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ランプ屋 イレーネ に 1人が投票した
小説家 ブリジット に 8人が投票した
小説家 ブリジット は村人の手により処刑された……
次の日の朝、貴族 ミハエル が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、青年 アーベル、職人見習い ユリアン、シスター ナターリエ、傭兵 マテウス、神父 クレメンス、探偵 ハインリヒ、ランプ屋 イレーネの7名。
─森─
ちょ……? なん……で?
[コエが返らない、どころか。
そこにはいないはず、と聞かされたモノのコエが、聞こえて。
口をついたのは、小さな、呟き]
……どこ……に。
[声は、僅か、かすれたか]
[急所を狙った剣先もギリギリのところで避けられる
これでは拉致があかない。長期戦などやれば不利なのは明白だ
だが、先程までの動きからわかったことがある。
最初に切りかかったときは、浅く踏み込んだ。だからこそ軽傷で済んだといえる。そして急所を狙えばただ退くだけ…と。
狼だからかそもそもなのか。経験が、戦闘技術が違う
だからこそ、睨みつけながら隙を作るように、剣先をゆらりと揺らして誘い、乗ってきたブリジットの喉目掛けて剣を振るう。避けようとすれども、この距離ならば間に合うまい
耳を覆いたくなるような大声量の悲鳴があがった]
[緋色に世界にコエを投げても答えはなく。
掠めたのは、嫌な、予感]
まさか。
……それ……って?
[ふるり、小さく、首を振る。
認めたくない。
真っ先に浮かんだのは、それで]
[パラパラと、雪が落ちた。
煌々と光る月以外に見えるものはなく、聞こえるのはアーベルの声だけだった。
彼自身には、違ったのかもしれないけれど]
……どう、したの?
[座りこんだままに、アーベルを見上げる]
……あは。
ちょっと、これ。
あんまり、笑えねぇ……。
[これまでは、誰が生命を失っても。
強く感情が動く事はなかったのに。
……リディを殺めた時でさえ。
血に酔っていたのを差し引いても、平静だったのに。
なのに、何故か、今は。
揺らいで、揺れて]
[右肩を抱え込んだまま。
響いた悲鳴と、その後に聞こえた呟きに顔を上げる。
最初に見えたのは、鈍く光る長剣で]
ジッ……!
[直後、翻った銀色が金色を巻き込むのが、見えた]
誰も、って。
[酷く、不安定に思えた。
壊れてしまいそうに感じた。
揺らいでいたのは視界だろうか、身を起こしてアーベルへと手を伸ばす]
[不意に聞こえてきた悲鳴に顔を上げる]
二階?
まさか、また……?
[ふらりと立ち上がる]
[キッチンにいるクレメンスは気付いているだろうか?]
[「痛い」と呟くドゥンケル
本来ならば、追撃をかけるところだったが
頑強な体に目掛けてはなった一撃は、己の腕をも痺れさせる。
そのような状態で振るう剣は鈍くなってしまうのはわかっていて、迂闊に踏み込めず
その間に扉から飛び出し、窓を割って外に逃げていって]
ちっ!!逃げられたか…
[ミハエルを巻き込んだのまで視認できず、瞳の奥の朱金の光は収まり、その場に蹲る]
[窓の外、何かが落ちる音]
[だけどここからは何も見えず]
ここにいてもわからないわね。
[クレメンスに一言声を掛けてから二階へ]
[急ぐ必要は無くなったのだろう、と男は思う。そして、この事態が、アーベルを変えることがあるのか、と]
[*二人の青年を見つめる瞳は、今は揺らがなかった*]
誰も……いない。答えが、ない。
[伸ばされる手、それには気づかずに]
……猩、グリズ、ライン……誰も。
それに。
ブリスも。
消えた……。
[最後に、緋色の世界で見たのは。
自分を呼んだ。緋色の名前──ヴィント、ではなく。
それは間違いなく、いつもの少女で]
……死んだって……コト?
マテウス、さん。
大丈夫、ですか…?
[蹲ってしまった人の傍にまず寄った]
あの。今、外に誰、か。
[朱花の一部を巻き込んだ傷は深く。
白い袖は緋色を吸い切れずに雫を落としている。
けれどそれより気になったのは]
金色…まさか。
[扉の外へ。窓の外を確認しようと。
全身の感覚が麻痺したまま、歩く]
[紡がれる名前は半分もわからなかった。
けれど、最後のひとつは、自分もよく知っている少女の名で。
――間に合わなかった?]
アーベ、ル。
[何も言えなくて、
ただ、
手を掴んで、
彼の名を呼んだ。]
[二階へ上がると一つの部屋の前で喧騒が聞こえた]
[そこに歩み寄り、中を覗く]
[血を流すイレーネと、蹲るマテウス]
…!
どうなさったんですか?
治療を…ブリジットさんかミハエルさんは?
[医療に長けた二人の名を呼ぶ。視線で探して]
[名を呼んで、ブリジットが人ではない事を思い出す]
…ああ…怪我じゃねえから安心しろ
[怪我でもなければ。剣を振るったことによる疲労でもない。
ただ凶眼を使用した後は、どうしても負担が大きくて、本当ならこのまま意識を落としたい。
だが、外に誰か。という言葉に、それをするわけにもいかずに立ち上がって]
イレーネのほうが大怪我だろうが
[剣を鞘に収め床に落ちたコインを拾う]
シスター…ッ。
[呼ばれた名に、声が詰まる。
そう、金の髪。あれは多分ミハエルが]
外、に。
ミハエルさん、落と…!
[落とされたというのは何か違うと。
だから言い直した]
落ちてしまった、かも。
[手を取られ、我に返る。
その瞬間に、感じる、痛み。
震えは、確りと伝わる、か]
……探して、くる。
[ぽつり、零れる、呟き]
……俺が、見つけなきゃ。
でないと。
[自衛団に、見つけさせたくはなかった。
それを示すのが、解放に必須といわれた事など。
当の昔に抜け落ちて]
……俺しか、いないん、だから。
[剣を鞘に収めたところで、ふらっとするが、なんとか倒れずに踏みとどまって]
ちょうどいい時に来たな。シスター
ブリジットは人狼だった。で、今ここにはいねえよ。詳しくなにがあったかは後で言うが、イレーネの止血頼む
[そして、イレーネと同じように窓の外を見に行こうと歩き]
[窓へと歩み寄る二人を見守る]
何が……
[それ以上は言葉にできない]
[それくらいに妙に張り詰めた空気]
また、血が流れたのですか…?
[目を閉じる]
[願いは届かない]
[ブリジットが人狼で、彼女が死んだと言うのなら。
それを示せば、終わりのはずだった。
自警団の拘束も解ける。解放される。
だから、彼に探させずに、……ここで、引き止めるべきだ]
[でも、]
……、わかった。
[ハインリヒはどんな表情で、見ていただろう。
それに構うことはなかった]
でも、忘れないで。
苦しくても、辛くても、逆らって、
――生きるんだって。
[死んだものは、もう還らないのだから。
そう付け加えた言葉は、小さかった]
[自分がついていって、何の役に立つだろう。この身体で、この眼で。
だから、手を]
これは。
私のせい、だから。
[マテウスに首を振る。
どうしても確認せずにはいられなかった]
私が、遅かったせいで。
また。
[窓の外を見下ろした。
ピクリとも動かない影。上からではそれしか見えなかった。
けれど]
――ッ!
[麻痺している感覚の中ですら、鋭く衝撃が走った。
堪えきれずに、崩れる]
ミハエルさんが?
[それを確認する間もなくマテウスから告げられた言葉]
ブリジットさん、なのですか?
