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[床に座り込んだ姿を少し見る。
命令をと求めることばに、三日月をすこし崩した。]
カルロス。
[名を呼びながら、手をその頭に。
身を屈め、視線を合わせようと。]
良い子にしていたら、ご褒美をやろう。
男が拗ねていても、目の保養にはならないぞ。
[地上にある金糸雀色の瞳も、それを、目にした。
されど、視えぬものを、見ることは出来ず。
やがてひかりの鳥は、ゆらりと、高度を下げていく]
アイラ……?
[足早に、その元へと向かう。
同時に、眼差しは、その上の白の翼を捉えた]
[ 虚を集めようと気を集中させる。
疲れてしまった身体を回復させるために。]
―――――――…。
[ 目を開けると同時に羽根は金の光を取り戻す。
瞳は両の目とも、バイオレット。
頭の痛みを抑えていた手をそっと降ろす。]
[懐に入れた手を抜くより早く、深紫の煌めきが影を散らす。
鋭く息を吐き、辺りを警戒しつつ立ち上がった。
足元の疾風は小さな声を漏らしながら、尻尾を垂らしている。]
………今のは、なんだ。
ラスではなかった。もっと別の方向から……カレンを。
[悔恨に奥歯を噛み締める。
己がこの場に巻き込んだ様なものだ。]
………アヤメ、どうした。大丈夫か?
[不意に零れ落ちた声に、渋面のまま視線を向ける。
頼りない様子に肩を掴もうと手を伸ばした。]
[何か黒いものがカレンを覆い。そして霧散する。
それを眺め。ぽきりと指を鳴らしたのを聞きながら]
でも……他の人と…なんの差があったんだろうね
[ぽつりと呟く声が誰かの耳に届いたかどうかは*知らない*]
[ 気配を察することができても、光景を確認する力はなく。]
まだ、封印は始まっていないようですが。
聞こえていたら返事をお願い致します。
[ 声が返ってくることはない。
ある程度、予想はしていたが。]
弱りましたね…。
[ 心配する素振りだけはしておく。]
[肩に手が触れる感触。
唐突なそれに、身体が震えた]
……旦那……。
アタシ……まもれなかった……カレン……。
目の前にいてっ……手、届いたのに……っ!
[一緒に育った、妹分。
自分を孤独から救ってくれた者の一人。
その存在が、目の前で消された事が、心に衝撃を与えていて。
スティーヴの手の反対側の肩に止まったラウルが、くるる、と案ずるよに鳴いた]
[ほんの少しの間の沈黙すら苦痛で、見上げることはできなかったから、その表情が変化したことには気付き得ず。
名を呼ぶ声、衣擦れの音に顔を上げれば、頭に掌の乗る感触。
つい最近、くしゃくしゃとかき回された感覚を思い出せば、連想されて浮かぶのは眼を細めて笑うラスの顔で。
思わずまた、一つ、二つ、頬に滴が零れる]
そも、そも…23にもなって、良い子があるか…。
…拗ねてなんぞ、ない。
[けれど零した滴は意識的に無視して、呟く言葉は常に似せた]
頭数があること越したことはないので。
当てにはしていたのですが。
[ 広場ではまた人が集まり出しているか。]
封じられると決まったわけではありませんが。
………やはり、間違いないのでしょう。
[ 頭を上げる。
捉えたのは先の見えぬ闇。]
まぁ、仲間でも何でもありませんし。
助ける必要はないでしょう。
寧ろ、結界樹の中から是非汚してみて下さい。
そう、全て壊すのですから――――――。
[ 闇のその先を見ようと首が傾く。]
[荒れる感情を吐き出させる為、その慟哭に黙って耳を傾ける。
ラウルの鳴き声に合わせて、疾風も小さく鳴いた。
やがて言葉が途切れた頃、その肩に置いていた手を動かした。
緩く拳を作り中指を曲げて、綺麗に切り揃えられた額へと。]
………何でもかんでも一人で出来ると思うな、馬鹿娘。
[中指を軽く弾く。]
お前はさっきラスを…堕天尸を捕まえただろうが。
それに俺も守ってくれた。
………何も出来なかったのは俺の方だ。
[眉間の皺を深くし、銀色の消えた場所を見る。]
[ 暫くの間、ぼうっと目の前を見つめる。]
広場に…また人が集まりだしているでしょうか…。
[ 空を仰ぐ。
目に映りこむのは何色であるか?]
