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冷たいの、嫌じゃない?
……でも、嫌っていたよ。
[まるで足りない言葉]
エテルノ・イレーネ。
…………、
“わからない”名前だ。
[眉が寄る]
[次いだ言葉]
[ぱちり、瞬いた。]
覚えて、いる……?
[風の男の言葉に本から得た知識を思い出す。
生命の、少女。雷精の…関係せし者]
『…そう。皆…怪我を…』
[次々と出る負傷者の名に、私の表情は曇る。
白梟が治療したかもとの言葉には、曖昧に頷いて促されるままに歩き出す]
[呟かれた言葉に、ゆる、と瞬く。
ただ、最後の部分から、誰の言葉かは察しがついた]
冷たさ、温かさ。
痛み、怒り、悲しみ。
生命と精神に属す感覚。
……俺も、わからなかったな。
そして、知りたいから、『産まれる』事を望んだ。
[呟きはどこか、独り言めいて]
命のない存在……か。
彼がそうだとしたら。それを……探して?
[疑問系の呟きの後、異眸はふと、中央塔へと向けられる]
[表情を曇らせる様子に言わない方が良かったか、とも思う。少なくとも自分も怪我をしたことは隠すか。これ以上その表情に影を落とさせないために]
[部屋に戻るか、広間に行くか。それを聖獣に訊ね。部屋に戻ると言われれば、送ってから広間へと向かう]
[従魔も聖獣のあとを追いかける。その肩に鳥を乗せたまま。鳥も大人しく肩で揺られ移動する]
――少なくとも、私は。
嫌であれば、態々掬い上げたりはしないさ。
……唯、如何だろうね。 属性であれ、他の理由であれ。
嫌がる者は居るかもしれない。
…、誰が?
[足りない言葉に、薄く口許に弧を浮かべつ。
ゆるりと、首を傾げながら問うて。]
あの仔の様に、”知らない”名では、無いのだね。
其れで、十分かな。
[緩く一度、蒼を瞬いて。
続く言葉に、弧を深めて喉を鳴らす]
そう。――今は無き君の記憶に。
私の名は残っていると思うのだけれど。
機鋼竜同様、アーベルもまだ「産まれて」いないのかもしれません。
それとも封じられているのが、彼本来の「命」なのか。
探しているのは、封印を解く方法なのかもしれない。
[時空竜に倣うように、一瞬だけ中央塔に視線を向け]
ともかく…アーベルを探さないと。屋敷には居ないようだし。
オトさんは、こっちの守り頼みますね?怪我人一杯ですから。
[軽く言って、結界の外に向かって歩き出す]
冷たくて、
寒くて、
寂しいって。
……、……リディが。
[尋ねられるまま][素直に洩らす]
[生命の魔が感じていたのは、]
[それとは異なる事だったのだろうが]
ああ。
知らなくは、……ない。
無い、記憶。
失くした?
……可能性として、考えられなくはない……な。
[小さく呟いて。
軽い言葉には、小さく頷く]
ああ……どこから何が降ってくるかわからんし、こっちは俺が見てる。
……一応、無理はしないように、ね?
[俺に言われたくはなかろうが、と。冗談めかして付け加え]
[風の男の問いに『部屋へ』と答えたは、厨房に近づくは怖いという警戒が残っていたゆえか]
[私が重い口を開いたのは、送ってもらった直後の事。
一足先に飛び込んだ彼の仔に見えぬよう、風の男へと唇を動かして問うたのは、多少なりと後ろめたさがありし故か]
『翠樹が逃げたと、聞きました』
『そなたが情報の元、私という事に願えませぬか』
[『…彼の人を、守るために』
それは精神が竜をかばう為のもの。
既に幾人かに知られた後とまでは知らず、願うは愚かであろうが。
皆の助けとする為に私に出来る事は、それくらいしかないと]
降ってくるというか、撃ってくるというか…
まあ、確実に、肉体的には、そっちのが危なそうな気がしますから、本当に気をつけて。
[振り返り、一瞬真顔で言って、それからひらりと手を振って、時空竜の守護結界を出た]
――…、
…そう。生命の娘が。
[笑みを浮べたまま、小さく言葉を返す。
数日前を思い返せば――寒さを拒む事は有るかも知れないが。
少なくとも「知覚」を識る生命の子から、
嫌いという言葉が出るのは、思いも掛けない事でも在るから
――恐らく、他の言及だろうとは容易に想像出来たけれど。]
さぁ、私には前の君しか判らない。
あの刻から、――今、こうして私目前に立つまでに。
……「失くした」のか。
「無くした」のか。
[雪上へ吸い込まれるかと思われる程、静かに、言を紡ぐ。
ふと、青年から零れる音に、僅かに眉を寄せた。]
ああ、全くだ。
そちらも、気をつけて。
[静かな口調で言いつつ、手を振り返し。護法天陣から離れる背を見送ると、屋敷の中へと]
[恐らく、ミリィが直接自分を狙って来る事はない。それは彼女にとって余りに不利な賭けのはずだ。だから、単独行動が出来るのは自分だけ。そして機鋼の精霊力を…アーベルの気配を一番探しやすいのも(対である精神を除けば)多分自分の筈だった]
さあて、ほんとにどこふらついてるんだか…
そう。
[笑みを浮かべる竜に目を細めて]
[何事も無かったかの如く]
[彼は人の声で言葉を紡ぐ]
前のならば、わかる、ということ?
前の、って、何。
……なくしたのに、
どう、
違いが、 あるの。
[幾重にも連ねる問いかけ]
[赤を帯びたシャツの胸元を掴んだ。]
[聖獣を部屋へと送り、入るのを確認した後に立ち去ろうとしたが]
…何?
何故──。
[そんなことを、と言いかけて、続く唇の動きを見た。それが誰であるか、すぐに理解する。影輝や陽光には既に知れたが、翠樹にはまだ知られては居なかったはず。それにまだ、翠樹の少女は自分が感知出来ると思って居るのではなかろうか]
──…分かった。
あまり、そっちに向かわないようには努力するがな。
[その意味は聖獣に通じただろうか。今は自分自身が直接情報を得られると思われていること。目の前の聖獣も、無理はさせたく無いと思っていること。たとえ自分に禍が降りかかろうとも]
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