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無理、なんて。
[揺れる視界。それでもクレメンスを見上げて]
みんな、してる、わ。
アーベル、さん、だって。
[肩で息をつく]
…望ま、ない。
私に、いま、できる、の、は。
[肩を抱える。
痛みに耐えるために。
少しでも…刺激を減らせるように願いながら]
死者は何も出来ず…。
[いつの間にか消えてなくなってしまっていた、女の声にもぽつりと答える。]
[冷えていたように思えた声は。][次に聞いたときには生きていたころのそれと同じで。]
…変わったかと思ったけど。
変わらないんですね。
[小さく呟いた。]
[こちら目掛けて駆ける蒼狼を朱金が宿る瞳で睨みつけ隙なく構える。
ただ念頭にあるのは回避のみで
体をゆらりと揺らして突進を避けるように体を動かし横に逸れて流そうとする]
そう見えるだけですよ、シスター?
[わらう]
[そしてイレーネに目をとめた]
そうですね。
それなら止めはしませんが…
[いくら遅効性といえど、そろそろ兆候はでるだろうかと考える]
[手を突いて、身を起こす。
複数の、煌めき]
っ、
[蒼狼と対峙する男には届かない。
立ち上がり、自分を突き飛ばしたハインリヒに近づく。
その腕を掴もうと、手を伸ばす。けれど、距離はわからない]
なんで!
邪魔しないで、アーベルが……!
[男もまた、雪を蹴る。蒼き狼に向かって]
馬鹿野郎がっ!!
[獣の足は速い、せめてその足を止めようと、雪の上に落ちたマテウスの短刀を拾い上げ、背後から、狼の後ろ足目がけて投じる]
[また、名を呼ばれた。
ふい、と蒼の瞳はそちらを見やり。
瞬間、対象を捉え損ねる。
突進はいなされ、蒼は前方の雪溜まりへと飛び込んで。
投げられた刃は、後足を掠め、微かに紅を散らした]
[低い、唸り]
[身を翻し、距離を、そして、機を計るよに、低く構えた]
…死者に出来ることは遺すこと。
それも、継がず忘れれば消えてしまう…
[あの手帳は何処へ行ったのだろう。
…継がれねばならぬ、大切な記録。]
気のせいには見えませんけど…。
そういうことにしておきます。
答えてはいただけないのでしょうし。
[そう言って、外の様子を伺うように目を向ける]
猩が、ね。
でも結局それをしたのは、ドゥンケルだった。
[赤い呟きには、届かない声を。]
…でもだからって。
ヴィントがそうする必要はない。
[低く唸る蒼狼に、一言。]
……ばか。
あは……。
ほんとに、もう、なんかっ……。
なに、飲ませたんだよ、あのおっさん……。
[熱は冷めるどころか、更に高まり。
それでも、それは。
違う痛みを誤魔化す作用もあるようで。
……ただし、傷は、痛いが]
離せ、ユリアン!あのままじゃ、下手すると二人とも死ぬ!!
[青年の引き止めようとする力は、思いのほか強い。男は、苛立たしげに怒鳴ると、ユリアンの返事は待たずに、手にしたダガーで上着の裾を裂いた]
シスターは嘘はお嫌いですか?
[小さく笑った]
[問いは唐突にも聞こえただろう]
[彼女に真実を教えるか否か、まだ悩んでいる]
[死者にできるのは見守ること][祈ること]
[それは生者には届くことなく][交わることなく]
・・・遺す、こと?
[空気がざわめき]
[微かな風の歌が森に響く]
[ユリアンやハインリヒの声が聞こえるがいちいち神経を他に反らせるわけにはいかない。
突進をいなせたことで、速さになんとかついていけるとわかったことに安堵しながらも
瞳は蒼狼の一挙手一投足を見逃さないように見る
初めから力勝負で勝てるなど微塵も思っていない。防御など無駄
だからこそ回避を念頭に入れて、隙をうかがうのだが
身を翻し、低く構えている蒼狼を見て誘うように剣先を揺らす]
[金色の青年の言葉をきけば、小さく笑い]
遺すっていうのは、生きているうちにやったことだから。
ちょっと違うわねえ。こっちが主体じゃないわ。
......なんて、揚げ足とるのはおいといて。
あたしの大切な手帖は、あの探偵がもってったみたいよ。
君のは知らないけど。
これも「遺した」ことになるのかしらね。
傭兵 マテウスは、青年 アーベル を投票先に選びました。
[咄嗟に伸ばした手は、利き手である右。
痛みが走る。でも、気になんてしていられなかった]
でも!
[死ぬ。
自分でもわかるほどにビクと反応して、動きが止まった。
その間に上着は裂かれ、下へと引いていた勢いは収まらず、膝を突く形になる]
なら、どうすれば、いいのさ……っ
[揺れる剣先。
蒼の瞳は、じい、とその動きを追う。
誘いか。
それは、本能が察知させるものの。
それに乗るのもまた、一興、と。
蒼の瞳には、微かな──好奇の色彩が浮かび]
[短い咆哮]
[蒼狼は、雪を蹴り、高く、跳ぶ。
先に傷を受けた後ろ足を庇おうとしたのか、動きはやや、鈍い]
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