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剣の力の相殺か……確かに、それは出来るやもしれん。
そうなれば協力する人数は必要じゃな。
ダーヴィッドの調べによれば、結界に作用して居るのは少なくとも二人。
もう少し人数は欲しい。
[ナターリエの言葉に同意し頷く。しかし続く言葉には眉根を寄せることになろうか]
……ブリジットがオトフリートとクレメンスと共に居ったと?
クレメンスは、おそらくはオトフリートと同類……揺らされている可能性はあると思う。
事あるごとに儂の剣について探って来て居るからのぅ。
その探りの後に……儂は奴らの力を向けられておる。
儂が剣を持っていることはあちらには明白じゃ。
その二人と共に居ったとなると……懸念は拭えんな。
[おそらくナターリエの危惧と同じものを想像しているだろうか。他に居ないかと聞かれると]
信頼し、儂が剣を持つことを明かしたティルはやつらに封じられた。
他と言えば……そうじゃ、エーリッヒはどうじゃろうか?
―結界内空き部屋―
[目が覚めるまでに随分時間がかかったのは、完全に回復するまでに安易に動いてしまったからか。
ずるり、身を起こせばかけられていた毛布がずれた。]
……。
[流石に流し込まれた力の残り気は良くわかって。
卵姫には感謝の念を――すぐには抱けなかった。
今見た夢に気をとられて。]
―結界内空き部屋―
[まるで内側を見透かし忘れるなとでも言うように。
三度見るのは過去の夢。世界の崩壊と、交わした約束、そしてそれが裏切られた瞬間。
ちり、と周囲を琥珀が舞う。
琥珀を、睨んだ。
瞳は暗い。いつかオティーリエに見せた、あの闇の断片を内に抱いて。]
ええっと…あ、そうだ。
オトフリートさんを見かけませんでしたか?
[誤摩化すように問いかけたのが、闇竜のことなのは、先に二人が一緒に居たのを見かけていたため]
「揺らされているもの」は二人、ねぃ。
[それに関しては初耳だった]
大地のが言うことが確かなら、闇と生命、ということかしらぁ。
だとすると、余計に氷は危険ねぃ。
下手をすると、その二人に協力している可能性まであるわぁ。
なら他は……。
[ゆるりと、今、この場に残っている属性を思い出す]
精神。影輝。翠樹。機鋼。
影は、昨日のカケラのことがあるので信用しきれない。
翠は、まだ子供。
後は、精神と、機鋼かしらねぃ。
……そうねぃ。大地のが言うとおり、昨日あの場に一緒にいたエーリッヒに協力してもらうほうがいいかしらぁ。
……いえ。
< 話題を逸らす問いかけに首を傾げかけたが、否定のため横に振る >
それより、身体は大丈夫ですか。
ダーヴが消えたとか……
敵わなかったんですか?
< 視線をずらし、肩の機械竜を見詰めた >
―― 廊下 ――
そうですか。
あー、うん、そうなんです。
[返された問いかけには苦笑する]
向こうの方が強くて……それに、初めて感じる力だったので、対処し切れませんでした。
[一旦、言葉を切って、影竜を見つめる。それは一つの賭けかもしれなかった]
ダーヴは「力ある剣」を持つ者に、結界に送られたみたいです。
―結界内空き部屋―
[何度か深く呼吸を繰り返せば、夢の残滓はゆっくりと頭から消えていく。
はー、と。
最後に息を吐きなおしてから、ようやく立ち上がる。
先程まであった内側の闇は、今はいくらか失せていた。
それからぽつり、呟く一言。]
……えーと。
何しにきたんだっけ。
[寝過ぎと夢のおかげで、ど忘れているらしい。]
なんか運んだ気はするんだが。
なんだっけなー?
[そして思い出そうとするように、部屋を出てふらり歩いて。]
―→廊下―
可能性はある。
[挙げられる言葉に頷きを返し。翠樹の言葉に軽く眉を顰める]
…ベアトリーチェ殿は、仔とは言え、何かに突き動かされている節がある。
儂に、剣について訊ねて来たことがあった。
それが干渉されたが故のものなのか、誰かに嗾けられたものなのかまでは分からぬが。
ただ、「教えてもらった」と申しておった。
知らぬうちに協力させられている可能性は否めん。
[持ち得る情報をナターリエへと明け渡し。エーリッヒに協力を、と言う言葉に頷き返した]
善は急げじゃ。
エーリッヒを探すとしよう。
……「力ある剣」を?
なんで、剣がダーヴを。
< 繰り返し、視線を戻し機鋼の仔竜を見返す。
見開いた黒。沈黙を数秒、落とした >
あるいは、暴走している……?
