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[起き上がろうとする体を、蔦が支える。しかしつかまる場所がなければ、動けるはずもなし。
ベッドから落ちるように床に崩れて、困った顔をした]
−工房−
[アマンダはベットできちんと眠っていた。
膝まである長い髪は土の床へと流れ落ち、大地へと繋がっている]
[やがて、アマンダは目を覚ます。
千の花弁(欠片)閉じ込めた、二連の首飾りを撫でて挨拶]
…おはよう、千花。おねぼうさん。
[それから、身支度して工房を後にする。足が向かうはKirschbaum]
─Kirschbaum─
[ソファーに横になったまま、ぐったりと臥せている。
軽く手当てはされていたが、それでも髪や衣服に染み付く血の香り。
血を好む生き物には甘露と評される、竜の血の香が漂っている。
おそらく、歩いてきた道のりにも、点々と残っているだろう。]
−Kirschbaum−
[アマンダはドアベルを鳴らし扉を開ける。
一つ纏めた長い髪を揺らし店内へと入れば、漂う血の香りに首を傾げ]
…おはよう、ダーヴ。
まだ、調子悪いの?
[血は止めたはずなのに、と不思議そう]
ん、…いや、だいじょぶ……。
[片目だけを開けて、ぼんやり答える。
額に巻かれた包帯には、僅かに血が滲んでいた。
痛むのと眠いので、ぼんやりしている。]
そっか、ならいいや。
ここなら、美味しい食べ物もあるし、ゆっくり休めば直るだろう。
[アマンダはダーヴに頷いた。大丈夫との言葉を真に受けたようだ]
…ハーヴ、いつもの…
[カウンターに声を投げ掛けたところで、階段の方から何かの音と、乱れた微かな――翠樹の気配]
ティル…?
―南通り・宿の一室―
[暖かな陽が差しだした。同じ建物の中からここ数日感じていた、流水の気配は無い。]
[朝の陽に誘われて、部屋の隅を動く、小さな影。
ねずみの類だろう。素早く横切ったそれを、追った目の光りは一瞬だけ、獣のもの。封じ、いまは容易く解き放つ事の出来ぬ場所に在る、本性のもの。]
[手の中に形作った、薄い氷のダガアを投げる。
小さな命は貫かれ、僅かの血を流した。
まだ息の残るそれを拾い上げ、口許へ運ぶ。
人を装うための食事でも、精霊としての力の補充でもなく、本性の求めを癒すための、摂食。]
[アマンダは確かめるようにダーヴィッドを振り向くも、彼は既に怪我を癒すための眠りの中へ。
無言のままに階段を駆け上がれば、そこには蹲るような小さな姿]
…ティル! まだ起きては…
[膝を突いて、身体を支える。
上と下、どちらへと迷い、監視の目と食事が得られる階下へと]
―南通り・宿の一室―
[床へ落ちた血を、凍らせる。凍結してしまえばそれは摘み上げることも剥がすことも、捨てることも可能だ。]
[濡れた髪を拭い、身なりを整えて宿を出た。
広場を通って西通り、Kirschbaumへと向かう。
教会が見えたとき、少しだけそれを仰ぎ見た。]
[アマンダはティルを、ダーヴとは別のソファーへと寝せる。
辛そうな様子に、何か甘味を口に運ぶ手伝いをしたかもしれない]
…ダメだよ。
休むべき時に休まなくては、
動くべき時に動けなくなる。
[苦言はそれだけ。
言葉が返らなくても、黙って髪を一度撫でるだけで。
自分も何か力の元を得る為に、ハーヴへ甘味を*注文するだろう*]
―教会/夜―
[ユリアンがティルを連れていく様子を横目に、自分もふらりと外にでる。
思う所は多々あれども。
それは、確たる形を結ばない]
……少し、頭冷やすか。
[呟いて。
足を向けるのは、北]
―Kirschbaum―
[戸をくぐる。小さな鐘の音が出迎えた。]
…いつから此処は野戦病院になったのだ。
[ソファーを占領する二人は、どちらも襤褸襤褸で意識も無い状態。とてもでは無いが、喫茶店の一画とは思いがたい光景だ。]
[王の店先で――と言い掛けたが、王その人とアマンダに軽く宥められ、溜息を吐くだけ。]
…よくこんな場所で甘味など口に出来るものだな。普通、女性というものはこういった血生臭い輩の居るところで食事をとる事を嫌うものだ。
[アマンダの手元へ目を移し、また溜息。]
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