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青年 アーベルが「時間を進める」を選択しました。
[涙はないけれど
うつむいていた少女は、目をあける。
黒いまなざしはベアトリーチェへと向いた。
衝撃からか、いまは記憶の混乱で思い出せない。
ただ聞こえる波の音がこわかったから、耳をおさえていた]
[たのしげに踊る子を見て、
黒はただその姿をうつす。
子の笑い声。
しっかり耳を押さえていた両手が、少し力をなくし、色を取り戻す]
白練の歌子 エルザが「時間を進める」を選択しました。
[アーベルに頷きを返し。
大事そうに取り出されたハンカチと、それに包まれた2本の絵筆。
少し見つめて]
…ありがとうございます。
[ここに来て初めて、仄かに笑みを見せた。
受け取ろうと両手を伸ばす]
― 広場 ―
[彼が「目を覚ます」前に、
彼女はその場から失せて。
それから、光景のひとつひとつを見ていた。
断片的な、絵物語の中の話のように。
けれど、最後まで見ることはなかった。
だから、結末は知らない]
…ふん。
ふん、ばぁか。
[子供染みた罵倒は自身に向けたものだ。
泉の傍に座り込み、「空」を仰ぐ]
たとえ、空を行く事が出来なくても、か・・・
[ゆっくりと目を閉じる]
そうだな・・・
[同じ空に夢をかけても、そしてそれが儚い願いでも・・・・それだけが、きっと全てではなく。だから、絶望を抱えても、終わりを招くことは出来ず]
[じいい、とミハエルを、赤くなった目で見つめる。
それから、ゆっくりと。
一本ずつ、剥がす様に、手をはなした。
不安げにミハエルを、
首をめぐらせてアーベルを、ユリアンを見る。]
[一本一本外れる指を黙って待つ。
やがて戻った絵筆を、一度両手で抱くようにして。
見つめる視線には、微笑を浮かべたまま。
片手をエルザの頭に乗せて、撫でるように]
[黒が茶に変わってゆくのを、見ることはできただろうか?
楽しそうな子に、やがて手は外れ、
少女の口元に、
やわらかいほほえみが浮かんだのも――*]
…ん…
[不安げなエルザに微笑と軽い頷きを返して
絵筆がミハエルの手に渡ったのを見届けた後]
…ところで、それでどうやって戻すんだ?
速くしたほうがいいかも
[ギュンターとか、ベアトリーチェとか。
しかしやりかたについては当然でもあるが、絵師…ミハエルに丸投げだった]
[ユリアンの言葉に、こくり、頷き
ミハエルの手が頭に乗れば目を細めて
嬉しそうに、わらった。]
うん。
言うわ、いうわ?
[何時もの笑み、何時もの口ぶり。
ふわりと髪を揺らし、口を開くと。
小さく口の中で、歌を紡ぎ出した。]
[望んだのは空にゆくことではなかった。
空を望んだのは、人には必要なものだと聞いていたから。
それだけで。
その先に何があったとしても、よかった。
ただ。
みんなで、笑っているときが、少しでも長く在れたら。
そう、思っていた]
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