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フォルカー君は、
もしかして、ハイムさんの……?
[ふと尋ねたのは、ゆでている時だったか。
紅茶の用意を頼みながら、そう尋ねる。
やがて茹で上がった芋は目の粗いマッシュポテト状になり、それを丸くフライパンで焼き上げ、積み重ねておいた。
塩コショウでさっぱりした味ではあるようだ]
……イレーネさんに、紅茶でももっていこうかと、思っていたんですが。
一緒に、行きます?
[ホットミルクは諦めて、温かい紅茶に蜂蜜を垂らす。
ほんわりと甘い香りになった]
―一階・廊下―
[やっぱり無理は良くない。体にも心にも。
当然の結果のようにぶっ倒れていたらしく、揺り起こしたのは昨日散々聞いた言葉だった。]
だれが、変態ぃ〜……
[まずそこを否定できるだけの余裕はあるらしい。]
って、ハシェ殿。
……いや……いいや、俺がやるよ。
死体を傷つけるなんて事、神様の事勉強してる奴があんまりやらない方がいいだろう?
[代わると言われればそう断った。理由あっての行為とはいえ、それも死者への冒涜と変わりないように思ったので。]
代わりに、また倒れたら後ろから蹴飛ばして起こしてくれ。
[そう頼んでから暫くして、ようやく腕は切り落とせた。その間何回叩き起こされたか、数えてはいなかった。多すぎて。]
―一階・廊下―
[傷口を隠すように上着を脱いでエーリッヒにかけてから、何とか背にのせた。ついでに腕も抱える。途中で自衛団に会えば渡すつもりで。
だいぶ冷えてきた体にふれれば、自然と背筋が寒くなった。]
とととりあえず、埋められる場所まで運んどく。エルザらの墓とは、反対の方にするつもりだ。
[やや震えながらそう言い外へと向かおうとして。イレーネの事を言われれば少し足を止めて考えた。]
あー…そうだな。そっちは任せていいか?できれば、フォルカーと一緒がいいのかな。一番仲がいいはずだし。
あ、あとここの血拭いといてくれると非常に有難いです。
[それだけ頼んで、外へと向かった。**]
―外―
[エーリッヒを背負い、こそこそ森の奥に隠すように置いてから、腕を持って一旦見張りの自衛団の所へと戻り獣の腕を渡した。]
副団長に報告頼む。人狼を見つけて、きっちり…処分したってな。
[渡された腕に驚いたり歓声をあげたり、よかったなとほっとしたように言う同僚らには、そうだなと曖昧に笑んで返した。嬉しくなさそうだなと問われれば。]
まぁ……鉱夫の爺さんに団長、エルザにローザ、ヘルミーネさんにオトフリートさんとか…けっこう死人が出たしな。
良かったとは思う。でも大喜びするのも何か違うというか。
[と呟けば、同僚らも死者を思ったか少しの間言葉をつぐんた。
ふと、フォルカーもこんな心境だったかなと、ようやく少し思えたりした。
それから、団員らと分かれて、掘るものを手にしてから再び森へと*入っていった。*]
─二階・自室─
────……ボク、は。
[不意に零れる声。静寂を保っていた空気を震わせる]
場を壊したいの。
人を喰べたいの。
殺してほしい。
死にたくない。
[矛盾した言葉。どちらも自分が望むもの。表層と深層にあった意識は散り散りになり。しかしそのために意識の入れ替わりが容易になる。交互に現れる意識は望みを交互に口にした]
抗いたい。
流れるままで良い。
[そこに望みを訊ねた者は居ただろうか。矛盾する言葉に何を思っただろうか]
喰べ続ければ
場は壊れる。
殺し続ければ
きっと殺してもらえる。
──ああ、なんだ。
やることは一つじゃないか。
[二つの意識の言葉はちぐはぐに繋がり合い、一つの結論を導き出す。少女に歪んだ笑みが浮かんだ]
─外・西側峡谷近辺─
[集会場の中から消えうせ、現れた場所。
吹き抜ける風の感触は伝わらないが、木々が僅かに揺れる様は酷く寒々として見えた]
……ん……。
[少し、考えて。
峡谷の向こう側、住み慣れた天文台をイメージしてみるが、移動する事はできず]
……死んだ今でも。
集会場からは、離れさせてもらえない……って事か。
[それが、何を意味するのか。
そう、遠くなく察する事はできた]
……まだ、続くんだな。
―外・墓標の傍―
……また?
