりといい音。
そのままぼんやりとした表情で中央塔のある方へと視線を向ける]
……セレスは、わかってる。
俺は、わかろうとしてないだけ。
[無限鎖を介した言葉のやり取りを、こんな言葉で締めくくると、ゆっくりと立ち上がる。
足元がやや覚束ないが、取りあえず下へ行こうと部屋を出て。
ふらついてます、見事なまでに。
こんな状態で階段はまともに下りられるのかというと]
…ま、いざとなったらひっぱたいて多少のお仕置きも必要か。
[ふむ、と首を捻って火を消すと立ち上がって廊下に出る。
壊滅を免れた酒があるなら寝酒にかっぱらってこようと]
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