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― 階段 ―
[幼馴染の仮令>>1に過る哀しげな表情]
そんな事頼まれたら泣いてしまうかもしれないよ。
[自分が狼だったら如何しただろう。
様々なパターンが頭を過るけれど
どれも酷いものだったから苦笑する。
春の姿を探していれば
階段の壁に背を預け頭を抱える彼の姿が見える]
春……ッ!
[駆け寄ろうと一歩踏み出した所で
別の方から何かの倒れる音>>3がした。
その音に気を取られ足は止まり其方へと意識が向く]
─階段前─
……へ?
ふく、かい、ちょ……?
[>>6 叫びながら、倒れた春陽にカッターを突き立てる誠の姿に、惚けた声が上がる。
けれど、動けなかった。
手足が震えているのが、わかる。
自分がやった事の意味が、わかる。
動かないと、しっかりしないと。
そんな思いが辛うじて、意識を繋ぎ止めている状態だったから]
─階段─
[持っていたカッターを抜く誠>>4:149。
睨みつける対象は、彼の幼馴染であるはずの春陽。
止めようと手を伸ばしかけたけれど、それは春の言葉に遮られる]
……は?
[唐突だった。
殺すべきはキユリ、アイツが人狼だ。
そんな風な言葉だったと思う。
それは慎太郎達のやり取りを止めるための言葉だったかもしれない。
けれど唐突過ぎて、春が言った一言一句までは覚えていない。
ただ、自分が危険に晒されたと言うのだけは分かった]
な、何を言って───。
[表情が強張る。動揺は隠し切れない。
そこまでは普通の人が告発された時と同じだったとは思うけれど、その先が違った]
(……───出るな!!)
[そう願ったけれど、時既に遅し。
最初から相手を危険と定めていたのもあり、想うだけで行使されるそれは自衛本能として現れた。
自分の背後を飛び越えて現れる、黒紅色の獣───狼。
黒紅狼はそのまま春へと襲いかかる。
誰かが庇いでもするならそれを四肢で蹴飛ばして。
体勢を整えると逃げる春へと追い縋り。
そのまま襲いかかって喉元を───食い千切った]
ぐっ……げほっ…。
[口の中に鉄錆の味が広がる。
口許を押さえて呻いたけれど、その場に居るのは危険すぎる。
だから、苦しいのを我慢して廊下を駆け出した]
(バレた。皆にバレた。
このままじゃ殺される!)
[逃げる友梨の後方、春が事切れて尚その上に圧し掛かっていた黒紅狼も友梨の後を追い駆け出す。
見るものが見れば、その足元と友梨の影が繋がっていたことに気付くことが出来ただろう]
─階段前─
[佑から言われた言葉>>5には、自分もまた彼と同じような表情でゆるく首を振り。
けれど、多分お互いに同じ気持ちならこれは平行線でしかなくて。
困らせるだけだから、それ以上は言わなかった。
そんなこと言われたら泣いてしまうかも>>7、と言われると、表情は翳り。]
そう、だね。やっぱり私、ずるい。
春枝ちゃんの言う通りだ。
[だって、狼になったら人を殺さなきゃいけない。
そんなことしたくない、だから、佑になら命を奪われてもいいなんて。
例え、仮定であっても、自分がしたくないことを幼馴染に頼むというなんて、卑怯なことを言った。
それ以上何もいえなくて、黙ったまま階段まで走ってきて。
慎太郎の握った刃が春陽の首を裂くのを、目の当たりにした。]
[アズマはハルヒを狂人と言っていた。
ハルヒが狼側であるなら彼と争うシンタロウは――。
倒れた春陽と、慎太郎の姿を見遣る。
誠が春陽の傍により行った其れに凍りつくような感覚]
――…、……ッ
[幼馴染であると言っていた二人が
こうしている様が佑一郎には理解できない]
川島く…!
…つゆしま、くん?
や…やめ、て…!露島くん、やめて!
[倒れた春陽は、傍目からみても既に事切れていて。
彼に近付いていった誠が行った行為は、そんな彼を更に傷つけるもので。
ぞくりとした、理解ができない、けれど。
止まらないその行為に、懇願するように止めてと叫んだ。
だから。
春の声は聞こえなくて。友梨のことも、気がつけなくて。
気付いた時は、全てが遅かった。]
[春の告発が辺りに響いた。
誠へと向けられた意識はその瞬間春の方へと向けられる。
その告発の内容とタイミングに舌打ちして春へと駆け寄る。
庇うように立ち塞がれば友梨の背後から現れる獣]
――…な、…ッ!?
[一瞬何が起こったか分からなかった。
それが何であるかなど考えたくなかった。
当たり前であった現実が崩れるような感覚。
否、もう既に崩れかけていたそれが――。
咄嗟に両の腕を前で構えて衝撃に備えるけれど
力の差は歴然たるもの、男の四肢は容易く跳ね飛ばされた。
受け身を取るも身体に伝う衝撃で息が詰まる]
[静止の声が聞こえた気がする、ボクはそこで、幼馴染の姿に気づいて、
答えられるわけがない、もう彼はすでに、生きていないから]
ねぇ、ハル……なんでなんだよ……?
