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─道具屋 店内─
…あれ…?……痛…っ
[気が付くと、カウンターに寄りかかったまま床に座り込んでいて。
あのまま泣き疲れて眠ってしまったらしいと思い当たると、本当に子供みたいだと自嘲の笑みを零した。
ゆっくりとした動作で立ち上がると、足にズキズキとした痛みが走る。
みれば、ベッティが施してくれた手当ての下から血が滲んでいるのがわかった。]
…しまったな、せっかくベッティがしてくれたのに。
どうしよう、…いいや、これくらいなら自分で出来る。
[一瞬頭を過ぎった影を、頭を振って消して。
今顔をみたらきっと、自分は甘えてしまうだろうと解っていたから。
兄のことも彼のことも利用してしまうようなことは、したくなかった。]
─ユリアン宅─
[ユーディットの心配そうな表情に気付くと、少し表情を崩して「大丈夫」とだけ告げ。共にユリアンの家まで来ると、ユーディットが呼びかけるのに続けて自身も呼びかけた]
ユリアン、居るか?
[呼びかけに応じて出て来たユリアンの言葉を聞くと]
やっぱり来てたか。
……レナーテが消えたことは、知ってるか?
[ミハエルのことも気になったが、先にそれを問うた。その答え如何によってはミハエルの様子を察すことも可能かと考えて]
―ミハエルのおきる前のこと―
遺したものか。
ゲルダはパンを残してくれた。
ああ、ゲルダ、最後のパン、おいしかった。
[返るコエがないのだとしても、
話しかけることで少しでも届くならと]
ん、逆にいった人に何か残せたかも、問題か。
[少し考えてから]
もし、そっちにいくことがあったら、決めたことがある。
あと、ゲルダ、たぶん…好きだった。
─道具屋 店内─
…やらなきゃいけないこと、いっぱいだなぁ…。
[木苺はかろうじてカウンターに置かれているものの籠に入れたままで。
ユーディのビーズの代金もまだ出せていないし、何よりギュン爺から頼まれたものは未完成のままキャビネットの中。
いつまでも泣いてばかりいられないのに、それでも。]
…哀しいだけじゃないって、言ってたのに。
兄さんは、いつだって。
[笑っていろと、兄も。彼も。言っていたのに。]
…むずかしい、な。
[苦笑を形作ってみても、やっぱり涙も零れてしまった。]
─白雪亭─
[ばしゃばしゃと顔を洗うと、酷い顔も多少はマシにはなるか。
そうして、保存食の蜥蜴の干し肉を齧っていたが、]
…………やな予感。
[胸に去来する虫の知らせ。騒ぐ胸をギュッと押さえると、]
…………行かないと。もしかしたら……
[そう呟くと、白雪亭をあとにした。向かう先はユリアン宅。
確証はなかったが、勘はそちらへ行けと告げていた。]
―自宅―
[エーリッヒから聞いた名前に]
らしいな。
あと、ウェンのことはミハエルから聞いた。
[そう答えてから]
エーリ、後で少し話がしたい、いいか?
できれば、二人のほうがいいかもしれない。
― →道具屋―
[ユリアンに見送られ、外へ向かった。
気掛かりは2つ。
そのどちらにも場所の宛てはなく、真っ先に向かった道具屋。
2度のノックの後]
入るぞ。
[返事を待たずに扉を開けた]
─ユリアン宅─
[玄関先に出てきたユリアンの言葉。
来ている、という事にほっとするものの、同時に、姿を見せない事に少しだけ不安を募らせる]
……大丈夫、なのかな。
[零れた呟きは、問いというよりは半ば独り言]
─ユリアン宅─
………そうか。
[ユリアンの返答にはそれだけを呟き。話がしたいと聞けば]
分かった。
…ミハエルは奥か?
ユーディット、すまないけどミハエルの様子見て来てくれないか?