[確認は、人狼であることではなく、これをなしたのがそうであるという事]
[止血を、といわれ急ぎイレーネの元に]
この傷…
[それは傷と呼ぶには大きすぎて]
[包帯を取りいく時間も惜しく]
[シーツを引き裂いて強く縛る]
専門家ではないから、我慢してくださいね?
[それでも、少しは出血を止める事はできるだろうか]
[離される、手。
蒼の瞳は静かに場にいる二人を振り返る]
ん……。
わかってる。
決めた、コト、だから。
[忘れないで、と言われた言葉に、一つ、頷いて]
……狼連中には、手出しさせないようにする、けど。
制御してた猩がいない、から。
長くは抑えられんかも知れない。
……だから、早く、戻れ。
[静かに言い置いて、駆け出す。
木々の向こうから、微かに感じる、血の匂いへ向けて]
なに自分のせいだとかいってんだか
遅かったも速かったもねえんだよ
[イレーネの言葉に気遣う余裕もなくそう言って、ナターリエが駆け寄ったのだけ見ると、少しほっとした]
…ああ。そういうことになるな、シスター
理由だとか、そういうことは聞くなよ。俺にもわからんからな。
[剣を軽く抜き、己の腕を少し切る
滴り落ちる血。だが痛みで薄れていた意識が少しましになって
イレーネを支えるナターリエを押しのけて、イレーネを抱え上げ]
下に行くぞ。ここから見てるだけじゃ何もできねえし、イレーネの傷もここじゃたいしたことできん
[そういってずかずかと、階段を下る]
[駆ける間に、その姿は風となる。
蒼の風の狼へと。
ヴィント──『風』の名は。
遠い昔の第一の覚醒の際に、瞬間触れた、緋色の世界で。
父が自分を呼んだコトバだったかと。
今更のように、思い出しながら]
[傷口を縛られたことで、落ちる雫は少なくなってゆく]
ありが、とう、ございます。
[崩れかけた所もナターリエに支えられた。
もう何度目になってしまうだろう]
…は、い。
あの。下、恐らく、は。
あのまま、じゃ。
[マテウスの言葉にも切れ切れに答える。
遠く聞こえるのは狼の声なのだろうか。
正確に伝えられなくても、彼ならわかってくれるだろうか]
一人で背負い込んではダメよ、イレーネさん。
少し落ち着いて休んだ方がいいわ…
[今はそれは無理な話だとも思ったけれど]
何も聞きません、今は。
理由なんて、きっと本人にしかわからないと思いますもの。
[そして、本人にもわからないのではないか、と]
[木々の間、どれほど駆けたか。
やがて、森の中の異変が目に留まる。
雪の上、何かが引きずられたような、跡。
そこにつく、あかいあと]
……こっち、か?
[呟いて、その先へ。
血の匂いは、更に強くなり、そして]
は、ぁ。
[大きく、息を吐き出す。
白く染まった。
手袋を嵌め、上着を羽織り直す]
ん、……行きます、か。
[一歩ずつ、けれど、なるべく速くと急いで、歩みだす。
手を貸すかと聞かれたけれど、断った]
自分の足で歩いていかないと、いけないんだし。
それに狼の警戒、しておいて下さい。念の、ため。
[乱れる髪を掻きあげ、前をしっかりと合わせる。
寒いのは、気温の低さだけじゃなかった]
……あ。
[歩みが、止まる。
森の中の、小さな広場に横たわる、銀の身体]
…………。
[何と呼べばいいのか、一瞬、わからなかった。
余りにもたくさんの名前があって、皆違って。
畏怖を抱いたもの、苛立ちを覚えされられたもの、懐いてじゃれついてきたもの。
それら全ての源となるものがいる、とも聞いたけれど、それは知らなかったから]
……ブリス。
[一番呼び慣れた名を、そう、と紡いで。そっと、その近くによる]
[小さく頷いたイレーネを見て軽く頷き返し]
聞かないでくれるのは助かるな。今そんなに余裕ねえんだよ
[といって、イレーネを抱え、ナターリエを伴い、一階。広間へと下ろし]
見てくる。シスター、イレーネ任すぞ
[端的に告げて、引き止められなければ外へと]
[歩みながら、考える。
誰が殺したのか。
集会場にいた人間に違いない。
アーベルのことを、どう捉えるだろう。
残りたい気持ちもあったけれど、そちらの方が心配で、何より、自分の身体がそう持たないのなんて、よくわかっていた]
本当に、……嫌になる、な。
[月のひかりは絶え間なく降り注いでいるのに、酷く遠い]
[生命が既に絶えているのはわかっていた。
答えがない時点で、それははっきりしていたから。
雪の上の、銀の身体。
それは、既に冷たくて]
……あは。
なんか……寂しい、な。
[小さな呟きが、零れる]
でも、さ。
俺は、お前がいて……お前らがいて、よかったんだ。
……色々、安心してたんだ。
だから……さ。
[広間へと降りて、イレーネを楽な状態で下ろすのを見届けてから、マテウスへと目を向ける]
はい、イレーネさんはお預かりします。
お気をつけて。
[何があるかわからないから、と付け加えて、マテウスを見送る]
[呟きは、緋色の世界の内に零れ。
そして、蒼狼は、そのまま。
その場で目を閉じ、体を丸める]
……さて……これから、先。
俺、どうしますかね、と……。
[死ぬ気はない、けれど。
他者を牙にかけたいと思いもしない、けれど。
システムに抗うために、ここから離れるためには。
どうすればいいのかと。
そんな事を考えつつ、その場でまどろむ。
戻るべきかどうかを決めかねているのもあるが、今は、唯一の同胞と*共にありたくて*]
[森を抜ける。
狼たちは、襲って来なかった。
白い雪の上に、点々と痕が残されている。
視界に焼きついて残る、赤]
……ブリジットの?
