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[閉ざしていた目を、ゆっくりと開ける。
右手を動かした。
軽い、痺れ]
……っしゃ、動くな。
[それでも、動かない、という訳ではなく、動くならそれで十分だった]
……取りあえず……このカッコは何とかしねーとな。
さすがに、いい気はしねー。
っつうか、この帰郷だけで一体どんだけの服が廃棄決定になってんだか……。
[薄給の塾講師になんつー仕打ちだ、と。
ある種場違いな事を呟きつつ、吸殻を携帯灰皿に放り込んで立ち上がる]
[ふらつきながらも部屋を出て、階下へ。
榛名と玲、二人の様子に軽く目を細める。
紅く染まった様子に、さすがに榛名は動揺するか。
それに返せたのは、ただ、苦笑。
裕樹の事を問われたなら、端的に、己が成した事を告げる]
後付けの理由やいい訳なら、いくらでも出来るが……様にならねぇから、それはしねぇ。
俺は、俺の信念貫いただけだからな。
[その信念とは即ち、失わず、奪うものを許さず、という、簡単で自分勝手なものなのだけれど。
今はそれが、狂気と正気の境界線を形成し、自身を見失うには至らせず。
悔いる様子は、微塵も感じさせなかった]
で、俺、ちょいと家に戻る……なるべく、早めに戻るが。
……玲を、頼む。
[支えてくれ、と。
そう言って、外に向かおうとするのと、涼が戻ってくるのはほぼ同時か]
南部クン……どうした?
[どこか、何か、違う様子。
決意を固めたような姿に、静かに問う。
返されたのは、利吉の死。
そして、孝博の居場所を問う言葉]
探偵の旦那が……そうか。
ったく、人に御身を大事に、なんつっといて、てめぇは何してんだよ……。
[口調は吐き捨てるよに。それでも、僅かに伏せられた目には僅かな陰り]
孝坊の居場所、か……どっか行ったっきり……みたいだが。
……とにかく、俺、一度家に戻る。
っても、そういう事なら、早めにもどらねぇとならんだろうな。
[静かに言って、外へと飛び出す。
不自然な闇。これは、いつ晴れるのかと思いつつ、自宅へと駆け戻り、部屋へと戻る。
机の上のファイルケースと蛙の灰皿。
そこにあるのは、今は遠く感じる、日常]
取り戻さねぇと、な。
[完全には無理とわかってていも、そう、呟いて。
紅を帯びた服を脱ぎ、荷物から出した物に着替えた。
適当に選んだそれは、期せずして黒一色に統一され。
シャツのポケットから僅かに覗く煙草の箱の紅が、冴え冴えとして見えた]
…………ん、動く、な。
[着替えを終えた所で、もう一度、右手の状態を確かめる。
痺れはあるが、動くならば問題はなかった]
……物を生み出す事のできねぇ手でも。
奪う事しかできてなくても。
……それでも、まだ、先を掴む事ぐらいは……できる。
[静かな呟き。
黒檀の短刀はまた懐へと収められ]
よっしゃ、戻るか。
[黒一色のその身は再び、広がる開けぬ*闇の内へと*]
/中/
えーと。
「お前、また黒一色なのかよ!」
の突っ込みは聞かない方向で。
……っつーか、ある程度予測はしていたが、やっぱり地の出た時空竜になっている件。
……あれってほんとに素なんだな、俺。
[もう一発、鳩尾に叩き込む。顔にしないのはギリギリの良心か。]
[今度は殴った後で胸ぐらを掴み寄せる。]
いいか…!
もう一度言ってやる。人を勝手に枠に嵌めるんじゃねぇ…!
見下してくれるヤツに、男も女もねぇぞ。
[同じ場所を狙っているのが分かったから、そこに力を込め、衝撃を和らげ]
―――…っふふ。
[何か箍の外れたような笑い方。
胸倉を掴むその腕を握り、力を篭める]
離せ。
[低い声で、呟く]
こんな拳では、お前に嵌められた枠を壊せやしないだろうから。
それとも、俺を殴ればその枠を壊せると―――…、本気でそう思っているのか?
