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[弟と、何でも屋の女性の会話には口を挟まない。
翠の双眸も、その姿を映すだけ。
ハンスの視線を受けても、小首を傾げて微笑むばかりだった。
一時見せた、眼を細めた横顔は寂しげではあったけれど]
―フーゴーの宿―
[こくり。
口に含んでいた水を嚥下して、滑らかな声へと視線を移す。
主の姿は見えず、人形があるだけ]
……あら。
よく、わかったのね。
[少しばかり暢気な呟きを零して、口元に手を添えた]
関わらん方が、って、今さら。
そんな簡単に足洗う、で済むもんでもねーだろ。
その口ぶりなら、色々知ってんじゃねぇの?
[隻眼の男に肩を竦めて
また、扉を蹴るベティの様子を心配げに見やる。]
…オレも子供だ。
知ろうとした後の責任が持てないから、か?
子供だと言われるのが嫌なら変わろうとすれば良い。
子供のまま、特権である甘えに逃げるのは自由だが、その状態で何も知らされないと言うのを僻むのはお門違いだぜ。
[露天商とは対照的に隻眸は水盤を見つめたまま]
[再び彼女が扉を蹴ろうとも視線は向けない]
残念ながらてめぇはまだ調べて居ない。
その様子だと余罪はいくらでも出てきそうだな。
簡単じゃ済まないからやるんだろ。
責任もって関わりを絶って、償うんだ。
……そこの人と同じ意見よ。癪だけれど
簡単に済むかどうかなんて、やってみなくちゃわかんないわ。
ブンタさんだって力になってくれるでしょ。
……もっとも、ここから出られたらって前提だけど。犯人ってきっと周到なんでしょ。修道士さんやそこの人でも敵わないくらいに。
何が目的なのかしらね。
[扉に向かって三発ほど蹴りを放つ]
知ってるか?
人の信念ってもんは何しでかすか分からんもんなんだぜ。
[露天商の言葉に楽しげに口端を持ち上げた]
[事件を終わらすと心に決めた人間が居る]
[それに賛同する協力者も居る]
[己は神は信じぬが]
[そんな人間達を信じている]
責任なんて問題じゃないわ。
……迷惑をかけたくないだけ。
[水盤へ視線を投げ]
……ふうん、信念ねえ。
聞いたら教えてくれるのかしら?ううん。違うわね。
知ってること、教えてください……払える対価は持ち合わせてないけど。
…調べる?
[隻眼の男が出来る事を知らない少女は、
きょとん、とした顔で後ろを見て。
それからふるふると頭を横に振った。]
関わってるあんたが言ったって説得力ねぇ!
[イーッち歯を剥いてから、
それでもベティの声にはやっぱり困ったように眉を下げて、顔を歪めて笑った]
…ん、――ん。
「あの人」の目的はオレも知らねぇなぁ。
そうかい。
[返答は短かった]
[教えてくれと言う露天商に、ようやく隻眸だけを向けて]
…何を知りたいのかに寄るな。
俺では答えようがないものの場合は答えられん。
対価は後払いにしてやるさ。
ここから出る方法……は無理ね。この街で何が起こってるのか。漠然としすぎかしら。
あんたがここへ来た目的。あんたのバックにいる連中と、自衛団の連中との関係。あんたや修道士さんを捕らえた者は誰なのか……結局、黒幕は誰なのか。
……後、アタシたちがこれからどうなるのか、って所かしら。安くしておいてね。
[カヤへと振り返り]
……あの人?