[それだけでは、ないように見えた]
[ナターリエに、頼んだ。と言い残し、外へと向かい、先程外から覗きみていたところに向かう。
雪の上には窓ガラスと、血が飛び散っていて、そしてその中央にミハエルが横たわっている]
…悪い…あそこで仕留められてたら……いや、もしもの話なんてしても仕方ないか
[悲鳴を上げる間もない、本当に一瞬だったのだろう
ミハエルの体は潰され、爪によってかところどころ抉れていて、その亡骸をそっと手で触れる]
…弔いは…明日まで我慢してくれ
[ミハエルを抱えあげようとして、また意識が霞むために、懐の短刀を腕に浅く突き立てた
その痛みに顔を顰めるが、意識はこれでもう少しもつだろう。
抱え挙げて入り口の近くまで運ぼうとしたところに、人影に気づき、そちらを見て]
ユリアンに、ハインリヒか
何していたのか知らんが、おかえり。で、今悠長に挨拶できる状態じゃないんで話があるなら集会所でな
[そういいおいて、入り口近くまでミハエルを運ぶ]
きを、つけて。
[ナターリエと同じように見送る。
というよりもそれしかできなくなっていた]
シスター。
…ありが、とう。
[衝撃の影響が薄れてくれば、意識を繋ぎ止めるだけでも精一杯だった。
失血、風邪、食事が取れていなかったこと。
心に引き摺られて身体を考えなかった代償。
そしてその心もまた、過度の負担を覚えていたから]
どうすれ、ば…。
[それでも必死に考える。
この後はどうすればいいのかと。
最後まで諦めないと言っていた人は、どうするのかと]
……ミハエルさん。
[ただいま、という言葉は紡げなかった。
間に合わなかったのは、ひとつだけじゃない。
金の煌めきを持った青年は、もう、口を開くことはない]
話、
わかりました。
[頷きを返して、ゆっくりと扉を開いた]
[そして倉庫に一旦行って、また戻り、ミハエルの遺体を布に包み]
ふぅ…さすがに…きつい…くっ…
[今更になって、ドゥンケルによって付けられた肩の傷口が傷みだす]
[イレーネが微かに呟く。
出血から見れば意識を保つのがやっとだというのに]
今は、ゆっくりと休む事が大事だわ。
そうでなければ、何も考える事も出来ないもの。
[微笑む]
[こんな時でも笑える自分が少し嫌になる]
…ふん…ここで倒れるわけには…いかんな
[そういって広間へと戻り
広間の面々に、ミハエルが亡くなったこと。
ブリジットが人狼だったこと、など、起きた出来事のみ端的に告げ
己の治療、する人間がいなければイレーネの傷口も治療し、*自室に引き上げるだろう*]
[ナターリエに小さくコクリと頷く。
見えた微笑に、どうにか小さく唇を笑みの形にして返す。
そして響いた扉の開く音にそちらを僅かに向いて]
あきら、めな…。
[だが一度認めてしまうと、崩れるのもまた早く。
誰が入ってきたのかも確認できないまま、音と光が一度*絶えた*]
[戻ってきたマテウスからミハエルの死を告げられる]
……あぁ……。
[予想できたことではあったけれど、それでもやはりその事実は重い]
[その場に座り込み、目を閉じ、祈る]
[もう、その祈りに意味があるのかさえ*解らなかったけれど*]
[惨憺たる有様だった。
ブリジットとミハエルは死に、マテウスとイレーネは怪我を負っている。
ただ、黙って、マテウスの報告を聞いた。
皆の疲労もある。
アーベルの事は、今すぐには、話せなかった]
[以前より更にぼやけた視界では治療の手伝いもロクに出来ず、その間に最低限の食事だけを取り、一度、階上へと向かった]
[リューディアの部屋に入ると、鴉は忠実に、そこにいた]
……ありがと、ザフィーア。
いてくれたんだ。
[クァ、][鳴き声があがり、片翼がバサりと羽ばたかれた]
[綺麗にさせられたリューディアは、本当に、眠っているだけにも見えた。
枕元には、赤い染みの残るバンダナ。かけられた毛布の下には欠けた肉体があり、二度と目覚めないと知っているのに]
なんでだろう、ね。
[ベッドのすぐ傍に膝を突いて、シーツに顔を埋める]
昔みたいな時間を、過ごしたかったんだ。
ただ、それだけだったのに。
[手を握る。やはり、冷たい。
寒さの下に晒されたゆえではなく、生命を失った冷たさ]
こんなふうにしてたら、笑われるかな。
[苦笑した。
今、浮かべられる笑みは、それだけだった]
ごめんね、リュー。
もう少しだけ、待ってて。
[そんな素振りは見せないけれど、疲労しているであろうザフィーアに手招きをする。肩に乗った鴉の黒羽を撫ぜる。
自室で荷物を取ってから、階下へと、再び下りた]
[イレーネの治療を終えたナターリエに話を聞いて、看病を申し出る。
断られても、自分が出来る事は数少ないからと、些か強引に頼みこんだ]
[眠るべきと理解はしていたけれど、なかなか眠れそうにはなかったから、その傍らで、袋を広げた。
ザフィーアは羽根を畳み、眼を閉じている。
優しくも寂しい月のひかりは、世界を少しだけ*明るく照らしてくれた*]
セロリですか
[シスターの言葉ににっこりと笑う]
[当然のごとく、使う品にそれが入ったことは言うまでもない]
覚えておきましょう。
[包丁を動かす]
[どさりと]
[音が聞こえて――口端が持ち上がった]
ええ。
お気を付けてください。
[彼女が二階に向かう]
[その時には笑みが消えて]
[手を止め、外を見る]
ミハエル君、死んでしまいましたか。
ご冥福をお祈りしますよ
[それから再び包丁を動かす]
[千切りにされたセロリとにんじん]
[スープにそれをいれ、塩コショウで味を調えた]
[食べない人はいるかもしれないが]
[それだけではなんだったし、手早く取れる食事を作る]
[じゃがいもを茹で、それをつぶしてポテトサラダ]
[つぶしていない分を細くおろして、たまねぎと一緒に硬くつぶす]
[チーズを一緒にしてそれを皿の上においておいた]
[誰でも勝手に食べるだろうと]
[広間に戻るとちょうどマテウスが戻ってきたときだった]
[話を聞いて、立ち上がる]
ああ、いえ。
食事を用意したので、食べて下さいね。
俺は…いえ、俺も部屋に戻りますから
[マテウスが自室に引き上げた後、そう言って広間を出た]
[外は寒い]
[そして自分の部屋に、入った]
―二階・部屋―
さて、シスターはどこまで本当だと思っているでしょうねぇ
[小さく笑った]
[かばんを開ける]
…いやぁ。まさかこの中に
[一つ、大き目の宝石を取る]
この薬が入っているとは、誰もしらないでしょうけれど。
さて
アーベル君に話さないといけませんねぇ。
俺は死ぬつもりもありませんし。
[*闇は深い*]
―薪小屋―
[朝を迎え、目を覚ました後、そこにいた]
[――ガツン!]
[ぱらぱらと砕ける宝石]
[その中に小さな丸薬]
[仮死状態を作り出す薬――の筈だ]
あぁ、ようやく割れましたねぇ。
もし奴らでしたら嫌ですし、アーベル君には実験
…いえ、仮死状態になってもらえばいいですよねぇ
[試していないらしい]
[人狼の死を確認しなければ、場が崩れたとは思われない]
[ならば仮死状態にすればもしかしたら大丈夫だろうかと思っただけだった]
[決してそれを、力を持つ者には知らせないという条件の元で]
まぁ俺が試すより安全でしょう
人狼ですし、治癒能力もあるでしょうし…
[丸薬を取り上げて]
さて、有無を言わせず飲ませちゃいましょうかねぇ
[*物騒な事を朗らかに呟いた*]
ん、しょ……と。
[イレーネの額に乗せられたタオルを取り替える。
大分、温くなっていた]
……包帯も、替えないとね。
[自分の右腕へと、視線を落とす。
手当てをしてくれた薬師の少女は、もういない]
[立ち上がり、キッチンへと足を向けた]
……あは。
ばっかみて……。
[小さな呟きが、ぽつりと落ちた]
『自分』が『ひとり』なコトなんて。
……ほんとは、あの時から、ずっと、わかってたのに。
[往生際悪すぎ、と。
自嘲するよに吐き捨てて]
……こんなとこ、か。
[呟いて、見つめるのは小さな雪の山。
その上に、目印になるように小さな花を添えておく。
白の中には、銀の狼が隠されていた]
……少しだけ、我慢しろよ?