なら、あの欠片の事も理由がつくかもしれないけど。
< 手を口許に沿え、半ば独り言な小さな声を漏らす >
……そう言えば、子供のほうが素直に聞く分、干渉される可能性は高いかもねぃ。
ごめん。ちょいと、思考外だったわぁ。
[何やら、意外に子供には甘いようで]
よし。
やるべきことは決まったのなら、行動へ移しましょうか。
幸い、床に水たまりがちょこちょこ出来ているので、私の役立たない探知でも、ある程度は誰がどこにいるのかの場所は分かるのよ。
……えーと。機鋼のは、と。
……?
[探知して。
ナターリエが後ろを振り返った]
仕方あるまいに、通常ならそう考えるも自然。
今が通常とはかけ離れた状態にあるだけじゃ。
[事実通常あり得る状態ではない。謝る様子には気にするなと告げて]
ほぅ、それはまた好都合じゃな。
無闇に探し回るより効率が良い。
[感嘆するような声を上げ、その探知の結果を待つ。その様子を眺めていると、ナターリエは後ろを振り向いた]
ぬ?
どうした?
[つられそちらへと視線を向ける]
……
[影竜の反応は、剣を持つ者とは思えなかった]
暴走、に近いかもしれません。悲しみ、怒り、それに近い感情のようなものを剣の力から感じました。逆流するほどの。
[その逆流が、逆しまの呪に近いものとなって、今己の左腕を腐らせているのだと、感じていた]
……。
[ナターリエが、口に人差し指を添えて―――何故か、妙に艶かしい―――ゆっくりと、エーリッヒのそばへと移動する。
……はたしてそこには、怪しいと思っていた人物ノーラと話しているエーリッヒの姿]
(……どう、とればいいのかしらぁ。
まずは、様子見ねぃ)
―廊下―
[思い出すように足を動かせば、何か奥の方で名を呼ばれた気がしたので目をこらして。
誰だか気付けば、悪意もなければ反省も全くない、何時ものそのままに片手をあげた。]
あ。
よぅ?
[瞬間。]
[ナターリエの仕草は枯れた老竜にはどう映ったであろうか。ひとまず声を出すなと言うその行動に口を噤み。こそりと覗き込めばそこにはエーリッヒとノーラの姿。
ナターリエが言わんとすることを察し、まずは様子をみることに]
それほど、厭うことがあったんでしょうか。
< 後ろから声をかけたのだから、此方を窺う気配は機鋼の仔竜より悟り易いか。しかしまるで気付いていない素振りで、言葉を続ける >
剣の一は影輝の属を持つ。
そして強き力ほど、揺らげば及ぼす影響も強い。
暴走の前兆が混沌のかけらを変貌させたのかもしれないですね。
この場の均衡は崩れている。
< 後の科白にも、無関係とは思えないというように微か首を振った >
[然程高くもない椅子から飛び降りた仔は、難無く着地を果した。
腰を屈め伸ばされた腕へ常の様に絡みつく。]
…ブリジット、つかれちゃったのかな。
[未だ眠ったままの氷竜殿の顔を覗きこんで、仔は私へと視線を向ける。
かも知れぬ、幼子を抱えたまま果てには昨夜の様子は均衡が失われし所為か
体力の消耗は著しいものに他ならなかったに相違なかろう。]
つかれたら、なんだっけ。
…おみず?
あと、ととさまは、ひなたぼっこでのんびりするといいよって。
[――それは少々翠樹故の影響もあるかも知れぬが。
尤も、雨は上がれども陽が差すには空は程遠い。]
―― 廊下 ――
そうでしょうか?
でも、あの時、ダーヴを送った剣には影輝の気配は無かった…
[感じたのは、天聖と流水、そして得体の知れぬ力。或いはそれが揺らすものの力の一部だったのか?]
或いは、対の剣が、揺らされた者に渡ったことで、もう一方の剣もバランスを崩している?
うっわあ…まじでやばそ…
[また怖い考えに至ってしまって、頭を抱える]
[ノーラの言葉に小さく、ザムエルにのみ届く言葉で囁く]
……なるほどねぃ。
昨日の影の如き、混沌のカケラは、貴方のほうの剣の力の暴走ということかしらぁ。
陽光が消え、月が揺らされていることにより、影がバランスを崩した末の結果、ということも考えられるのかしらねぃ。
ただ、私達が聞いているときにそのような話題になったのが出来すぎ、ということが少しだけ気にかかるかしらねぃ。
[少しだけ思案して、後のエーリッヒの言葉を聞けば]
ふむ。
機鋼のは冷静なようですねぃ。
それは、わからないけど。
実を言えば、影輝の気配は感じていました。
……ザムエルさんから。
確証がなく話す機会も逃していたから、手を出せずにいたけど。
どちらにしても暴走の危険性があるのなら、捨て置けません。
ひとまず話を聞いてみましょう。
< 悩むエーリッヒとは対照的に、顔を上げた >
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