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[驚きにか不安げな色の瞳を雷精へと向けて。
私はなされるがままに褥へと運ばれ、丁寧に下ろされる]
『ありがとうございまする』
[緩やかに唇を動かして、礼を伝える。
「怪我は」の言葉に少し惑うも。喉に手を当て、緩やかに首を振った]
[唇の動きと、喉に当てられた手に、軽く目を見開く]
……声が?一体、どうして…いや、答えるのは無理ですね。すみません。
[苦笑して、それから、その瞳をまっすぐに見つめた]
エーリッヒ殿のこと、聞いておいでですか?
[ユリアンに撫でられ、従魔はちょっとほっとしたようにきゅ、と鳴く。
時空竜が信を置く者、と知るが故か。特に警戒するような様子もなく]
[一方の厨房では、時空竜、精霊たちの様子にはあ、と一つため息を]
……ええと。
ちょっと、手を加えた方がいいかも知れませんね。
[ここからリカバリーは可能だろうか、と思いつつ。
いざとなったら、指導しつつ作り直せばいいか、なんて思ったとか思わなかったとか]
[雷精の言う通り、説明は難しいと頷いて。
私はまっすぐみる瞳を見返した。不安が過ぎる]
[告げられた名に、私は『まさか』と両手で口を覆った。
今は使えぬ喉であれど、それでも出そうな悲鳴を抑えんが為に]
[麒麟の反応に、目を伏せる]
僕は傍にいたのに、止めることが出来ませんでした…。すみません。
[謝罪を口にしてから、顔を上げる]
今まで消えた方々も皆、廃棄エリアという場所に送り込まれたようです。
恐らく、皆、無事なはずです。
[これまで生命の娘たるリディが出入りし、今もそこに居るのなら、命を脅かされている者はいない筈だ、と、内心の確信を込めて告げる]
[私は言葉もなく、雷精の言葉に耳を傾けた。
手が震えるのが判る。
なれど何も言えぬは喉のせいでなく、雷精の目を伏せる姿ゆえ]
……
[雷精の謝罪に、私はそなたがせいではないと緩やかに頭を振る。
目の前の青年でなくとも、誰も止められてはおらず――私とて止められはせぬのだから。責める事など出来はしない]
『はいき…えりあ』?
[続く言葉には瞬くも、無事、との言葉には細い肩が揺れて。
傍らの碧の獣へと手を伸ばし、縋るように抱きしめようか]
『…ええ、きっとぶじで』
[確信の込められし言葉に、私は静かにそう応える。
淡い菫色は祈るように天へと向けられ、啼き声が一音零れた]
[祈るように啼き声を漏らした麒麟の姿を見つめる。否…見つめていたのは抱きしめられた機鋼竜の従魔か]
『聞こえるか…?』
[この声が、と…それは、誰に向けての呟きだったのか]
必ず、連れ戻しますから。
エーリッヒ殿も、他の皆も。
[鋼の瞳に決意の色を滲ませて、そう告げ、立ち上がる]
麒麟殿は、ちゃんと休んでないとダメですよ?でないとエーリッヒ殿が心配します。
[にこりと笑って]
[私は緩やかに頭を垂れて、少し不安げな様子の彼の仔を優しく撫でる。歌う事も、啼く事も出来ぬ喉の代わりに。
知らせてくれた雷精に礼を伝えようと口を開き掛けて、私は彼の精が腕の中の仔へと向ける視線に気付く。
今まで屋敷から消えたは二人づつ、なればエィリ殿以外にもう一人]
『……だれが きえたのですか? そなたも…?』
[気遣うように見上げて、そう訊ねる。
腕の中の仔を見つめる彼が、それに気づくか否かは*知らねど*]
[麒麟の問いかけには、気付いたとしても答えはしなかった。ただ安心させるように笑って]
セレス、この麒麟殿を頼むよ?なんだか無理をされているようだから。
[もう一度、従魔を撫でてから踵を返した]
−中央塔外周通路下部・メンテナンスエリア−
[かけられていた毛布が落ちた。]
……、
……………。
[息を吸って、][吐き出して]
[緩やかに首を振る]
[散る青]
[私は決意の色の滲む彼の精の言葉に、同意するよに頷く。
心配は…もう既にたくさん掛けてしまったけれど。
きっと今もさせてしまっているのだけれど]
『…はい』
[「ボクも」と言うように鳴く彼の仔を優しく撫でて、私は問いに答える事なく笑みて出てゆく雷精を見送る。
彼の仔も頼まれた事に応えるよに鳴き声を上げたろうか]
『……どうか、ごぶじで』
[命の恩人の優しい猫を、そして今までに消えた者達を想い、私は静かに目を閉じる。
彼等を助け出す為にも――直接ではなくともその役に立つ為にも、もう少し休まねばならぬと*心に戒めるように*]
[薄闇の中]
[立ち尽くす]
[白の衣服にはくすんだ赤]
[左手と右足には未だ外れぬ枷]
[片側の青は、ただ、前を見つめて]
[人の形をした右の手を][伸ばす]
[*その先に在るのは――*]
[数多のコードに囚われた翼を持たぬ竜]
[移ろう空の如き双眸に青を映す]
[『魂』無き『器』のみの存在]
[なれば]
[今此処に在るものは何だと言うのか]
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