ケリがついたら、ちゃんと……兄貴んとこ、連れてってやるからな。
[お前は『ひとり』じゃないから、と呟いて。
一つ、息を吐く]
さて、と……。
いつまでもここにいても、ラチ開きゃしねぇし……。
どうにかして、システ……。
[システムの呪縛を打ち破る。
言葉に落とすより早く襲う、痛み]
……早いとこ、何とかしねぇとな……。
血が、必要に、なる前に。
とはいえ、こんなややこしいコト、知ってそうなの……。
いや……ゼイタク言えねぇ……。
[宛もなく暴れまわるよりはきっとマシだと繰り返し念じつつ。
ともあれ、ゆっくりと、音もなく、*集会場へと歩き出した*]
[仄かに甘い香りを含んで、薄く湯気が漂う。
見つめていた手のひらから視線を上げ、ふるりと首を振った]
[カップを手に広間に戻り、暖炉の前に陣取ると、両の手で支えてゆっくりと傾けた。
あたたかさとやわらかい味が、気分を落ち着けてくれる]
[静かだった]
―広間―
[偶に意識が浮かびかけても認識まですることはできず。
ただ誰かが傷を治療してくれたこと、そして何度か額に当てられた布が替えられたことをかろうじて感じただけ。
痛みと熱と。
傷によるものか、無理が祟ったものか。
それとも一部が失われてもまだ、色を失わずにいる朱花がもたらすものか]
――ん。
[再びうすらと目を開いた時には。
どれだけの時間が経ったのかも分からなくなっていた]
―広間―
[「探してくる」と言ったアーベルを、男は止めなかった。同情したからではなく、彼が行きたいと本気で思っているのなら、結局自分に止める力は無いだろうと知っていたからだ]
[ユリアンが止めたのであれば、違ったかもしれない。だが、自分では、彼にとって「障害」にしかなれない。そして障害を排除しようとして、彼の中の人狼としての衝動が目覚めてしまったら、そこでおしまいだったろうから]
[結局の所、男は余所者でしかない]
―外―
しかしあんな規格外のもんとやりあって、よく生き残ったもんだ
[昨夜自室に寝にいき、倒れるように寝た...は今更ながら思う
人狼を追い払ったとはいえ...は全く誇らしいとは思わない。
運が…コインの結果がよかったということだろう]
だからといって、傭兵辞めて墓堀になる気もねえんだけどな
[アマンダ、ノーラ、エーリッヒの墓の近くに作り上げた穴を二つ見ながら呟く]
[集会所に戻り、マテウスに事の次第を聞いても、新たな感情は産まれなかった。鉛の塊を飲み込んだかのような痛みは鈍く、熱く、心の奥に燻ってはいたが、現実の傷を負った者達とは比べるべくもなかっただろう]
[弱った身体でイレーネの看病を申し出たユリアンを、手伝う事もなく、暖炉からは離れた窓辺に座り、眠れぬ夜を明かした]
[黒鳥の鳴き声に瞬く。
更に届いた声に身を起こそうとして]
ッ。
[癖で右手を使おうとした。
痛みに動きが止まる]
…うん、ちょっと、痛い。
[呼吸を整えながら、とりあえず答える]
─集会場・外─
……ってと。
[集会場から少し離れた場所で、小さく呟く]
とりあえず、どーしたもんか……。
[何も言わずに姿を消すのは簡単で。
しかし、それでは、ここは解放されず。
知らぬ事と見捨てて行くのは容易くて。
……でも、痛みを伴うものだから]
あー……めんどー……。
掘っておけば、後は誰かがやるだろ。
ミハエルのほうは親が引き取りにくるかもしんねえし…さて、どうしたもんか
最低限の仕事はしたとはいえ、出れねえとどうしようもねえからな。
[スコップを地に突き立て、そこにもたれかかるようにする]
そ、っか。
ちゃんとした手当て、受けないと……
でも、どうしたもんかな。
[「人狼は死んだ」。
そう証明する手段――「彼女」はここにいない。
それを引き渡す気も、なかった。
そして、まだ人狼が生きている以上、システムは動いているのではないか]
とりあえず、何か、飲む?
って、言っても
[ゆっくり瞬く]
水か、ホットミルクくらいしか用意出来ないけど。
……包帯の取り換えも、頼まないとね。
―薪小屋―
[がつと音がした]
[思いっきりぶつかった音だった]
……たぁ
[ちらかった屑宝石を片付けた]
[のだがまた少し散らかった]
―広間―
[ミハエルのために(もしくは自分のために)祈りを捧げた後、
眠りに落ちたイレーネの傷の手当を]
本当は、一刻も早くお医者様に診ていただくべきなのですけど。
[その傷は、怪我、などと言う生易しいものではなかったから]
[しかし、相変わらずここを包囲しているであろう自衛団を思い出し]
……あの方々がそれを許すとは思えませんわね。
[そう言って溜息をついた]
…うん、でも。
[薬師だった少女はもういない。
医療の知識を持っていた青年ももういない。
それはもう確認するまでもないことで]
お水、欲しいな。
喉渇いちゃった。
[できるだけ普段通りに答えて。
左手に力を入れて上半身を起こしてゆく。
それだけでもかなりの時間が掛かってしまった]
[一頻り、笑うコエを風に散らした後。
その表情は引き締まる]
……あいつらを納得させられるのは、人狼の死体だけ。
だからって、俺はそのために死ぬ気はない。
[他者のために死ぬのは、彼の最も嫌うところで]
……とはいえ、自衛団連中軒並み薙ぎ払っちまう訳にもなあ……。
[そこまでの力は自分にはなく、何より、その結果が容易に知れるから]
どっかに抜け道、ねぇもんか。
……やっぱ、持ちかけてみるかね……。
[今、ここにいる中で、最も得体の知れぬ人物。
それ故に、何かを知っていそうな人物。
どこにいるかと。
感覚を研ぎ澄まし、気配を追う]
[イレーネの看病を、と言うユリアンに彼女を預けて]
[本当は彼にも休んでいて欲しかったけれど、
「何かをせずにはいられない」と言う様子に押し切られるように]
[クレメンスが用意した食事を少しだけ口にする。
食欲は無かったから、少しだけを]
[彼に対する疑問はあったけれど、彼が何かをするとも思えずに]
……セロリですわね。
[スープの中のそれを見つけ、一瞬黙った後で小さく笑う]
[嫌がらせではなく、彼なりの冗句と受け取って]
どこまでが本気で、どこからが嘘なのでしょうね?
[それを聞いたものはいないだろうけれど]
まぁもういいでしょう。
これだけ片付ければ満足ですよね。ええ満足ですとも
[自分にとってはのことを呟いて]
ああしかし。
どうしてドジなの抜けなくなっちゃってるんでしょうねぇ…。
困ったものです
りょーかい。
[軽く答えて、空の器を手に立ち上がる。
キッチンに入ると、置いたカップの代わりに、硝子の反射する光を辿ってグラスを手に取り、蛇口を捻った。一つ一つの動作に、以前より時間がかかるのが煩わしい。
溢れ出して手を濡らす冷たさが量の多さを伝え、余分を捨てて水を止め、広間に戻る]
どうぞ、……っと。
……花、何か、変わった?
[その後も、そこにいる人々が気になって広間を離れる気にはなれずに]
[彼らを見守りながら時を過ごす]
……システムを、崩す、ですか…。
[その言葉は何の苦痛ももたらさない。
その枷を負わないからこそ、何か出来ることはないだろうか、と]
[そんな事を考えながら]
……そこ、か。
直進すると、厄介、かな?
[人のいる場所、距離。
記憶の中の建屋の間取りと、気配の配置を大体重ねて]
……裏側まわって……かな。
[小さく呟き、移動をし始める。
低い姿勢を取り、広間側を避けるよに。
音もなく、薪小屋の方へと]
―広間―
よぅ。あれから何か変わったことはあったか?
イレーネの容態はどうだ?
[広間に入るってすぐに、そこにいる面々へ声をかける]
[広間の片隅]
[動く気配にそちらを見て、安堵の笑みが自然と浮かんだ]
…イレーネさん、気が付いたのね?
[驚かさないようにそっと、小さく声を掛けて]
[だけど、身の回りの事はユリアンに任せて]
…しかし
どう言って飲ませましょうねぇ
[手のひらのほんとに小粒のそれを見る]
[毒々しい赤色]
[ガーネットの中にあったから変色したんですかねぇと呟いた]
─薪小屋・前─
[ぐるりと裏を回って近づいた薪小屋。
そういや、ここに割れた皿を片付けたのは何日前だったかな、などと。
そんな事を、ぼんやりと考えつつ]
……なーに、こそこそぼそぼそやってんの?
