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本当に。
そんなことにはならないと思いますけれど。
[自分もまた席につき]
お口にあいましたようで、良かったです
[のどを潤わせ、ふわりと微笑んだ]
─東殿─
[剣の共鳴が途切れし後は、それを辿るにも辿れず回廊の真ん中で考え込んでいた。離れた場所での癒しの力には果たして気付けたかどうか。思案に没頭していたためにそちらに意識が向くことはまず無かっただろう。そうした状態のまま歩を進め始め、いつしか己が個室へと戻っていた。
その後、そのまま思案に没頭していたのか、今後に備えて休息をとったかは定かではない]
[しばしの時間の流れ。いつしか閉じられていた瞳が見開かれた]
……現れた。
[呟かれたそれはもちろん、剣の共鳴に対して。共鳴が断続的に起きている事象から考え得ることは一つ]
結界内を行き来出来る可能性、か。
他を押し込めることが出来るのならば、それが出来てもおかしくはない。
[己の中で点が線へと繋がる。何かを決意するように短く息を吐くと、椅子から立ち上がり個室の外へ。向かうは剣の共鳴の下]
―― 私室 ――
[唐突にぱちりと目を開ける。枕元に止まっていた機械竜が飛び降りて来ようとするのを、右手で制した]
…近付くな、ユル。
[ゆっくりと起き上がり、手袋に覆われた左手に目を落とす]
これ、が、剣の力…
[エネルギーの逆流を受けたメタルの腕は、ショート直前で全ての機能を落としたおかげで、自己修復により動きを取り戻している。しかし…]
確かに、危険だな。
[手袋を外し、指先を軽く握るように動かすと、酸に溶かされたかのように腐食した欠片が、ぼろぼろとシーツの上に零れ落ちた]
止めないと……誰が持っているにしても。
[手袋を戻し、立ち上がる]
[再びカップに口をつけていたから、返事の代わりに目で頷いて]
とても美味しいですよ。
それに…温かい。
[暗雲による気温の低下は、静かに建物の中にも伝わっていく。
カップを両手で包んだ青年は、余る指先を組む様にして遊ばせた]
大地殿はどちらにいらっしゃるのでしょう。
窺いたい事があるのですが。私も、影輝殿も。
― 東殿・回廊 ―
< 海に触れる前の記憶を遡り、大地の竜が仔竜を運んだ場所を思い起こしながら進む。
所々に空いた小さな穴、嵐の過ぎた痕に焔の軌跡、大小差はあれど惨劇としか言い様のない傷跡を残す宮殿。
天聖のものが見れば嘆きたくなるだろう。残された彼らは、それでも忠実に職務をこなしているようだった >
―― 私室 ――
[近付こうとする機械竜に、また右手を振る]
だめだ、お前は…
[機械竜は構わずその肩に止まった。青い瞳が明滅する。まだ焔の色のルビーを額に飾ったままのその頭を軽く撫でて苦笑]
ダーヴの気性まで移ったんじゃないか?お前の役目は子守りじゃないだろうに。
[言いながらも、無理に退けようとはせず、そのまま部屋を出た]
さて…どこから当たるかな…
[ゆっくりと歩き出す。手袋の下のメタルの腕は、今も少しずつ、腐食を進めている**]
アーベル殿のいれてくださったものの方が、美味しかったと思いますけれど。
[不思議そうに首を傾げ]
老君ですか?
そのうちお見えになるのでは……?
