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―少し前のこと―
[奏に向かい、返事を返していれば、突如聞こえる笑い声。不審に思いそちらを向けば、黒い視線。
今までとは違う様子の奏の姿に、背筋が凍る。
黒い影が、あっという間に動く。懐のナイフを出そうとしたが、それすらかなわずに。
腹に走る鈍痛に、バランスを崩して。
痛い。
視界が赤に染まる。
最後に浮かんだのは、誰の姿だっただろうか。
そのまま、意識は闇の中へ―――]
[ふと気がつけば。そこはどこだか分からない世界。
周りを見渡せば、見覚えのある人たちの朧げな姿に]
死んじゃった…んだねえ…
[ぽつり]
……。
[現れた御霊。
一時期は殺そうかとも考えた相手。
呟きにかける言葉は、思いつかない。
霊能者、対の存在。
もっと早く知れれば、違った道もあっただろうか。
『もしも』の世界は好きではないから。
深く、考えないようにするが。]
…そうだった。
今回の引き金を引いたのは、俺だ。
[ゆっくりと顔を上げる]
結末を。
[混じりあった本来の意識で、見届けるために]
[あっさりとした肯定。
唇を噛んだまま、眉根が寄る]
……綾姉を殺したのも貴方?
そうじゃなくとも、やることは一つだけど……っ!?
[睨むようにしていたが、目に入ったものに驚きの色を見せた]
あ、貴方、本当に、Kana!?
[七重の背越しに見える奏の姿]
HALはどこっ!
[出たのは悲壮な声]
あなたは…
私の…仲間の…、友達の…、
HALじゃないっ!
[かけた言葉は拒絶の言葉]
[返された答え。
そこに紡がれた名を聞いて、僕は思わず噴出した。]
狼がセンセーと七重姉?
もしそれが本当だったら、僕って真っ先に食われてない?
だって僕は二人を疑えない。格好の餌食だ。
[もし僕が逆の立場なら。迷わず真っ先に狙うだろう。
でも万が一それが本当だとしても、僕は二人を信じるけれどもね。]
でもryouが言っていることが本当なら。
どうして僕に疑問系で答えるのかな?
[最後の問いには答えは求めない。
たどり着いた先には、もう何度も見た光景と、
七重姉と対峙した――]
あれは、誰?
[誰に尋ねるわけでもなく呟いた先には血にまみれた姿が、そこに。
丁度服を脱いでいるらしく、見慣れた物を不本意に見てしまい]
……生き残っているのって、僕以外女性じゃなかった?
[参加者を思い起こしては男の数を改めて数えなおした。]
綾野はレン……Wenの仕業だよ。それについてはお門違いだぜ。
っておいおい、物騒だねぇ。
[ケタケタと哂っていたが、視線に気付きニマリと哂い]
Kanaだよ。少なくとも、この身体はな。
そもそも、奏だって一言だって言ってないだろ?
『ボクは女の子です』なんてこと。
本来のHAL?
…ああ、そういうことか。
[見えたナニカに衝撃を受けなかったといえば嘘になる。
その事実は教えられていなかったがために。
けれど幾つかの違和感や、記憶が、そんな納得の言葉も出させた]
仕掛けはよく分からないが。
[一方で、思考を呟くのは癖である以上に冷静でないからかもしれなかった。
続く悲痛なコエに、声に、唇を引き結ぶ]
[七重姉とryouから飛び出す異なる名前。
kana、それが彼女の名前だったらしい。
でも今はどう見ても彼女と呼べない姿だけれども。]
一体何が…起こってるの?
[ryouの否定する言葉が悲痛に木魂する。
僕は少し混乱する頭を整理しようと、
三人の会話に*耳を傾けた*]
…確かに言われてはないけど。
いつもの格好でてっきりそう思ってたわ。
[見ても赤面はしないけれど、呆気にはとられた。
けれどすぐに気を取り直して]
……そんなこと話に来たんじゃないわ。
アタシは終わらせに来たの。
貴方が最後の人狼なら……解ってるわよね?
[嗤う奏を見据え、言い放つ]
[涼の声にゆっくりと顔を向ける。そして、悲しそうな顔を浮かべると]
……そ、そんな。赤猫さん、ボクたち、友達だよ、ね。
…………ぷふ、ぷくくくく……
[だが、その言葉も直後の嘲り哂いで台無し。
いや、むしろそれを愉しんでいるというのが正解か。]
『HALは俺だ』って言ってるだろ?
ちなみに、お前の言う『HAL』だったら……
[そう言うと胸をトントンと親指で突付き、]
ここでおねんねしてるぜぇ。
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