[それは自分も、な気はしつつ、一応棚上げにして、声をかける]
[窓のすぐ傍で外を眺めていた男には、身を低くして通り過ぎる青年の姿は見えたかもしれない。いや、もっと前からその姿を視界に捉えてはいたか]
イレーネが目を覚ました。それくらいだな。
[けれど、マテウスの問いに答える声は常と変わりなかった]
[外から戻ってきたマテウスに気付き]
先ほど目を覚ましたようですよ。
とりあえず一安心と言うところでしょうか。
[イレーネの容態を問う言葉にそう返して]
でも、早くお医者様に診ていただきませんと。
ここでの治療には限界がありますから。
シスター。
[どうにか身を起こせば、ナターリエの姿。
小さく頷いて、大丈夫だと伝え]
ありがとう。
[戻ってきたユリアンからグラスを受け取る。
冷たい雫は外にも付いていて、指を濡らした]
…どう、かな。
[受け取ったグラスから一口だけ飲んで。
右肩へと視線を落とす。
その1/4近くを欠いても、未だ鮮やかな朱色]
もう、探さな…ッ。
[口にした途端に走る鋭い痛み。
グラスが揺れ、スカートへと水が零れた]
[マテウスの声、それに答えるナターリエとハインリヒの声。
痛みをやり過ごしてから、ゆっくりと視線を巡らせて]
ご心配、おかけしました。
[二人の男性へと小さく頭を下げた。
本当はまだ過去形にできるものでもなかったけれど]
あは。
[返事が返り、つい、笑いが零れる。
それは、今までは緋色の世界でのみ響いていた。
どこか、幼げな、コエ]
だって、見つかるとヤバそうだし?
[言いつつ、す、と薪小屋の中へと入り込み]
ええと、お久しぶり?
[軽く首を傾げつつ、こんな言葉を投げかける]
おやおや、別に危険じゃないと思いますけどね?
まあ君がそう思うならそれで良いでしょう。
そうですねぇ、久しぶりですか。
お元気そうで何よりですよ。
色々大変だとは思いますけど?
[にこと笑った]
[痛みに顔を歪めるイレーネの姿に、僅か、目を細める。その痛みが去らない理由を男は良く知っていた。人狼は滅びず、人も死に絶えず、システムは未だ動き続けている]
[パシャり、][小さく水音が立つ]
わ、
……イレーネ、大丈夫?
[大丈夫とは思えなかったけれど、口をついて出た。
それはつまり――終わっていないと告げているのか]
厄介なの……。
そうか。ま、一安心ではあるな
[ハインリヒとナターリエの言葉を聞いて
応急措置は自分にもできる…が、ブリジットのようにとはいかない。
だが、システム云々は知らないが、精神的に苛まれているこの現状も、イレーネの体には毒であろう。と、視線をイレーネに移すと、その目を合って]
気にするな。勝手にやっただけだしな
…そういや、アーベルの姿を昨日から見ていないが、誰か知らんか?
イレーネさん、大丈夫?
[それが傷の痛みなのか別の要因なのかはわからない]
[だけどイレーネが苦しんでいるのは確かで]
……止めるには、見つけるしかないのでしょうね。
[選択肢は狭まっていて、だから余計に考えたくはなかった]
案外、ヤバイのは俺自身かも?
[声は楽しげだが、それなりに切実で。
未だ、蒼花のあまさを忘れられぬ身には。
傷ついた朱花は、誘われるモノでもあり]
元気は元気、だな。
痛くて仕方ねーけど。
大変……ホント、大変だよ。
このままいくとまた、抑えが効かなくなるからな……。
[リディ喰った時みたいに、と。
呟きはごく小さく]
そうですね。
それがシステムですから。
[対するのは、特別なんとも思っていないような声]
ユリアン君を食べたりしたくないんでしょう?
本当は、リディ君も食べたくなかった?
[ナターリエの、見つけるしかない。という言葉に、思わず、腰にさす剣を見る
腕をすぐに変えれない以上武器を変えるしかない。昨日から頼んではいたが、まだ己の情報やからは届いておらず]
シスターもか
昨日部屋を覗いたが、少し散乱しててな。誰かと争った様子もないから、ただこの状況に苛立っただけかと思ったが
[そこまでいって顔を顰める。顔を顰める理由は心配と疑念]
…ホントに。
[濡れてしまったスカートに溜息を吐く。
ユリアンに肯定を返そうとするだけで走る痛み]
…これを、消したら。
崩れるのかしら。
[当然増す痛みに俯きながら小さく呟いた。
ずっと欲しかった朱花。
けれど今となっては邪魔でしかないそれ。
我侭だとは思いつつも、消えることを望んでしまう。
大きく息を吐いて顔を上げた。
アーベルの事は分からず、小さく首を横に振る]
[マテウスの問い。
微かに震える身。
右手で左腕を押さえて、
息を吐き出した]
僕は、
……知ってる。
[それは、二つの意味を持っていた。
どちらの意味に聞こえたかは、わからないが]
外…か
[立ち上がっていうハインリヒ。続いてユリアンが微かに身を震わせながら、知っているという。この二人はそういえば…]
……昨日、何があった?
……ああ。
[返す言葉は、短く]
今更、こんなコト言っても、意味ねぇが。
あの二人だけは、俺が喰うのも、猩に喰われるのも。
嫌だった。
[いつかの事、緋色の世界でのやり取りを思い出しつつ呟いて]
…大丈夫、です。
[ナターリエにもう一度頷く。
調子も悪い。痛みも消えない。それは隠し様もなかったけれど。
それでも、同じ痛みを持つ人がいることを知っていたから。
その人もきっと。必死に抗っているから]
…希望を。
願っちゃ、いけない、のかな。
[立ち上がったハインリヒへと視線を向ける]
ならば手を貸しましょうか?
俺を助けてくれたお礼も兼ねて。
[ついでに兼ねている物は何なのか]
[まだ手の内は見せず]
俺としても喜べることですからねぇ。
ここから解放されるのは。
……そうね、こんなシステムは崩してしまうべきだわ。
こんな、痛みと苦しみと…悲しみしか生まない物は。
[イレーネには口にできないであろう言葉]
[それを口にしても何も起こらない]
……あは。
内容の提示ナシで、最初から二択かよ。
[突きつけられた言葉に、思わず零れる、コエ]
……とはいえ、俺に、選択の余地はねぇんだよな。
[自身の力だけでは、どうにもできぬと、知っているからこそ。
この男の許を訪れたのだから]
……答えは、Yes。これで、満足?
[どこか幼げな仕種で首を傾げつつ。答えと問いを、投げかけて]
[交わされる会話を沈黙のうちに聞く。
勿論、全てを正確に分かっているわけではない。
ただシステムがどういうものなのかを、過去に一度聞いていることと、先日の会話から分かることがあるだけ。
ただ、もう一人。
沈黙している人物が気になった]
だってねぇ。
断られるとは思ってませんし
[くすと笑って]
ま、といっても俺もたいしたことを知ってるわけじゃないんでねぇ。
ちょっくら大芝居を打つくらいしか考え付かないわけなんですよ。
ってことでいっぺん死んでみましょう?
僕も、詳しくは知らない。
ただ、システムのせいで……
みんな、それに縛られているのだって。
それが、なければ――
[声が揺らぎかけて、一度、口を閉ざす。
視線を落とした]
それを崩せれば、
こんなことは、
もう、起こらないはずなんだ。
[確かでは、なかった]
……断らせるつもりなかった、の間違いじゃ?
[思わず突っ込みつつ。
続いた言葉に一つ、瞬いて]
はあ!?
