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[グッと右手を握り締める。
見つけられなかったのは間違いない事実]
どうして、愉しめる…。
[もう人狼に効くだろう武器は手の内に無い。ヴィリーの邪魔をしてはいけないと、声はひそめて呟く。
鈴の音とツィンの唸り声に、僅か視線が下を向く]
[フーゴーに向けるのは、くっきりとした笑み]
何度か僕は言った筈だよ?
少なくとも、貴方には。
ヘルムート・フォン・ティークは作家だと。
演技は三流でも。
創り上げる物語次第では、それなりに成る。
男としてのヘルムートも、女としてのルーミィも。
狼としてのセザーリオも。
作家で在ることだけは確かなのさ。
雑貨屋 クロエが「時間を進める」を選択しました。
雑貨屋 クロエが「時間を進める」を取り消しました。
作家故に創り上げることが出来、創り上げた物語を周囲に読ませ錯覚に陥らせる、と。
要はそう言うことか。
それで、今になって化けの皮を剥がしたのはどう言う理由からかね。
単に見つからないのが詰まらないと言う理由からか?
それとも……物語を終わらせたいのか。
物語を創り上げるのに飽きたのか。
[見つけないからものがたりはおわらない、と。ヘルムートはそう言った。理由はそこにあるのかと、ようやく視線を上げヘルムートを見据える]
[場違いとも言える呟きには、低い声で哂った]
そんなふうに。
貴方は優しいけれど、決して強くない。
だから、とことんまで思いつめてくれそうで、ずっと喰らわずに残していたんだ。
[さらりと告げる言の葉]
[低く唸るぶち猫には淡白な視線を向けるだけ]
[ルーミィとして接していた時にも]
[結局一度もツィンに触ることはなかった]
[切り替わる様にも見える人格は]
[決して何れが主人格というわけでもなく]
[舞台の上で演じ分けられる役柄に似て、同一の意識の元に在る]
やさしいのね。
[ルーミィの雰囲気でヴィリーに与える言葉も、ゆえに本心から]
愉しくなければ、生きている意味が無いよ。
[低い響きで告げる其れもまた本心]
[最後の問いかけに返るのは、先程と同じ沈黙という肯定]
[己の愉悦の為に、残したと。
そう告げる目の前の存在に、ぎり…と、知らず歯をかみ締めて。]
其れだけの為に、ゲルダを。
………お前、だけは。
[許さない。と、低く呟き。]
[フーゴーの問いには、また笑みを]
[途切れぬ笑みは、いっそ狂いきった者の証のようでも有る]
嗚呼、そうか。
もう一つ、理由になりそうな答えが有ったね。
[崩れ落ちたユリアンの身体を拾い上げる]
[まだ幾分熱を持つ、柔らかい其れ]
[背中からは、今もなお紅が落ちる]
――……こうすると、愉しくなりそうだから。
[其れは間違いなく、死者を冒涜する行為]
[此方へと向いた銀の短剣を目掛け、投げつけて]
[不意をつき、窓を破って、外へと駆け出していく]
[その姿は、白金の毛並みをした――狼]
[もしも其の時に誰かが狼を狙ったなら当たったかもしれず]
[そうでなくとも、窓の欠片で足を切ったのかもしれず]
[白金の狼の駆ける地面には]
[僅かな紅が残っていた]
[其れは真珠の眠る*海へと向かう道*――……]
[問いに肯定するような途切れぬ笑みに顔を顰める。もう一つの理由があると言いながら動くヘルムートを見やり、何を、と思った瞬間]
っ!?
ちぃっ!!
[ヘルムートが持ち上げたユリアンの身体がヴィリーへと投げられる。それに気を取られた隙にヘルムートは窓を突き破り外へ。刹那見えたのは、白銀の毛並み]
なに、を。
……ーっ…しまっ…!
[短剣を向け間合いを測っていた所に、いきなりユリアンの身体を投げつけられて気を逸らしてしまい。
その隙をついて完全な狼の姿へと変わったヘルムートが窓から逃げていくのを見た。
せめて傷だけでも、とその姿に短剣を投げたが、それは彼に当たっただろうか。]
[低い哂い声と、向けられた言葉。
何をどう言えばいいのか、わからなくて、立ち尽くしていた。
やがて場は動き──白金の煌めきは、窓から外へ]
……ルーミィ、さん。
[それでも、口をつくのはこの呼び名で。
一度に起きた出来事への困惑と、力の行使による疲労感に、小さく息を吐いた]
/*
と、いうか。
残された、理由。
……赤崖でも、似たようなことを言われてた気がするんだけど……赤ログで(とおくみた。
ヴィリー、無事かっ。
[追いかけるのは困難か、と思い先にヴィリーの安否を確かめる]
ここで逃がすわけには行かねぇな…。
[行くか?と視線はヴィリーへ]
[ヘルムート。ルーミィ。セザーリオ。
鮮やかに入れ替わる人格に翻弄され、どうにも反応が遅れる。
そしてそのどれもが、作られたものには見えなかった]
っっ。
[ユリアンの遺体を投げつけ、窓から飛び出してゆく影。
白金の獣が海へと駆けてゆくのも、見送ることしか出来なかった]
…大丈夫か?
俺は、大丈夫だ。
[フーゴーから安否を問われ、頷き。視線を受けて、また頷いた。]
俺は、奴を止める。
これ以上、殺させは、しない。
アーベル、お前は、クロエを。
[投げた銀剣は、既にユリアンの血に塗れていた為にヘルムートに当たったのかどうかは解らなくて。
床に落ちたそれを拾い、アーベルの方を向いてクロエを守れ、と言外に言い放ち。
ヘルムートの走り去っていった方へと*駆け出した*]
聞くまでも無かったな。
[ヴィリーの返答に頷き返して。アーベルにクロエを任せる様子を一度眺めやる。それからウェンデルにも視線を向けると、「来るかどうかは好きにしろ」と告げフーゴーもヴィリーの後を追う]
[忌み嫌った結社の一員としての責務を全うする*ために*]
あ……うん。
[振り返りながら、向けられた問い。
小さく頷いた]
いっぺんに色々起きて、少し、びっくりしただけ。
……大丈夫。
だから、ツィンも。
そんな声、あげない。
[それから、警戒を解き、不安げな声を上げるぶち猫に向けてこんな言葉を投げかけた]
ああ。
[言外に言われたのは、先にも言われたこと。
走り出すヴィリーの背に返し頷いた]
良かった。
[大丈夫というクロエに僅か表情を緩める。
それから放り投げられたユリアンの遺体に近づき。
形だけもカヤの横へと臥させた]
[駆け出して行くヴィリーとフーゴーを見送り、それから。
カヤと、それからユリアンの遺体を見やりつつ、ぶち猫を抱え上げる]
……ウチらも、行かないと、だよね。
[行った所で、自分には、何もできないけれど、でも]
終わりに、しないと。
[その決意は、揺るがないから]
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