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[ゆると目を開く、苗床は、何を見るのか。
ダウン状態の火の竜は見ていないだろうか。
その頬に透明なしづくが伝い、]
“ ”
[昔あいした人の名がこぼれた。
*小瓶は今は手元になく*]
─喫茶室─
[とろとろと見るのは、浅い夢。
色とりどりのおはじきを乗せた天秤。
ちいさな指が、それをつまみあげ、
揺らいで傾ぐ秤に首を傾げる気配。
下がった方をひとつ摘むと、もう片方へと秤は傾いで。
ひとつとり、ふたつとり、右へ左へ秤は揺らぎ。
揺らぎが止まったその時には、秤の上はどちらも空っぽ。]
−→Kirschbaum−
[アマンダは、ゆっくりと扉を開ける。
けれども来客を告げるベルは、小さく空気を振るわせる]
…こんにちは。
起こしちゃった、かな…?
[ソファーの二人に視線を投げる]
…んぁ。
[雷の大きな衝撃で、そのまま気を失っていたが、水音で目を覚ました。
自分の上の蛇に、生命の気は感じられない。
死んでいるようだった。]
…重い。
[生きていたモノが死んだからといって重さが変わるはずもなく。
やはり、這い出す事はできないままだった。]
…?
[ふと、昨日よりもずっと近くにあの「声」の気を感じる。
同じこの地に、来たのだろうか?]
…何も出来なかくて、ごめんなさい…
[ぽつり、呟いて。
そのまま再び色々な傷を癒す為、*眠りに落ちた*]
[未だ癒しの夢の中にある火の竜の邪魔はせず、小瓶の持ち主へと近づいていく。
瞬きに気付けば微笑みを。既に零れ落ちたしずくには、気付かない]
おはよう、ティル。
気分はどう? 何か、欲しいものはある?
[冷たいものでも、と傍にかがみこんで問う]
[アマンダは片手を伸ばし、ティルが起きるのを手伝おうとする。
ちょうど視界の端で、ダーヴィッドが手を額へと運ぶのが見えた]
…あ。…ゴメン、ダーヴ。起こしたかな?
[倒れないよう背を支えたまま、首をかしげて声を投げる]
[アマンダはティルが少しでも楽なように、その背をソファーへと凭れさせる。
そうしてから、彼の視線に気づき小首を傾げた。その表情の意味までは判らない]
ん? どうかした…ああ、先に水分かな。
ハーヴ、何か飲み物を…
[乾いた唇と小さな声に、水分補給が先かと判断し立ち上がろうと]
[アマンダは首を振るティルに、不思議そう。
けれど、手際よくカウンターに準備された二つのグラスの涼しげな音が小さく響けば、受け取るために足を踏み出し]
あ、そうだ。これ、届け物
[手が埋まっていてはグラスが持てぬと、ティルの手にそれを渡して]
もう、失くさないようにね
[それだけ言って、ソファーに背を向ける]
−中央部・広場−
[ベアトリーチェは広場に置かれたベンチのひとつに座って居りました。膝の上にはスケッチブックがあり、手の中には鉛筆がありましたが、肝心の紙はまっ白で、そこにはなんにもありませんでした。
眼は行交う人びとに向られていましたが、ここではないどこかを見ているようでもありました。]
[返された小瓶を見て、その瞳からふたたび涙があふれる。
それはしあわせそうでも……かなしそうにも*見えたかもしれない*]
ありがとう
[そうしておりますと、黒の猫がするり人ごみを抜けて、足もとまでやって来ました。左の手を延ばして触れ、ベアトリーチェはゆっくりとまたたきをしました。生きたものではないそれはあたたかいのかもよくわからず、ただ、きみょうな感覚がありました。]
[アマンダは耳に届いた声に、少しだけ振り返る。
翠樹から零れ落ちそうな透明な雫と、その表情に微かに息を呑んで]
……ん
[一つだけ頷いて、水分補給の為のグラスを取りに行く。
しあわせそうな、かなしそうなその表情に、気付かない振りをして]
[使い魔を通して視えた光景。
翠樹の魔の持っていた小さな瓶。
彼と以前に交わした会話を思い出す。
苗床たる少年は、変化を厭うのだと言っていた。
神の御子と呼ばれる少女は、厭わないと答えた。
それは、自分がこの世界にあり、生きているからだと。
確かに少女は、世界が好きだった。好きだった、はずだ。
けれども、自らの真実を知った現在は、解らなくなってしまった]
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