[揺らぐ身体。覚束ない足元。
けれど見返す視線は真面目なもの]
…格好悪いな。
[誰がとも言わず、呟き。
それ以上の動きを見せる事もなく、眼を*閉じる*]
[玲が落ち着いたら温かいお茶を用意し差し出して。出て行った涼や二階へ向かったままの史人達を待つ。ややあって、姿を現したのは、史人]
…っ、史人、その、格好…!
[これまで何度か見た紅を纏った姿。その姿に思わず椅子から立ち上がる。母親のことなどがフラッシュバックしかけるが、どうにかそれに耐えて]
なん、で……。
…そうだ、裕樹君、は…?
[史人は裕樹の部屋へ居たはず。史人がそのような姿であるなら、共に居たはずの裕樹はどうなったのか。心配になりその安否を訊ねた。無事であることを願ったが、それは儚くも崩れ去る]
……そ、んな……。
[手を下したのは、他ならぬ史人。彼の纏う紅は、即ち裕樹のもの。告げられた言葉から史人が理由と信念を持ち行動を起こしたと言うのは理解出来た。理解は出来たが、告げられた事実に対するショックは大きい。幼馴染が、己と親しかった者を手にかけたのだから。その心に去来するのは悲しみ。それは、裕樹が死んでしまったこと、史人が裕樹を手にかけねばならなくなってしまったことに対して。大切な者を奪われた者が抱いた憎しみは、何故かあまり起きなかった。抱くのは、ただ悲しみのみ]
…………。
[何も言えなくなり、ふらりとよろめき、また椅子へと座り込んだ。しばらく思考がぐるぐるとしていたが、続いて玲を頼むと言われると、やるべきことがある、と気を奮い立たせ、心持ちしっかりした様子で史人に頷いた]
[史人が旅籠を出ようとしたと同時に涼が戻って来て。無事な姿に僅か安堵する。しかし直後に告げられたのは利吉の死。また人が死んだ、と更に悲しみが募る。孝博の居場所を訊ねられると]
ここには、居ない、みたい。
どこに、行ったか、までは、分からない、な。
……聞きたいこと、あったのに、どこ、行ったんだろう……。
[最後はぽつりと呟くように。
着替えに行く史人を見送り、窓の外を眺めた。空は曇天、光が差し込む気配は無く。時間の感覚が狂い、最初の事件からどれだけ経ったのかも分からない。そんな空を眺めながら今後の行方を思い、深く溜息を吐いた]
―――回想―――
[どうやって死んだのか、それは分からない。
ただ、利吉が死んだ後、その体から、ぼぅ……と闇が滲み出た。
それは、桜の周囲に、村全体を覆う不自然な闇。
考えることも無く、ただ、無限にそこにある、というそれだけの存在。その一部だ。
考えることも出来なく、何も出来ないはずの闇が、いつか、涼が近寄ると、移動して、涼の体にまとわりついた。
―――それは、まるで涼を抱きしめるように。
―――それは、まるで涼を見守るように。
―――それは、まるで涼を安心させるかのように]
[闇に思考は無い。
ただそこにあるだけだ。
やがて、涼が移動を開始すると、一緒に闇も涼へついていった。
闇に思考は無い。
ただ、それだけだ]
[死した者と会えなくなるという事実を認識して、落ち着けるのに幾らの時を過ごしたか。愚痴るといったわりには無言でいたが]
それでも、一人でも多く生きて欲しいと思うのは、偽善だろうか
[この気持ちは、己が抱くに値しないもの]
その中に、親しきものが入っていて欲しいと思うのは、傲慢だろうか
[目を開いて改めて外でできた友人を見やる]
二度と会えなくても、どこかで生きていてくれたらいいと思うのは、自己満足だろうか。
[裕樹の持っていた剃刀を手に取り立ち上がる]
もらってく。嫌だったら取りに来い
[部屋を出て、階下へと降りた]
/中/
まー。一緒にいるだけで、別になんか出来るわけじゃないんだけどね。
