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─…森、君…
[友梨のことを聞いた慎太郎はなんと答えたろうか。
友梨を追っていったかもしれないし、その場に立ち尽くしたかもしれない。
自分はそのどちらでもなく、春を抱えて嗚咽を零す幼馴染の元へと向かい。
彼の背に手を添え、春と彼、二人を抱えるように抱きしめた。
佑と同じくらい、彼も、失いたくなかったのに。**]
[武器を持たずに居た事を後悔した。
春の傍から離れたことを後悔した。
守る力の無い自分が恨めしくあった。
春の纏うジャージに染みた赤が白衣に移り染めゆく。
無力感と哀しみが胸を満たし声を殺して泣いた。
泣き顔は誰にも見せない。
微かに震える肩だけがそれを物語る]
――…あ、ずま。
[嗄れた声が覇気なく名を紡いだ。
自らの目元を乱暴に拭い、顔を上げる]
[春の名を幾ら呼ぼうとも返事は聞こえない]
――莫ァ迦。
『ignis』との話が済む前に眠るやつがあるか。
[いつもの軽口を紡ぎながら笑おうとするが
如何しても泣きそうなかたちに歪んでしまう]
莫迦なのはボクの方、か。
[自嘲的な響きは消え入りそうな程弱い。
春の肩を抱いたままあれば背に触れるぬくもり>>26]
蛍、ちゃん。
[幼馴染の名を呼んで、
再び溢れそうになる涙を隠すように微かに顔を伏せた**]
[包むような幼馴染の温もりが
徐々に佑一郎の気持ちを落ち着かせる]
蛍はずるくない。
優し過ぎるだけだ。
[例え話で自分をずるいと言った彼女>>12を
佑一郎はずるいとは思わない。
今触れているぬくもりも彼女の優しさの表れだと思った]
それに、ずるいのはきっとボクの方だ。
置いてかれるのがイヤで置いていく側を選ぼうとしてる。
[守りたいと思った者を守れず失ってばかりいる男は
失うことに何処かで怯えていたのかもしれない。
彼女が望まぬと知りながら、それでもきっと
春を庇おうとしたように、また同じ事をするのだろう]
[――ずるい、と妹に泣かれた事があった。
幼い頃に亡くした母に歳をおう毎に似てゆく佑一郎を
父は事のほか可愛がり目を掛けた。
父が妹に愛を注がなかったわけではない。
同じように妹も可愛がられていたように思うけど
妹はそうは感じていなかったらしい。
お父さんを取らないで、と小さな妹に泣かれて
佑一郎は父と距離をとるようになった。
守るべき大事な妹を知らぬうちに傷付け泣かせた自分を嫌悪した。
また、誰かに、ずるい、と泣かれるのがイヤで
それ以来、自分から誰かを求めることは無くなった。
ずっと特定の恋人を作らなかったのも、
春と蛍子の幸せを願ったのも、其れが背景にある。
頭を掠めた色あせた景色を覚えているのは佑一郎ただ一人]
――…ありがとう、蛍。
御蔭で、少し、落ち着いた。
[失った痛みは消えないけれど
それは幼馴染である蛍子も同じだろう。
顔を上げ蛍子を見詰め微かな笑みを浮かべた。
慎太郎>>23の問いには蛍子が答えたけれど
彼へと眼差しを向け]
春は占い師だった。
そして、友梨ちゃんを狼だと断じた。
占い師を、狼が、襲撃、したンだろうね。
[言葉にすればその光景が過りきつく柳眉を寄せる。
霊能者が二人いる事は知らない。
既に居なくなってしまったという可能性さえ頭の片隅にある]
――…さて、と。
此処で寝かせるのはあんまりだから……
春を宿直室に運んでくるよ。
襲撃が起きた直後なら、
まだ、安全な方だと思う、し。
[断りを入れてから、春を抱え立ち上がる]
こうして運ぶのは三度目だな、春。
[微かな呟きは何処か懐かしむような音色。
感傷に浸りたくなる己を叱咤して前へと進む。
春を宿直室に運び寝かせれば
毛布を被せたまま置き去りにしてしまった桜子を迎えにゆき
同じように宿直室に寝かせることとなる**]
―階段上―
[>>25 問いに返る、蛍子の掠れた声と。
>>31 捕捉するよな、佑一郎の言葉]
……そっ、すか……。
[間を置いて、返したのは、短い言葉。
春の死を嘆く様子には、何も言えないから、ただ小さく息を吐いて]
……俺、桐谷、探しに行きます、わ。
はるさん……たのんます。
[>>32 春を運ぶ、という佑一郎に短く言って、歩き出す。
春陽と、それから、誠の方は、振り返れなかった]
― →写真部部室―
[探すと言っても宛はなく。
更に、返り血塗れで歩き回れるほどには極限状態ではなかったから、まずは血の痕をどうにかしよう、と。
足を向けたのは写真部の部室。
撮影時のトラブルで着替えが必要になる事も多いから、ここには予備のジャージを置いていた]
……っ……。
[中に入った途端、足の力が抜けた。
ずるり、と。そんな感じで、その場に座り込む]
は……ははぁ……やって、らん、ね。
[零れる声には、はっきりそれとわかる、震えの響き。
ひとを殺した――その衝撃が、今更のように、押し寄せてくる。
身体が震えて、思うように動けない。
けれど]
死んで、たまるか……死ねる、かよ……。
[こんな思いが、四肢に力を与えて、立ち上がらせる。
死ねない、帰りたい。
けれど、それをやるには。
誰かを――人狼を、殺さなくてはならなくて。
そして、それは]
……なんで、よりによって、あいつなんよ。
[他の誰かなら良かった、と言うわけではない、けれど。
ここにいる中で、一番付き合いがあったのは友梨で。
そうであって欲しくない、という気持ちもあって。
けれど、と、でも、がループする]
……あー、っとに!