……行ってみますか。
[ と言っても広場からそれを見る気にはなれず。
あまり人が来ない、広場の見える場所へと身体を浮かせる。]
― 聖殿 ―
『また、お前か。今度は何の用だ?』
[長老の前に出ると、付き人をはじめ周囲から浴びせられる、うろんな者を見る視線。その数に圧倒され、ごくりと唾を飲む。小さく深呼吸をすると、口を開き]
……堕天尸の影、見つけた……
確認……したい……から、同席、して、欲しい
[確認とは何のことだ?と周囲はざわめきたち。躊躇いがちに、それでも薄金の羽根の持ち主、ラスの名前を口にして]
証拠……
呼ぶなり、出向くなり、して……
……僕の力を、使うから……見て……欲しい
疑わしい、だけで、人を封印するの……は、止めて
[信用がないのは百も承知で、長老に告げる]
[降りて来た鳥は、手の器の上に。
白が、村の方角へと往くを見送る。
眉が深く、寄せられた]
封印の……
それとも、誰かが、捕らわれた、影響?
[独り呟いて、視線を落とした。
撫ぜようとしても、ひかりに感触はなく。
代わりに、ふっと――何かが、失われた感覚を得る。
それは、己と近しいちから。
見上げた月が、翳ったような気がした]
傭兵 カルロスが「時間を進める」を選択しました
まだ十分と子どもだと思うが。
[くつりと哂って、一度、撫ぜる。
そのまま手を離し、]
――虚ののぞみは聞いたか。世界のことわりを壊す、というらしいぞ。
その望みがかなおうがかなうまいが、俺はどうでもいいが。
――その望みに、エリカ嬢は魅かれかけた。
完全に、堕としてこい。
[囁くことば。]
あァ、それと、羽根を見せてみろ。
ずっと見てやってなかったからな。
[痛がるようなら、*癒してやろうと*]
傭兵 カルロスが「時間を進める」を取り消しました
[額に与えられた衝撃に、思わずきょとり、と瞬く]
……んなこと、言ったって……。
[ぽつり、反論しかけるも。
深くなる眉間の皺に、続く言葉を飲み込む]
……ん……ごめん。
それより、早く、戻ろう?
ローディに、このバカの頭、冷やしてもらわないとね。
……兄さんも、きっと、こっ酷く叱ってくれるだろうしさ。
……それに、『堕天尸』は、他にもいそうだしね。
やれること、やらない、と。
[落ち込んでいる暇はない、とばかりに言いつつ。
肩のラウルを*そう、と撫でて*]
[ 少し高い所にある其処へと腰を降ろす。
足は宙へ投げ出し、手で地面を握る。
眼下に少し遠くある人の輪を見ようと首を傾けた。]
――――――…。
[ ただただ黙ってその光景を見続ける。
其処に、男が連れて来られるのはまもなくだろう。]
………そうだな。
このまま転がしてたら馬鹿でも風邪を引いてしまいそうだ。
[ラウルを撫でるアヤメから転がるラスに視線を投げ、呟く。
紫紺の翼を仕舞い、闇色の翼に触れぬ様に肩に担ぎ上げた。]
……歩きで行くぞ。疾風もいるしな。
[疲れて飛べないだろうアヤメに短く告げて、足を踏み出す。
ゆっくりと、だが確実に踏みしめて、儀式の間へと運んで行く。]
[詰問は始まる。力があるなら、それを今まで黙っていたこと、先刻の密告について、名を上げた青年を確認したいと思った経緯、そして、お前は何者か、と]
……っ……
虚を、視る……者……
[婆様から聞いた話を告げる。本来は、堕天尸がその素質のある仲間を見つけるために使った力。虚に引き寄せられ、取り込まれる者も多いと言う。話すたび、嫌悪の視線は増し、周囲からは拘束して結界樹に封印すべきとの声がちらほらと聞こえてくる]
――…虚の望み……?
それ、に…、エリカちゃんが。
[ふと、考え込む。彼女が以前、何を考えていたかと。
翼を厭ってはいなかったかと]
…ああ、分かった……。
[翼が無い世界なら、この関係はどうなるのだろうと思い至り、声は小さく掠れた。
手入れもしたばかりで、翼に痛みは無かったけれど、緩慢にそれを広げる。
今はただ、穏やかな*眠り*に付きたかった]
−聖殿−
[辿り着いた時には既に人垣が出来ていた。
それを無視して大股で進み、アヤメとラウル、疾風が続く。
肩に担ぐ細長い背に濡れた光を放つ漆黒の翼を見、競うように道が開かれていった。]
長老、ラスを連れてきた。
………お前、こんな所で何を。
[見覚えの在る小さな子供を見下ろし、眉を寄せる。
資質のある事は薄々感付いていたが、それが何かは知らず。]
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