気づかれないだろうし。
死後を考えてはみたが、やっぱりというかなんというか、こんな感じにしか出来無そうではあるなぁ。
/*
試してみたところとしては
縁を多く取る(いつも少ない)
能力者だが無能っぽく(あんまし色々ありすぎるとどかなぁと)
まあ後、軽く人の死を軽く扱わないように。みたいなのどっかで出てたから。
現実的っぽくしながらも、やっぱりうだうだするような。なさけなーい感じをだらっとやってみたが、はたしてどうだったのだろうかと。
ただ思うに、あんまり縁を多く取ったりすると色々広げれるかもしれないが消化も考えると濃いようなの二、三ぐらいでいい気がしなくもない。
能力者はやっぱし派手なほうが見応えあるだろうなぁ…ここは謝ろう。うん
[幼い頃から慣れ親しんだ集落とはいえ、最終的に帰る場所と言われれば一つしかない。
雨に濡れた身体を人目から避ける為――父親を手に掛けた時と同じように――裏口から自分の部屋へと向かった。]
・・・ッち。
んだよ、コレ。
[扉を閉めたその内、ぼやく顔色は優れない。
服の左胸を掴むようにして、扉に寄り掛かる。]
/*
合っているのかどうか知らないが、キリングは時代背景っていうものもあんのかもなぁ。と。備わりそうな倫理観とでもいうかな。
もしくは必要に迫られて。っていう状況でもあれば。とか。
時間以内にしないと全員死にます。
でもやってる人間もいるからそこはやっぱし関係ないかなぁと
兄さん…。
[降りてきた史人。その姿は見えなくとも、纏う空気が、そして臭いが何が起きたかを悟らせる。その通り、榛名の問いに対しても端的な答えが返ってきて]
…そうだったね。
[呟きながら胸元を握る。固い感触。その覚悟もしたつもりだったのに、押し通すことができなかった自分]
情け無いな…。
[小さな呟きは溜息と共に]
/*
ざっくりしたのをいつもやっていると、こう、うだうだと悩んでいる感じの加減がわからんのだよなぁ。
むずかしむずかし、変に考えずいつもどおりしてりゃよかったやもしれぬなとか
[聡と裕樹の言い争いをどちらに付くでもなく傍観していたが]
やれやれ。そこまでにしておけ。
聡。挑発をした裕樹の責もあるが、それにしても貴様は短気に過ぎる。
言ったはずだぞ。安易に女を殴る奴の程度など高が知れる、と。
それとも、貴様の言う枠に囚われない自己とは、女の皮肉も許せないほどに狭量なものなのか?
[剃刀を懐にいれる。服に血もついているが、気づかぬ間についたのだろう。なんて今更ながら気づきつつ、階下へと降りれば
榛名と、先程出て行った内の二名。涼と玲の姿]
何が、ありましたか?
[何かあったか。ではなくあったものとして、聞く]
あっ、家に戻るなら…。
[自分の分の着替えも頼もうとして。だが部屋の中に入ってもらうことになる、と思ったら躊躇が出た]
……ごめん、何でもない。
気をつけて。
[そこにもう一つの声]
涼ちゃん?
[硬い響き。強い決意]
………。
もう、視るまでも無い、か。
[息を吐くのと同時、僅かに光が戻って来た。何度か目を擦る]
/中/
おー、おつかれ。ん、いいんでないかい?
死んでも愛する存在のそばにいて守ろうとする。
俺も昔やったが、おもいっきりビビられてたな。
蓮実君…。
[階段から降りてきた蓮実に視線を向ける。その表情には悲しみの色が広がっているか]
裕樹君……は、知ってる、かな。
利吉さん、も、だって…。
[蓮実は史人の様子を見に行ったはず。それならば裕樹のことは知っているだろう、とそれ以上は言わず。続く利吉に関しても言葉を濁すようにして何があったかを示唆した]
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