[……素で、声が上がった]
[周囲の様子を見て、どうやら知らないのは自分だけのようだと察する
因子とか。教会とかは聞いていたが、詳しいことまでは知らない
ただ…あの時はそれどころではなかったから無視したが、イレーネはブリジットに何か言っていなかっただろうか。
ギュンターのまともなようで、まともじゃない様子は…]
ま、何のことかはしらねえが、あいつもいっていた血族とか、スティグマだとかいうのと関連してるってとこか。
そういや、ギュンターも、なんか俺が住んでた大陸には因子を持った奴は渡っていない。とかいってやがったし
[だからこそ雇われたわけであるが]
いやぁ。思ったとおりの反応、ありがとうございます
[アーベルを見てにこにこと笑う]
まあつまり、システムが崩れたと認識させてしまえばいいわけですよ。
本当に死ねって言ってるわけじゃないですよ?
イレーネ君に苦しい思いをさせたくないでしょう?
あぁ。
あとは、彼ですかねぇ。
縛られた対抗する力の持ち主はどうもまだわかりにくい。俺がそうはできてないからなんですけどね。
まあつまり。
その人たちの前で死んでみせればいいわけです
……んなもんで、喜ぶなよ。
[何となく疲れた気分になったのは、一瞬のこと]
……そりゃあ、まあ……ね。
[イレーネの名に、小さく呟く。
雪の降る前に交わした言葉。
その時の様子をふと、思い出す]
……つまり、俺……人狼にとって。
障害となるものの前で、死に真似しろ、と。
[猩だったら、絶対できんな、ソレ、と。
思わず呟いた]
……で、死に真似と覚悟にどんな関係があるかはしらねぇが……。
実はね、クレメンスさんに聞いたんです。
時と場所と人、それが揃えば「システム」は動く。
だけど、どれかが欠ければそれは止まる。
つまりは、人狼が居なくなれば、と言うことらしいのですけどね。
ここから離れることが出来れば、止まるかも知れない、と。
人狼は教会が、闇の眷属と契約を交わして作り上げた「目に見える脅威」
能力者も同じように作られた「脅威に対抗する存在」
すべては、教会の力を広め喧伝するための自作自演の茶番。
[ふいに、淡々と、男は言葉を連ねる]
縛られて…か
[ユリアンの言葉を聞いて思い浮かべるのは
エーリッヒのあの行動。
イレーネやリディの様子がおかしかったところ…そしてブリジット]
考えることは俺の仕事じゃねえんだが、崩すねぇ…
ハインリヒ、さん?
[不意に語るその声に耳を傾け]
あぁ、クレメンスさんも仰っていました。
これを作ったのは教会の…それも上の方だとか。
そのシステムに組み込まれた者は、自分の意思に関わらず、与えられた役目を果たさなければ地獄の苦痛を感じ、役目の通りに動けば無上の快楽を得る。
血の中に潜んだ呪縛から逃れる術はない。
クレメンスって…あいつなんでそんな…まあいい。
[そんなことを知ったところで特に益はないと判断して、ナターリエが説明する残りの言葉を咀嚼したところに、重ねるように話されるハインリヒの話]
神のご加護なんて、犬にでも食わせるような傭兵には程遠い話だが
そんな茶番に付き合わされてたのかよ…ふんっ。いい趣味してるぜ
[それによってあいつらはみな…]
疲れてきた、っていうか、
……もう、嫌だ。
[ポツりと、言葉が零れた]
だから、崩したい。
崩さなくちゃ、いけない。
……それを、望んでいる。
[ハインリヒの言葉に微かに笑って頷く]
システムに関わらない者には理解できない事ですもの。
巻き込まれてこのまま、は嫌ですわね。
[半分も飲まなかったグラスを置く。
動く左手で、動かぬ右腕を、未だ色失わぬ朱花を押さえる]
…何か、手段が。
あるのならば。
[真剣な表情でハインリヒを見つめる。
一つ息を吸う]
私も、崩し、たい。
システ、ム、そのもの、を…!
[詰まる息。それでも最後までどうにか言い切った]
人狼を殺すか、逆に殺されつくすか。
どちらかをするまで続く…ま、つまりは今、村に行けねえのと似たようなものか
[軽く肩を竦め]
……色と効能は関係ないんじゃね?
[呆れたように言いつつ、それでも。
躊躇う事無く、それを飲みくだして]
……ぅぇ。
[思わず、声が上がった]
…殺す、のではなく、何らかの形でここを離れることが出来ればそれでも構わない、と言っていました。
難しいことなのでしょうけど。
効能試してないって、なんだこら!
[目の前で手を振られたなら、き、と顔を上げ、早口に言い放つ]
ってか、俺は実験台……か……。
[言葉が途切れ。
身体が震える。
身体が、やけに、熱かった]
反対2票、てとこかな?
イレーネとマテウスはどうだ?
システムの条件を満たして解放されるのには反対か?それとも…
[多数決を取るかのように、男は問う]
あ。良かった。
酷すぎることにはなってないみたいですね
[しゃべれるのなら安心だと、立ち上がる]
ええ。まあ
だから言ったじゃないですか。
覚悟はあるかって
ぜんっ、ぜん……よく、ねぇ、よ。
なんか、どっかの、タガが。
外れちまった……みた……い?
[最後の部分は、何故か、疑問系で]
あはっ……あはははっ……。
[やがて、笑いコエが、響き始める]
なんつか、そのっ……力が。
熱くなって、とまんねっ……。
あー
そうか。人狼だからもしかしたら人間では出ない効能も出るのかも知れませんねぇ。
[特に気にしてもいないような様子で言った]
まあ大丈夫ですよ
薬が効いたらきっとうまくいきますって。
すでに効いているようですしね。
それじゃあ俺は、お先に?
[といって、薪小屋の戸を開け――すぐに閉めた]
[向かう先は、広間]
[当然、アーベルは置き去りに。]
…私は。
[視線はハインリヒに向けたまま。
絞り出すように声を紡ぐ]
私は、それを。
それを、望ま、ない。
[全身が震える]
同じには、しな、い…!
[衝撃]
それを俺に聞くか?
金と命。傭兵が動くとしたらこのどっちかぐらいだぜ。
[多数決を取るハインリヒに若干呆れ目で]
必要ならな。とはいえ、正直あんなんと二回もやりあいたくはねーけど
仇…なんてとる柄でもねえしな
[クレメンスの言葉も、彼が立ち去るのも、意識に入らず。
あるのはただ。
押し寄せるような、熱、だけ。
内に秘めた純粋な『力』。
その躍動が、一気に高まり。
それを解放したい、という意思が、強く、強く、高まって──]
こんばんは。
とりあえず、アーベル君がこちらに来るから逃げたほうがいいんじゃないかと思いますよ?
ちょっと今、大変みたいでして?
[困りましたねえと、言った]
[現れたのは、黒。
耳に届いたのは、まるで大変じゃなさそうな口調だった]
――なんっ、
[意味を理解するより先に、身体は動いた]
反対3票。
ああ、神父さん、あんたのことを忘れてたな。
[さりげなく酷い台詞を吐きつつ、男は広間に入ってきた神父を鋭い視線で見つめる]
あんたは、人狼を殺したいか?
[問いに答えが返る前に…或いは逃げるというのが答えだったか…男の耳にも咆哮が届く]
タイムリミットてやつかな。
[ダガーを腰から抜いた]
[逃げろ、と言われても。
抗うことに残された体力も奪われている身では]
…同じに、する、つもり。
もう、ない、のに…。
[立ち上がることはおろか。
身体が崩れるのを支えるのすら、もう怪しい]
─集会場・外─
[雪の上。
空へ、顔を凛と向け。
佇んでいるのは、蒼き狼。
『風』の名を持つ若狼の咆哮は。
果たしてどこまで響いてゆくか]
[外へと飛び出すユリアンを、男は止めなかった。二度と彼を止めるつもりはない。そして耳に届くクレメンスの言葉。その意味は捉え難かったが]
俺も同意見だがな、マテウス。
アーベルは、ユリアンを殺すと思うか?
