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気のせいには見えませんけど…。
そういうことにしておきます。
答えてはいただけないのでしょうし。
[そう言って、外の様子を伺うように目を向ける]
離せ、ユリアン!あのままじゃ、下手すると二人とも死ぬ!!
[青年の引き止めようとする力は、思いのほか強い。男は、苛立たしげに怒鳴ると、ユリアンの返事は待たずに、手にしたダガーで上着の裾を裂いた]
シスターは嘘はお嫌いですか?
[小さく笑った]
[問いは唐突にも聞こえただろう]
[彼女に真実を教えるか否か、まだ悩んでいる]
[ユリアンやハインリヒの声が聞こえるがいちいち神経を他に反らせるわけにはいかない。
突進をいなせたことで、速さになんとかついていけるとわかったことに安堵しながらも
瞳は蒼狼の一挙手一投足を見逃さないように見る
初めから力勝負で勝てるなど微塵も思っていない。防御など無駄
だからこそ回避を念頭に入れて、隙をうかがうのだが
身を翻し、低く構えている蒼狼を見て誘うように剣先を揺らす]
[咄嗟に伸ばした手は、利き手である右。
痛みが走る。でも、気になんてしていられなかった]
でも!
[死ぬ。
自分でもわかるほどにビクと反応して、動きが止まった。
その間に上着は裂かれ、下へと引いていた勢いは収まらず、膝を突く形になる]
なら、どうすれば、いいのさ……っ
[揺れる剣先。
蒼の瞳は、じい、とその動きを追う。
誘いか。
それは、本能が察知させるものの。
それに乗るのもまた、一興、と。
蒼の瞳には、微かな──好奇の色彩が浮かび]
[短い咆哮]
[蒼狼は、雪を蹴り、高く、跳ぶ。
先に傷を受けた後ろ足を庇おうとしたのか、動きはやや、鈍い]
[感情の篭らない声。
外の音も聞こえないほど集中していたはずなのに。
それだけは何故か届いて]
…かく、ご…?
[反応する。とてもゆっくりと]
[イレーネには決して伝えない]
[それが薬を飲む覚悟だったことなど]
そう。
[低い声はどこか哀しげにも]
どうにも出来ないとわかって、覚悟したと。
彼は言っていました。
……っ、
そんなの、
言われなくたって、
[違う、本当は、死んでもいいと思っていた]
……生きるよ!
だから、
殺さないで、
殺させないで、
[視界が歪みかけるのを、堪えた]
[クレメンスに言われた言葉を口に出さずに反芻して]
そうですか。
[とだけ返した]
[まだ、他には知らせなくないのだろうと気付いたから]
[動いた蒼狼
相手の始動をある程度誘導して、動きを見ていれば回避もできる
だがそれだけでは駄目だ。攻撃する余裕を作らねばと。
跳躍する蒼狼を横飛びに避け、その首を狙うように…そこで一瞬顔を顰めた。
この動きは、アーベルをつれて逃げたときに、襲ってきた狼に取った行動と同じで…
ただ行動はとめれずに剣を振るう]
覚悟……。
終わらせる覚悟をしたというのですね、アーベルさんは。
[イレーネが思う覚悟と、自分が知った覚悟とは違う]
[だけど、彼が覚悟を決めた事は間違いはなかったからそう口にした]
[投げられる声は聞こえていた。
熱に浮かされた状態でも、はっきりと。
祈るような声も。
返せるならば、言葉を返したい、と思ったけれど。
今、出せるのは、蒼狼としてのコエだけ]
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