[ハインリヒの呟きが聞こえれば、首をかしげた。
ちなみに現在は、居場所に迷った挙句、自分の墓標の上に体育座りしている。]
………ハインリヒさん。タバコのポイ捨ては、しちゃだめよー?
[聞こえないとわかっているが。
携帯灰皿を持っていなさそうな様子に首を傾げて、ぽつりとそんな事を呟くだろうか**]
[呟きは、雪を巻き上げる風に散る。
峡谷の傍、しばしぼんやりと空を見上げた]
……死んだら、すぐに何にもなくなるもんだと思ってただけに。
これはこれで、拍子抜けすると言うかなんと言うか。
[元より、死は身近なもの、と思っていた。
だから、それが訪れる事への恐れなどはなかった。
……生きる事を諦めていたわけではない、けれど。
他者よりも短い事は、避けられぬものと思っていたから。
だからこそ、延命のための治療よりも、望むままに生きる事を選んだ。
大切と思える場所で。
大切と思えるものたちの近くで。
ただ、刻を待とうと。
けれど]
……ままならないもん……だよな。
―一階:台所―
ユリにい、が?
[兄と慕う人物の名が出たのは予想外で、まなこを瞬かせた]
選ばれた、のかな。
自分に『力』があるって知って、誰かを護れるってわかって、嬉しいより、怖くて。
……実際、僕は、護るより傷つけてばっかりで。
人狼の事をおもうと、訳が、わからなくなる。
エーリッヒさんは、
……全部、“エーリッヒさん”だったんでしょうか。
人と話すのも、人を襲うのも、全部、自分の意志だったんでしょうか。
それとも、彼も、……同じ、だったのかな。
[エーリッヒの告白を、少年は聞いていなかった。
聞いていたとて、あの場では理解することは出来なかったろうが。
己の拳を緩く握り、開くことを、繰り返した]
[ウェンデルに指示を受ければ、言われるままに瓶から水を汲み取り、火を起こす]
仲、良いんですね。
別々のところに、住んでいるんですか。
[彼の語りを聞いているうち、表情は笑みに近いものになった。時おり相槌を打ち穏やかに話しを聞いていたが、よく知る姓を耳にして、沸かした湯をポットに注ぐ手も止まる]
……はい。
それだと、ご存知なのかな……
僕も、双子――の、はずでした。
生まれて来たのは、僕だけだったけれど。
[でも、と言葉を区切り、己の首許を示す。
常に付けている、赤石のブローチを。]
エーファは、ここにいる。
器も魂もないけれど、彼女の力は、……ここに。
[遠くを見つめる眼差しで静かに言い、少年は作業を再開した。
ウェンデルの料理が出来る頃には、紅茶も程よく蒸れたところだった。彼へと告げ、運ぶためのトレイを用意する。
問いかけには、俊巡ののちに首を振り、他の皆の様子を見に行くと、外に足を向けた。
行き先は昨日も訪れた、太陽の、月の光を一杯に受け取れる、開けた場所。そこに佇む人物を見つけて、ゆっくりと歩み寄る]
……紅茶と、食事の準備が出来ました。
ハシェさんが、して、下さって。
[そう声をかけたものの、二の句はなかなか継げない。
口の開閉を幾度かして、大きく息を吐き出した]
先日は、……すみませんでした。
[ようやっと言えたのは、それだけ。
まだ物言いたげにしながらも、相手の反応を*窺っていた*]
―回想 階段下―
いや、無理せんでいいが…あまりいい記憶でもない。
でも忘れたままってのも気味が悪いもんだからこれもまた半々なのかもな
[半端だ。と内心で呟きながらも]
理解できないほうがいい。いっそまるで関わらないほうがよかったんだろうけどな
[運が悪いこったというように肩を竦め休むのを勧めるのには断る。
それよりもすることがあるわけで、埋葬しよう。とハインリヒよりも先に来る前にイレーネが走り、自分の横を抜けて階段を駆け上っていく。
それを無言で、ただ目を細め注意深く見つめる姿は他のものたちには見えたのだろうか]
ああ。もちろん。このまんまにはしないよ。
夫婦は一心同体…ってか?