[それは、正確にはマテウスへの問いではなかったかもしれない]
[静止というよりは。
同じように行きたかった。
だが。
身体がもうついていかない]
殺さ、ない、で…。
それ、を、望ま、ない、人、を……!
[兄は望んだ。
けれどアーベルは望んでいなかった。
そして恐らくは今も]
何、か…。
[クレメンスを見上げる。
何か手段があるのなら]
[昨日と同じように、声を辿る。
否、辿るまでもなかった。
冴え冴えとしたひかりに照らされる、蒼。
薄闇に包まれた世界でも、鮮やかに映える色。
浅くなる息は、急に動いたせいだけじゃ、ない]
――アーベルっ
[何も考えていなかった。
ただ、名を、呼んだ]
あんな規格外の代物、早々殺せねえけどな…って
[止めるまもなく、言ってしまうユリアンを見て苛立たしげに舌打ちを一つ打って]
そんなの知るか。ハインリヒ。俺は人狼じゃないんでね
[そしてユリアンに続くように扉、外へと]
[男は、ダガーを手にしたまま、ユリアンの後を追うように扉を開ける。白い雪の中には、蒼き狼]
アーベル、か?
[初めて見る姿に、ごくりと喉を鳴らした]
[名を呼ばれ、そちらを見る。
ゆるり、傾げられる、首。
開いた口からは、やはり、吼える声だけが響いて。
蒼の風は、何かに突き動かされるが如く、現れた者たちへと、駆ける。
雪の上、跳ねる。
蒼]
何かなんて。
俺が何か出来るとお思いですか?
[シスターの言葉に器用に片眉をあげてみせる]
って、イレーネ君、無理をしてはいけませんよ
[蒼い狼が雪を蹴り跳ねる、男は前方にいるユリアンを思い切り横に突き飛ばす]
退け!!これ以上、殺させたいのか?!
[右手のダガーは、狼に向けられている]
[こちらに向けて駆けてくるアーベルを見て
瞳の奥には朱金が宿る]
結局こうなるのな
[悪態をつきながらも、懐から短刀を一つだしその瞳を狙って、投げつける
最も当たるなどと微塵も思っていないが
投げつけると同時に、二振りの剣を抜く]
[背後からの気配と、声。
振り返り、叫ぶ]
駄目、……っ!
[駆ける蒼は見えなかった。
突き飛ばされた、と気づくには間があった。
雪の上を転がる]
[ハインリヒの動きを視界の隅に捉えつつ。
飛来する、気配。
蒼狼は素早く横へと飛びのいて、それを避ける。
低い唸り声には、微かに苛立ちの響き。
双剣を構える巨漢へ向けて、蒼は再び、雪を蹴る]
…アーベルさん、なんですね。
[残された人狼]
[外に向かう男達を見守って]
[イレーネを庇うように側に]
殺す事を望まないものを殺す、という事は
誰のためにもならない…
それではシステムに抗う事にはならない。
無理、なんて。
[揺れる視界。それでもクレメンスを見上げて]
みんな、してる、わ。
アーベル、さん、だって。
[肩で息をつく]
…望ま、ない。
私に、いま、できる、の、は。
[肩を抱える。
痛みに耐えるために。
少しでも…刺激を減らせるように願いながら]
[こちら目掛けて駆ける蒼狼を朱金が宿る瞳で睨みつけ隙なく構える。
ただ念頭にあるのは回避のみで
体をゆらりと揺らして突進を避けるように体を動かし横に逸れて流そうとする]
そう見えるだけですよ、シスター?
[わらう]
[そしてイレーネに目をとめた]
そうですね。
それなら止めはしませんが…
[いくら遅効性といえど、そろそろ兆候はでるだろうかと考える]
[手を突いて、身を起こす。
複数の、煌めき]
っ、
[蒼狼と対峙する男には届かない。
立ち上がり、自分を突き飛ばしたハインリヒに近づく。
その腕を掴もうと、手を伸ばす。けれど、距離はわからない]
なんで!
邪魔しないで、アーベルが……!
[男もまた、雪を蹴る。蒼き狼に向かって]
馬鹿野郎がっ!!
[獣の足は速い、せめてその足を止めようと、雪の上に落ちたマテウスの短刀を拾い上げ、背後から、狼の後ろ足目がけて投じる]
[また、名を呼ばれた。
ふい、と蒼の瞳はそちらを見やり。
瞬間、対象を捉え損ねる。
突進はいなされ、蒼は前方の雪溜まりへと飛び込んで。
投げられた刃は、後足を掠め、微かに紅を散らした]
[低い、唸り]
[身を翻し、距離を、そして、機を計るよに、低く構えた]
気のせいには見えませんけど…。
そういうことにしておきます。
答えてはいただけないのでしょうし。
[そう言って、外の様子を伺うように目を向ける]
離せ、ユリアン!あのままじゃ、下手すると二人とも死ぬ!!
[青年の引き止めようとする力は、思いのほか強い。男は、苛立たしげに怒鳴ると、ユリアンの返事は待たずに、手にしたダガーで上着の裾を裂いた]
シスターは嘘はお嫌いですか?
[小さく笑った]
[問いは唐突にも聞こえただろう]
[彼女に真実を教えるか否か、まだ悩んでいる]
[ユリアンやハインリヒの声が聞こえるがいちいち神経を他に反らせるわけにはいかない。
突進をいなせたことで、速さになんとかついていけるとわかったことに安堵しながらも
瞳は蒼狼の一挙手一投足を見逃さないように見る
初めから力勝負で勝てるなど微塵も思っていない。防御など無駄
だからこそ回避を念頭に入れて、隙をうかがうのだが
身を翻し、低く構えている蒼狼を見て誘うように剣先を揺らす]
[咄嗟に伸ばした手は、利き手である右。
痛みが走る。でも、気になんてしていられなかった]
でも!
[死ぬ。
自分でもわかるほどにビクと反応して、動きが止まった。
その間に上着は裂かれ、下へと引いていた勢いは収まらず、膝を突く形になる]
なら、どうすれば、いいのさ……っ
[揺れる剣先。
蒼の瞳は、じい、とその動きを追う。
誘いか。
それは、本能が察知させるものの。
それに乗るのもまた、一興、と。
蒼の瞳には、微かな──好奇の色彩が浮かび]
[短い咆哮]
[蒼狼は、雪を蹴り、高く、跳ぶ。
先に傷を受けた後ろ足を庇おうとしたのか、動きはやや、鈍い]
[感情の篭らない声。
外の音も聞こえないほど集中していたはずなのに。
それだけは何故か届いて]
…かく、ご…?
[反応する。とてもゆっくりと]
[イレーネには決して伝えない]
[それが薬を飲む覚悟だったことなど]
そう。
[低い声はどこか哀しげにも]
どうにも出来ないとわかって、覚悟したと。
彼は言っていました。
……っ、
そんなの、
言われなくたって、
[違う、本当は、死んでもいいと思っていた]
……生きるよ!
だから、
殺さないで、
殺させないで、
[視界が歪みかけるのを、堪えた]
[クレメンスに言われた言葉を口に出さずに反芻して]
そうですか。
[とだけ返した]
[まだ、他には知らせなくないのだろうと気付いたから]
[動いた蒼狼
相手の始動をある程度誘導して、動きを見ていれば回避もできる
だがそれだけでは駄目だ。攻撃する余裕を作らねばと。
跳躍する蒼狼を横飛びに避け、その首を狙うように…そこで一瞬顔を顰めた。
この動きは、アーベルをつれて逃げたときに、襲ってきた狼に取った行動と同じで…
ただ行動はとめれずに剣を振るう]
覚悟……。
終わらせる覚悟をしたというのですね、アーベルさんは。
[イレーネが思う覚悟と、自分が知った覚悟とは違う]
[だけど、彼が覚悟を決めた事は間違いはなかったからそう口にした]
[投げられる声は聞こえていた。
熱に浮かされた状態でも、はっきりと。
祈るような声も。
返せるならば、言葉を返したい、と思ったけれど。
今、出せるのは、蒼狼としてのコエだけ]
どうにも、できな、い…?