[苛立つ、苛つく。
色んなものに。
それらを振り払いたくて、まずは頭を冷やそう、と。
部室備え付けの水道を思いっきり出して、頭から水を被った**]
― 宿直室 ―
[其処は学長以外の死者が眠る場所。
佑一郎にとって事の始まりは親友・響の死だった。
他の者はそれ以前にこの奇異を感じていたのかもしれないが
異能とは縁の無かった男は親友を亡くして漸く事の重大さを知る。
気まぐれに参加したオフ会で奇怪な事件に巻き込まれてしまうなど
誰が予想しただろう。
その奇異に自分が友と思う者を巻き込んでしまった]
――…春に「来い」なんてメール、
送らなきゃ良かった。
[疎遠になっていた友に会いたいと願い動いた結果が
その友を死に至らしめたと思えば後悔ばかりが募る]
すまない。
[謝って済む話ではないと分かっていても
終ぞ零れてしまうのは謝罪の言葉]
[春を襲った黒紅色の狼が脳裏に過ぎる。
春の占い師としての告白。
友梨の背後から現れた狼。
二つの影が繋がっていたと蛍子は言っていた。
元々春の言葉を疑おうなどとは思っていないけれど
覚悟を決める為に一つ一つの情報を繋げてゆく]
――…友梨ちゃん、か。
[気さくに言葉を交わしてくれた彼女。
オフ会の楽しさを教えようとしてくれて
好意的とも思えた後輩の名を小さく呟く。
懐に仕舞った携帯を取り出し
新規に登録されたアドレスに視線を落した。
携帯は圏外のままだからメールを送る事は出来ない。
懐かしむように受信メールを眺め、溜息を零す**]
―階段上→宿直室―
[ボクが気づいた時にはほとんどの人がその場から離れた後のこと、
ケイコがまだのこってたならボクはそっと告げるだろうか]
ハルのこと、宿直室に連れに、行ってくる。
[それから、自分が霊能者であることも伝えておいただろうね?
幼馴染だった、死体を抱えて、宿直室に向かう。
ユウイチロウがいて、アズマの死体を前にしていた]
ああ、森くんは占い師だったはずじゃ…?
[声をかけながら、その場にいたはずなのにまったく気づいていなかったボクは、少し驚いたような、悲しいような声でいた。
ボクは幼馴染を、ほかの皆のように並べて、生きてるものよりも多くなった、その姿を見渡す]
今日はハルと…、森くん、だったん…、だね。
[ボクはつぶやくような声で]
─調理室─
[しばらく嗚咽が響いていたが、それも徐々に治まって行き。
鼻を啜る音と共にカチカチと何かを操作する音へと切り替わる]
……………。
[クマのぬいぐるみをぶら下げながら携帯を弄り、ある画面を開く]
………………なんで、アタシだったんだろ。
[赤い背景デコレーションされたメール。
『あなたは人狼です』とタイトルに書かれたそれには、役職の詳細も記載されていた。
不思議なことに、最初は書かれていなかったはずの役職詳細の下部に、今まで襲撃した人物の名前が記されている]
……書かれなくたって、自分が何したかくらいは分かってるよ。
でも、でもそうしないと、アタシは───。
[静寂に落ちる声は微かな音。
それでも、何も音がしないために自分の声が響いているように感じた]
……それは、ちょっと嫌だな──。
[ぽつりと、唐突に呟いた。
メール画面を開いたまま、ぼんやりとしていたらしい。
ぎゅっと携帯を握り込む。
ぷらりとクマのぬいぐるみが静かに揺れた]
[微かに笑んで礼を言う幼馴染に、こちらは首を横に振ることで答え。
自分が慎太郎に答えたことを補足してから、春を宿直室へと運ぶと言い立ち上がる幼馴染に、自分もついていこうと立ち上がった。]
…一緒に、行く。
そっと、運んであげてね。
[そう、ゲームが始まったすぐに彼が倒れた時に言ったように幼馴染に頼んで。
誠と春陽をちらと振り向いた後、幼馴染の後をついて宿直室へと*向かった。*]
─写真部部室─
[音を立てて冷たい水を被り、ついでに返り血も洗い落として。
あらゆる意味で冷え切ったところで水を止め、頭を振って水を飛ばす。
後ろ髪を結わえる紐を一度解き、ロッカーの中から引っ張り出したタオルを被った]
……ってぇ、とお。
ここでうだうだしててもしゃーないし。
とにかく、行くかぁ。
[タオルの下で零す言葉は、常と変わらない。
もっとも、その表情は白の下に隠れて見えないが。
ともあれがしがし、と乱暴に頭の水気を拭うと、跳ねた水で濡れた制服を予備のジャージに着替えた]
……あー。
そいや、どーすっかな。
[きゅ、と後ろ髪を縛り直した所で、ふとあることに気がついた。
先に階段で拾ったカッターナイフは、先ほど手放した。
持っていたとしても、もう使い物にはならないだろうが]
……なんぞあった時に使えそうなモン、てきとーに持っとくか。
[言いつつ、備品棚から拝借するのはデザインナイフと顧問の置いている万年筆。
それらをジャージと一緒に置いてあるウィンドブレイカーのポケットに突っ込み、それから、携帯を開く。
先に届いていたメール。
表示されているのは、名前だけが違う、同じ文章全三行。
それを確認すると無言で携帯を閉じ、ポケットに突っ込んだ]
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