……まだ。
少し痛むかしらねぃ。
[ゆっくりと。
ナターリエが寝床から起き上がった]
でも、いつまでも寝ているわけにはいかないかな。
昨日のこと、布に水が染み込むが如く、少しずつ、思い出してきたからぁ。
[鋭い目で。
ナターリエが扉を開ける]
けど。『力ある剣』を所持しているもの。
私一人では、到底対処できない。
ならば、もう一つの『力ある剣』を所持している、大地の元へ。
[回廊に出て左右を見渡し、そして、ザムエルの姿を求めて歩き出した]
─東殿・回廊─
[本来の持ち主─仮契約ではあるが─であるエルザの下から離れた剣の共鳴は以前より弱く感じられ。それを漏らすことなく辿れるよう、右手で左手首の腕輪を握り、強く念ず。気配を辿る様相は彷徨っているようにも見えたか]
……問題は、誰が持って居るか、じゃな。
[片割れの剣を持ちし者。現状、その者が干渉されし者の可能性が高い。こちらの残る面々の誰が持ち得るのか。己の剣について探っていたものであれば一人心当たりがある。しかし奴が持っているとも限らない。剣の気配を辿りながら、誰が持ち得るのか考えながら、その足は回廊を進む]
……。
[いつものナターリエらしくもない、真剣な表情で回廊を歩く。
探知と言うほど正確な探知を出来るわけではないが、先日暴走した末に、通路いっぱいに水を撒き散らしたことが功を奏して、大地の居場所はなんとなく掴むことが出来た。
やがて―――]
―――大地の。
[ナターリエの目はザムエルの姿を捉えることになった]
[声をかけられ、ハッとした表情となる。声のする方を見れば己と同じように真剣な表情をしたナターリエの姿]
……如何した。
先日の暴走からは解き放たれたようじゃな。
[瞳を細めナターリエを見つめる。流水の気配はするが、天聖の気配はしない。剣の持ち主ではないことだけは理解した]
[ザムエルの言葉には、深々と頭を下げ]
はい。
お恥ずかしいところをお見せいたしました。
[そして、話の核心へと触れる]
……まずは単刀直入に切り出させていただきましょうか。
もう一つの『力ある剣』の所有者を、貴方は知っていますね?
それが、誰だったのかを、お聞かせいただきたい。
何故なら、私は、今『力ある剣』を持っているものに違和感を感じていますから。
[知っているかどうかは、半分賭けに近いものがあった。
それでも、ナターリエは、ザムエルは知っているという確信に近いものを感じている]
[頭を下げるナターリエには、いや、と短く返し。核心をついた言葉を聞くと僅か息を飲む。こやつも気付いているのか、と警戒の色を最初は浮かべたが、先日の剣についての知識、更には腕輪が持つ属が増大せし時を思い出す。目の前の人物ならば気付いてもおかしくはないやもしれぬ、そう思い短く息を吐いた。仔なれば言い包めも出来ようが、下手な嘘は逆に怪しまれることだろう。今剣を持つ者に対し違和感を感じると聞き、口を開くことを決意す]
……ああ、知って居る。
彼の剣、聖魔剣を所持していたのは……エルザじゃ。
エルザが無限の鎖に囚われし時、共にここから結界内へと移動しておるはずなのじゃが…。
[紡がれし言葉はナターリエに届くだけの小さなもの。それは他には隠すつもりで言ったのか、心労による疲れから小さくなっただけのことだったのか]
[ザムエルからの言葉を聴くと、ナターリエは小さく頷いた]
やはり……。
しかし、これで、線は繋がった。
『力ある剣』はオトフリートが所持しています。
陽光、天聖。……焔。
対の属性。『力ある剣』……焔が消えたことと、流水の悲しみ。
今までの異変は……オトフリートから紡がれているのは、ほぼ間違いなくなりました。
即ち。
『揺らされていたもの』は―――オトフリート。
[きっぱりとナターリエは断言した]
何じゃと…!?
[紡がれし名は己も交友のある者。何度となくその知を語り合いし者の名。驚きに瞳を丸くする]
オトフリートが揺らされし者…。
今、聖魔剣を持つはあやつか……。
[考え込むようにし、右手で顎髭を撫でる]
……あやつが揺らされて居ると言うのならば、抑えねばなるまい。
剣を渡したままには出来ぬ。
「揺らすもの」からの干渉、それを食い止めるが今の儂のなすべきこと。
…お主が暴走せしは、それらが重なりてのことじゃったか。
[断言するナターリエに迷い、偽りが見えず。その言葉は信ずるに値するものであった]
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