なんで、ハルが?
なんで、宮町さんだった?
[ボクは血にぬれた手で、カッターを持ったままの手で、その顔を隠すように]
ねぇ、ハルとボクは友達、だよね?
[手で隠れないそこに浮かんでいたのは笑顔で、目から、涙が零れ落ちていく。
投げかける質問の声に答える声は、きっとどこからもない]
[そうして、ボクはほかの騒動がおきていても、それに気づいた様子もなく、
ボクがまともに話せるようになるのはもう少し、後のことだろうね?]
え、ゆ ───森君!
…っ佑!!!
[切羽詰ったような佑の声に、何があったのかと見たその先は。
黒い獣が、春に襲い掛かる姿と、その獣に突き飛ばされた幼馴染の姿で。
反射的に幼馴染に駆け寄った自分と逆に、この場を立ち去り走る友梨を見て。
彼女の影が、獣とつながっているのを見た。]
[強かに打ちつけた身体が痺れて直ぐには動けない。
咳き込みながら柳眉を寄せて探すのは春の姿。
黒紅色の獣が春の喉元に喰らいつく様が
スローモーションをみているかのように眸に映り込む。
飛び散る赤は守りたかった者の、血の雫。
友梨と獣が立ち去る音だけがやけに耳に響いた]
――――……春!!!
[声を張り上げて友の名を呼ぶ。
無理に起こした身体が痛みを訴えていたが
其れを無視して春へと駆け寄った]
─ →調理室─
[走るにつれ、黒紅狼はその形を無くし、影と同化する]
どこか、隠れられる、場所。
少しでも、時間稼ぎ出来たら…!
[皆が自分を探すだろうから、そんなに簡単には行かないかもしれないけれど。
僅かな望みを求めて隠れる場所を捜した]
……そうだ、調理室!
[鍵を持ったままであることを思い出し、走りながら胸ポケットを探る。
記憶の通りに鍵はそこにあり、足は調理室目指し駆け続ける]
[追って来るものが居たかどうかも確認せぬまま、調理室の鍵を開けると崩れ落ちるようにしながら中へと入った。
扉を閉め、床に座り込んで背を扉に凭れ掛けさせる]
っ、はぁ、は、ぁ……。
…ぅ、く……ひっく……。
なん、で……なんで、こんなこと、に…。
[しんと静まり返る調理室。
その中に涙声と嗚咽が響いた。
今まで流れることが無かった涙。
死に直面して、一人になって、底知れぬ恐怖が身を襲う]
…やだ……やだよぅ……。
[膝を抱えて顔を埋める。
スカートから覗いていたクマのぬいぐるみのストラップが力なく床に転がった。
背の扉の鍵はかけ忘れたまま、しばらくの間調理室には途切れぬ嗚咽が*響いていた*]
…………。
[呆気にとられた。
呆気にとられるしか、出来なかった。
蛍子の制止が届いたのか、動きを止めた誠。
その後の、彼の言動と、表情と。
何があって、どうなって、今があるのか。
わからない事が積み上がる、けれど]
……っ!? ……はるさんっ!
[聞こえた声と、新たに大気を染めた、あか。
それから、走り去る友梨の姿に。
疑問の思考は途切れ、よろけながらも、立ち上がった]
……諏訪、先輩……一之瀬、先輩……。
今の、なに……。
[春と友梨の間のやり取りは、見てはいなかった。
見れたのは、結果だけ。
だから、二人に向けて、問う]
……何があって……桐谷……は。
なんで……はるさん……。
[問いかける声は、自分でも。
酷く掠れているな、と思えた**]
[幼馴染の声が遠く聞こえていたけれど
目の前の悪夢に意識が奪われて返事をする余裕が無い。
そう、これは、きっと悪夢だ。
目が覚めれば何時も通りの日常が――。
逃避しかける意識を現実へと引き戻すのは
抱き起こし支えた春の喉元から溢れる血のぬめりとあたたかさ]
嘘、だ。
また、――…、……ッ
[間に合わない。否、力が及ばない。
自分の無力さを呪い、友を失った嘆きが嗚咽となり零れる]
春、いくな。いくなよ、春……ッ!
[縋るような声は響に向けた其れと似た音。
友の肩を抱き柔らかな髪に顔を埋めて幾度となく名を呼んだ]
[喉を食い千切られ事切れた春を幼馴染が抱き起こす。
その声が、悲痛な叫びが、目の前のそれが現実なのだと教えられる。
春が死んだ。
演じる私が好きだと、ずっと応援すると言ってくれた人が。]
ぁ…っ
[また、人が死ぬのを止められなかった。
何も出来ずに。後悔に、視界がゆがむ。
そこにかけられた問いに、ようやく側に慎太郎が来たことに気付き。]
森君、が…襲われ、て。
襲った、のは…キユリ、ちゃんと…影、つながって、た…
キユリちゃん、は、狼、だって…
森君、言って、たって。
[そう答えた声も、また、掠れていたか。]
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