[若干茶化すようにいいながらユエをなでつけたところで、ダーヴィッドがエーリッヒを人狼だという言葉を聞く。
魂といっていた。ああ、死したものを見るものはそこだったのか。と思いながら]
そだね。終わった…やっとか
[本当は終わっていないのを知りながら安堵するようにハインリヒに追従する。
その後エーリッヒを差し出すか、埋葬するかの話題が出て、ウェンデルの意見を考慮したダーヴィッドの意見に賛成と控えめに主張しながら、外へ。
まずはオトフリートを埋葬しに向かった]
―→ 外(墓地)―
―集会所・個室―
[移動に関しての自覚は特に無く、ただ一刻も早くそこを離れたかっただけで。
女の意識は如何程漂っていたか。
やがては自らが使っていた部屋に辿り着いて、遠くで行われる埋葬を無言で眺めていた。
窓についた右手が拳を作る]
…莫迦だ。
[掠れた言葉は何に向けるか、既に涙は無い。
代わりに下唇を噛み締めた]
―墓標前―
[スコップを片手にハインリヒとともに土を掘る
心配そうにこちらをみるウェンデルには大丈夫だというように一つ頷いてみせる
ちなみにヘルミーネの墓標の隣に作るのはお互い示し合わせるでもないが当然のことでした。ハイムという名の話題には特に反応は示さなかったが、エーリッヒについての話題にはただぽつりと呟く]
完全な本心じゃなかったとは思う
[とはいえ、兄、姉と慕う二人。幼馴染の二人。それらがなくなったことを全て流せるでもない。それも全て本音で]
こっちは俺とハイン兄さんだけで大丈夫だから、ダーヴを頼む。
弱ってたら蹴飛ばしていいから
[そんなことをいってウェンデルを見送った]
[そして土を掘り、オトフリートを納め、土を被せ終えるとしばし瞑目をする。
ユエが先程まで鳴いていたが、その声も今はなく、ただ淋しそうにオトフリートが埋まっていた場所を見つめていて]
いや、ヘル姉に鍛えられてオト兄はがんばって婿修行中じゃない?
[あの人嫁はいらんといってたしというように。ハインリヒの冗談に乗った。じゃないともう色々やりきれない気持ちもしかとあるから]
結局、甲斐性がない野郎だらけだったってこったな。
[肩を竦め、タバコをすうハインリヒを横に思考は既に別に移っていた]
ん、俺、先に戻ってるな
[未だ紫煙を揺らしているハインリヒに短く言って、軽く手を振って、別れる
途中、トレイに紅茶と食事をもってきたフォルカーには話しかけられても、薄い反応しか返さずに、すれ違って]
安堵する人々を横に、血の宴はまだ終わらず、くだした結論は、終幕は如何に
[底冷えするように冷めてるとも、煮え焦げ付くように熱くもとれる声は風に乗って墓標近くにいる面々に聞こえるだろうか。だがそれに気づいたときには既に...は集会場へと入っていた]
─外・西側峡谷近辺─
……で、それはそれとして、だ。
[はあ、と。
零れるのは、ため息。
呼吸など当に関わりのない霊魂の状態でも、そんな仕種は生前と変わらない]
こうなった以上は、隠しといても仕方ないし。
……洗いざらい、吐いておいた方がいいんかね……。
[先に自分が消えるつもりだったから。
言わずに持って行こうと思っていた事は、結構、ある]
……かなり、今更な事も多いけど。
[そも、『隠していた事』は、身体と寿命に関わる事が大半だったから。
そんな考えも、片隅にはあるのだが]
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