[朱花が熱を放つ。その言葉を肯定するように]
諦めるなって。
いった、のに。
[心が冷えてゆく。
支えにしていたのは、ただその言葉だった]
なの、に……。
[抗していられたのは、その気力。
それが崩されれば]
そう、ですか……。
[そっと、目を閉じる]
それだけ大事だということでしょうね。
イレーネさんやユリアンさんが。
[それは事実だろう、だから嘘はついていないと心で言い訳をして]
[イレーネに目をむけ、眉を顰めた]
[アーベルに対して厄介なことをと思ったかもしれないが、声にも態度にも出さず]
イレーネ君。
君は、生を諦めるつもりですか?
アーベル君は覚悟を決めたけれど、
…それでも、生きられる道を今も探しているんですよ?
[飛びかかりの動きは避けられて。
標的を失し、体勢がわずか、崩れる。
そこに繰り出される、刃。
逡巡。
首を取られるわけには行かないが、完全に避けられる距離でもなく]
……っ!
[強引に身体をそらす事で、刃を前足の上──人の身であれば、肩になる所か──で、受ける。
零れる真紅。
蒼が、傾いで。
……落ちた]
そうですね。
大事だからこそ、覚悟を決めたんでしょう。
[アレを飲むのはたいした覚悟だっただろうと思いながら]
だからこそ、君は、生きなきゃいけません。
見届けなければ。
[拳を硬く握る。
白い雪の上に、赤い滴が落ちた。
痛みはなくて、ただ、寒かった。
バサリと、羽ばたきの音がした。
広がる闇の中に、一層、深い黒。
銀と藍が煌めく]
……ザフィーア。
[慎重になりすぎた。己がとった動きはアーベルが一度見ているというのを思い出したがための逡巡。本来振り下ろすよりも僅かに勢いが失せた剣は、首を捉えることはできずに、肩に当たり]
相変わらず硬い肌だな
[思わず悪態をついて、すぐさま来るであろう反撃から距離を置くように後ろに飛ぶ…が、予想していたような反撃は来ずに蒼狼は落ちて]
[感情の消えたままの顔を上げる。
焦点は合っているのかいないのか。
それでもナターリエとクレメンスの方を見て]
大事。
探す。
覚悟。
生きる。
見届ける。
[紡がれるのは、単語の羅列に近かったけれど]
…諦め、ない。
アーベル!
[落ちて跳ねる蒼い狼、雪に散る紅]
今、楽にしてやる。
[男は、ダガーを手に、そのまま躊躇いなく狼に近付いていく]
[イレーネが途切れ途切れに紡ぐ言葉を拾い集めて]
そう、まだ諦めてはいけないの。
まだ、終わってはいないのですもの。
見届けましょう…一緒に。
……ラクとかなんとか……勝手に決めんな、おっさん。
[不意に、零れたのは。
人の声。
衝撃が、熱を冷ましたか。
しかし、傷の痛みは本物で。
動くことは、できそうになく]
[ユリアンの声が聞こえた。マテウスが動くかどうかは判らない]
『殺さないつもりでいれば』
[神父の言葉が蘇る。彼とアーベルが、あの薪小屋で何を話したのか、それは判らなかったが]
……んな、悲壮な声で、人呼ぶな……。
[ユリアンの声に。
ぽつり、呆れたような呟きを、もらす。
気だるさが、高まるのが、感じられた]
[なぜだ?と、己に向けて問う
昨日銀の狼と直接対面した自分だからわかる。
このようなことぐらいで人狼は倒れるはずがない。
だからこそ、警戒して構えを解かずにいて、ただ集会所から出る前に、不思議な言葉を投げて、今もこちらを窓から見ている、クレメンスを見る]
[男は、アーベルの前に膝をつく、飛来した黒い鳥に、向けたのは僅かな笑み。それは、他の者には見えはしなかったろう]
だったら、こういうのはどうだ?
いいかげん…茶番劇の幕を降ろそうぜ、アーベル。
[静かに言って、その頭にそっと手を添える]
……っか、
そんな声、してな……
[否定しようとするのに、声は、途切れ途切れになる。
マテウスが未だに、剣を構えているのは窺えた。
それでも、倒れ伏した蒼へと、舞い散った赤へと、近付く]
[クレメンスが打ち明けた事]
[それが本当に上手く行くかはわからないけれど]
今度ばかりは、神に祈るという気にはなれませんわね。
[不謹慎な、と言う気持ちは湧かなかった]
ん……。
[ハインリヒの声に、小さく、返す。
今、感じているのは、眠気。
それが自分をどこへ導くのかは。
自分自身わからない。
賭けに勝てるか、否か。
勝つ気は……ある、けれど]
……じゅーぶん、悲壮。
今にも消えそうな声だすな……ばぁか。
[ぱたり。
力なく、尾が振られる。
人の姿なら、肩を竦めるか、前髪をかき上げるか。
そんな仕種だろうか]
[目をそらすクレメンス、その傍には、ナターリエやイレーネもいて
ただ蒼狼ではなく、アーベルとしての声を発しているのを聞いて、アーベルのほうを見る。
剣は収めて傍による]
アーベル…なのか?
[膝の上に抱き上げるように、その身を引き上げ、ダガーの切っ先を左の胸、心臓の上に当てる。両手で、ダガーの「柄」と「刃」を包むように握り…]
[力を、込める]
[刃の半分は、蒼き狼の心臓の上に、残りの半分は男の手の平を切り裂いて、雪の上に広がっていく、赤、紅、あか………それが狼のものなのか、男のものなのかは、遠目には判るまい]
なに……今更。
旦那ってば……ぼけてる?
[マテウスの声に、からかうように言って。
ハインリヒの動きに逆らう事はしなかった。
ただ、もう。
気だるくて、眠くて。
後はもう、意識を手放すだけしかできそうになくて……]
[ハインリヒの動きが見えた
手で、刃も柄も包むように握っていることを
システムを崩す方法
意図は読めた。だから、口を挟まない。
茶番に付き合うなど、うんざりだから。と]
望みを聞いてくれるような神なら、こうなる前に止めて欲しかったのですけどね。
[ちらりと窓の外を見遣る]
どうなるのでしょうね。
そんなん、……ない……
[二人と、一匹と、一羽と。
その姿がぼやけた広がりから形になって来て、けれど、いつものようなアーベルの声に安堵を覚えて、雪にもつれかけていた足が、歩が、緩んだ]
……非常識は……ねぇ、だろ……。
これが……俺が……。
父さんにもらった……唯一の……なん、だから……。
[返す言葉は、いつも通り。
意識の糸は、今にも切れそうに]
そっか。そりゃ悪かったな。
ま、結構にあってんじゃね
[そんな軽口を吐きながら、ハインリヒの言葉を聞いて瞳の奥の朱金を消して
大きく息を吐く。]
終わったか
[こちらも何食わぬ顔で、ただ意識が霞みそうなのに顔を顰める]
[ユリアンの声に、返す言葉は、思いつかなくて。
意識は、そろそろ、途切れそうだから、代わりに]
Wenn ich bete und ankomme.
Es ist einmal mehr dieser Boden.
Wenn ich auf Sie stosen will……Nur es.
Aber zum blauen Himmel……Ich bete……
[紡いだのは、歌の、最後の一部分。
『願い届くなら。
もう一度この地で。
巡り逢いたいと』
そんな祈りの込められた部分を、紡いで。
直後に。
……意識が、*深い闇へと、おちた*]
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