[ユリアンにミハエルの所在を問うた後、ユーディットに妹を頼もうと]
─ユリアン宅─
[家の主人の配慮に甘えて、たすかる。と拝んでから、
ベッドから下り、場所を尋ねて、とと。と奥に向かう。]
つめたっ
[ぱしゃっと顔に水をかけて
ぽたぽたと雫を落とし]
……うん。
[冴えてきたら醜態も意識の途切れる前のこともだんだんと思い出せてくる。]
─道具屋 店内─
…ぁ、ごめんなさい、今日はお…
え…?
[店の扉をノックする音に気付いて、今日は店はやれないと言おうとして。
すぐに聞こえた声と、中に入ってくる姿に思わず固まった。
今一番会いたくて、会いたくなかった人だった。]
…ちょ、ちょっと、なんで、ゼル…
[泣き腫らした顔は、見られればすぐにばれてしまうから。
慌てて俯きながら、何故、と。]
―少し前―
[レナーテが出て行って、ミハエルがまだ起きる前か。
ふいに届いた声に顔をあげた。
まず聞こえたのはパンの礼。
それには少し、嬉しそうな顔をした。だが。]
…っ。
[最後に届いた声に息を呑んで、ユリアンを見ていたが。
視線は落ち着きなく彷徨った。]
[随分甘えたものだとわが事ながら気恥ずかしくもなり、ぐりぐりとこめかみを押さえたりしながら]
今日、だけで、いいのだよ。
[>>76 双方の言葉に苦い顔をしていた薬師の顔を思い浮かべる。水気を含んだ自分の紙を手櫛で軽く整える。]
ゼルギウスが……優しい方がボクの調子まで狂う。
偉そうで無愛想で厳しくなくては。
…… いつものように喧嘩もできないしな。
[うん。と、深呼吸をして。水鏡で目元の赤が薄れたを確認して、なんともいえない顔で笑った。]
やれやれだ。
[胸中にだけ思うことは、コエにも出さず。
全て自分の中にだけ]
余り一方的なのも、悪いか?
[もし聞こえてるとしたなら、とかそんなことを思ったりしていた]
─ユリアン宅─
あ……うん。
そう、だね。
[独り言へのユリアンの返しに、数度瞬いてから、何となくその意を察した]
うん、いいよ。
ミィのこと、心配だし。
[エーリッヒの頼みは自分がここに来た目的でもあるから、素直に頷くものの。
二人だけで話した方が、というユリアンの言葉には、少しだけ不思議そうな表情を覗かせた]
─ユリアン宅─
うん。
…大丈夫だ、な?
[水鏡で自分の顔を確認して]
ちゃんと、まだ、笑える。
[うん。と、頷いて、入り口の方へ戻り]
―自宅―
[ミハエルには場所は、指だけで方向を示していた。
ミハエルのことを、エーリッヒから聞かれれば]
グラス落として、水こぼしてな。
怪我はしてないが、まぁ少し落ち込んでた。
[いろいろとはしょられながら、嘘は言っていなかった。
ユーディットに話す言葉に頷いて、一度家の中を確認し、ミハエルが顔を洗い終えて戻ってきたなら]
じゃあユーディ、頼んだ。
[とユーディットだけ、家の中に招くだろうか、自分はエーリッヒと少しだけ話があると、その場で]
…… 寂しくないわけではないし
かなしいのが、なくなったわけではないが。
でも、
全部それだけに飲み込まれては、いない。
…… いない、と思う。
―少し前―
………たぶん、って。
[だいぶ間をあけてから、口から零れたのはそんな言葉だった。
ふいと横を向くと、赤い頬が晒される。
告げられた言葉には、返す言葉が見つからなかった。]
(さっき、わからないって言ったし。)
[とは胸中で思うだけ。代わりに、もう一つ言っていた言葉の内容に首を少し傾げた。]
…決めた事って、何だろう。
─ユリアン宅─
ユリアン。
[奥から戻り、押しとめてくれている家主に声をかけて]
ありがとう。
… もう大丈夫、だ。たぶん。
ユーディ。
エーリ兄。
[入り口のところの二人に、小さく手を振った。]
―道具屋―
……やはりここか。
[扉を入ってすぐに目を細めた。
小声は届いたかどうか]
来たら悪いか。
[イレーネに返事をしたのはその後。
遠慮する様子もなく、店の中央付近まで進んだ]
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