[子供の疑問には答えない]
[それ以上教えてやる義理も無いために]
説得力が無くても、『忠告』は頭の隅に置いておけ。
足を洗わねぇと言うなら、今回の事件が終わった後、お前は表の人間には全く信用を得られんことになる。
裏でも今回の失敗のせいで当てにされなくなる。
…表の世界なら、責任を取る、足を洗うことで信用回復が出来る可能性が残ってる。
お前の心がけ次第だがな。
[起きていたのか眠っていたのか。
蹴る音にも、制止の声にも然程の反応を返さなかった。
それがふと瞼を開く。
相変わらずその場からは動こうとせずに、短く息を吐いた]
…出るつもりか。
[誰と名指しもせず、眼も向けず、呟くように言う]
[子供は、隻眼の言葉には睨む半眼を崩さず。
ふい、と顔をそむけてから少し俯いて、
それから視線を修道士の方へと、向けた。]
捕まってるあんただっていっしょじゃん。
[小さな呟き
少女は男が裏の人間か表の人間か知らないから
ちゃんと声にだすことはできなくて。]
何が起こってるかは、身をもって体験してるように失踪事件が起きてる。
1・2年くらい前からこの街では住人・旅人を問わず人が消える現象が起きていた。
尤も然程頻繁にでは無かったようだが。
俺がここに来たのはその事件を調べて記事にするため。
バックっつっても、編集局しかねぇぞ。
うざってぇ婆なら居るが。
自衛団は利害の一致のビジネス対象でしかない。
俺はそこの修道士に襲われて捕まった。
修道士は大方、俺の連絡を受けたアーベルから自衛団に話が伝わって連行されたんだろう。
黒幕はこれから調べる。
これからどうなるかは……アーベル達次第だな。
連中がしくじれば、多分表の世には戻れねぇ。
こんなところか?
対価は三千五百年前の壺で良いぞ。
[答えられるだけのことは答え]
[最後の対価には冗談交じりの答えを返しておいた]
……あんた、いいように利用されてただけなんじゃないの?
その人って奴に。
[カヤを見て溜息を漏らした後、ヴィリーの言葉を聞く]
失踪事件……眉唾物の噂だけは耳にしていたけど。
随分と物好きな……え、修道士さんに?だってあんたたち、友達なんでしょう?
[ちょうど呟きが聞こえると、声の主へ視線を投げた]
[友達]
[その言葉に鼻で笑う]
俺は利用するために呼ばれたらしい。
ダチの縁は切った。
ダチである理由も無くなってたしな。
[隻眸は水盤を見つめたまま]
[感情の籠らない口調ではっきりと告げた]
腑に落ちないわね。連行された人がどうして失踪者と同じ場所に……?
アーベルたち次第、ってことは、彼は事件に関わってはいないってことかしら。
友達であることの理由……何か悲しいわね。
[自問するように呟くと、カヤとローザに視線を投げた]
ま、いいわ。ありがとう……特注で四千年前の壷を手に入れて置くわ。文様の勉強もして。
[視線を水盤へと移動させる]
[目を逸らさず、現実と向き合う決心はついたようだ]
それこそこの街の上層部に事件に関わってる人間が居る証拠だ。
目の届くところに全て置いておけば後で一括して処分が出来るからな。
[その場に居るにも関わらず、物騒な言葉を口にする]
あいつを調べたわけじゃねぇが、事件に対するあいつの信念は本物だ。
エリザベートは調べてシロと出たし、ハンスもお前が消えてからの必死さは尋常じゃ無かった。
何より極力関わろうとしなかった俺に協力を求めて来たしな。
筋肉馬鹿は何も考え無さ過ぎだ。
連中が事件の当事者ってことはまずあり得ねぇ。
それと、調べてクロが出たのはそこの修道士だぜ。
[友達である理由に関しては触れなかった]
[礼と共に告げられた対価については]
期待しねぇで待っとく。
[くつりと笑いを漏らしながら告げた]
[アーニャから聞こえたゲルダの声に対する4者4様の反応にくすると笑いが漏れ]
……男性陣は女性陣を見習って、もう少し余裕を持った方がいいと思いますよ
さて、お姉さんの提案も魅力的なんですけど
ノコノコ出て行って捕まるわけにはいきませんしね
そちらから来ていただいても構わないですかね?
…………ちなみに
お断りの場合には、誠に遺憾ながら相応の対応を取らざるを得ない、とだけ申し上げておきますね
[アーニャ越しの会話の声はあくまで暢気]
そういうことらしい。
…とっとと代わりを探すといいさ。
[元の友人については、自分から言うことはない。
男の言葉を継ぎ、後半はその当人に向けたものか、口許だけで薄く笑った]
あ、オルゴールとかどうかしら!
…ふあ、夢だた。
[一声と共にがばっと飛び起き、頭を掻く。]
なんか今大事な話してたかしら…。
[お口チャック!と、口を閉じて水盤を眺める]
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