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― 前日/個室M ―
[混乱している中、立ち上がったエーリッヒに抱き締められれば、体を硬直させただろうか。
心臓がバクバク言っている。口から飛び出そうなくらいの勢いで。
先に掛けられた言葉を頭の中で反芻してたところで、さらに掛けられた言葉の意味を理解するまで何秒くらい掛かっただろう。
おもむろに、休むと言ってベッドに転がられれば、逃げるように部屋を出ようとして]
…………ボクも、好きでもない人にあんな事言われてあんな風にされてたら、さすがに抵抗してますから。
[真っ赤な顔のままで、そんな事を言い捨てて行った。
その後は、しばらく部屋で真っ赤になったままジタバタしているかもしれない。
どうやら少しは自覚したもよう。
あ、ユーちゃんとのじゃれあいは、さっきのアレとは別次元だと認識していますよ]
― 前日の夜/個室E ―
[しばらく部屋でジタバタした後、少しは落ち着いてきたなら、広間に出て伯父かアマンダが作ったものを分けてもらって食べたり。
ついでに、少し少なめの一食分をトレイに乗せて、エーリッヒの部屋の前に置いといたりもしただろうか。
夜、クレメンスが自室に戻った後、しばらく迷った末に伯父の部屋を訪れる。
一緒に各部屋を回った時に「この部屋は見なくていいんですか?」とでも尋ねて、伯父の部屋は把握してただろう。
ノックをして、話があると声を掛ければ、部屋に入れてもらえるだろうか。
相談したい事はいくつかある。
しかし、伯父の様子はブリジットの件がある前から、どこかピリピリしていたので、真っ先に騒動の事を相談する気にはなれず]
………伯父上、お願いがあるんです。
この騒動が片付いて、ふたりとも生きて無事に帰れたら………ボクの父上になってもらえませんか?
[とりあえず別方向から、という事で何か言い出した]
― 翌朝/個室D → 2階廊下 ―
[声は聞こえたか聞こえなかったか。どちらにせよ、ライヒアルトの叫び声>>40では目が覚める事はなかったが。
胸の蒼花が対たる朱花の異常な気配を感じ取って、酷い胸騒ぎに飛び起きた。
朱花の持ち主である彼が襲われたのかと思った。
とりあえず、夜着の上に上着を羽織って部屋を出て。蒼花が導いたものか、迷わず2階へと駆け上る]
え……ローザさん!?
[ライヒアルトの姿が廊下にあるなら、彼の視線の先にある部屋を。彼の姿がローザの部屋の中にあるなら、扉が開いたままの部屋を覗いて。
どちらにせよ、紅の中に倒れる姿を見ることはできただろうか]
制裁を、“全て”にって……
[感情の色のない瞳が向けられれば、姉が殺されたと言うのに笑みを浮かべている様子にゾクリと鳥肌が立つ。
続けられる言葉を聞けば、彼が既に心を手放してしまった事を*悟った*]
―残念な男の回想 5―
[この気持ちは変か、好きか]
[蒼花を見た時から、それは、変か好きか、ではなく、別の二つのものに置き換わって、ぐちゃぐちゃになってしまった]
[自分はいったい、どうしたいのか。
愛しいものを庇って死んだ誰かを見て、新たな疑問が投げかけられる]
[一つの疑いが呼び水になって、彼女と話しているうちに整理がつく]
[たった一言だけで。そばにいるだけで。どれだけの救いになるのか。
そんな存在がこの世にいることを知った]
[一握りでもいい。可能性があるならば。
女神より出された一つの命題。自分の答が真に正しいか証明する為、神にすら銃口を向けることを厭わない]
[銃の手入れが終わり、マガジンを挿入する。残り6発。そのひとつひとつが血染めの証明となるだろう。続く]
―翌日早朝 個室M→風呂→個室M―
[早くに目が覚めた。ミハエラが持ってきてくれた食事は空になっている。
機嫌はすこぶる悪いが、体調は悪くなかった。ちゃんと食事をしたお陰だろうか]
[事件が発覚する前に、食器を洗って返し、先客がいなければ風呂に入った。
誰かが朝ご飯の支度をしに起きているのなら、挨拶や軽い会話を交わしたかもしれない。昨日埋葬を行ったものだったら、手伝えなくてごめん、と謝っただろう]
[風呂はいい狭い空間である。ここにいると、『場』からも隔絶されている気がする。オリーブのいい香りが、硝煙やら穢れにまみれたわが身を包んでくれる。そうして、ぽかぽかと暖を取れればのぼせる前に風呂から出て、部屋に帰った]
……そう、全てに。
[駆けて来た対なる蒼花の言葉に、一つ、頷く。
それ以上の言葉は継がない。
狂えども、朱花に対を害する意思はなく。
砕けたかけらは、友を傷つける事を僅かながらに拒んでもいて。
けれど、それすらも定かならぬ均衡に成り立つもの。
――狂気を阻むのは、小さな弾みでも砕けてしまいそうな、薄氷の境界線。**]
―2F廊下→個室H―
ラーイ!
[自分の部屋から転がりように廊下に出て、開いた扉の部屋へかけつけた時、目撃するのは変わり果てた老神父様の子供たちだった。>>40>>42 ローザの変わり様には、こみ上げる吐き気を我慢し、ひぐ、と喉が変な音をあげる。]
[無機質な天鵞絨の視線には、心あらず。ウェンデルを殺した時に見た朱の筋は、皮膚病に侵されてしまったかのように広がり、そして、……]
[穏やかな微笑みに鳥肌が立ったが、それよりも先に来たのは]
ラーイ! しっかりしろよ!
[――心配から来る怒りだった。ライヒアルトの頬を平手で叩こうと。その顔は赤く染まり]
お前、そんな神の使徒とか、無理すんなよ!
だいいち、制裁とかいってる前に、やることあんだろ!お前のねえさん、このままにしといていいのかよ!
[友の肩をゆさぶろうと、その手を伸ばす。そして、ひとことひとこと紡ぐ度に、目頭が熱くなり、雫が落ちる。
泣けない誰かの代わりなのだろうか]
お前さんは、人間なんだろ、修道士なんだろ、生きてるんだろ
[震える声を紡ぎながら、下がり]
だったら、それを忘れるなよ……。意思をなくして生きて、それに何の意味があんだよ
[眉毛はハの字に下がった。
死者の気持ちの代弁なんてできやしない。無残な胸元は誰にも見られたくないだろうと思って、その場で自分のジャケットをかけ、リネン室へと綺麗なシーツを取りにいった**]
→リネン室
─ 昨夜/個室E ─
[陽が落ちてから部屋へと戻り、灯りもつけぬままに椅子へと腰掛ける。
窓からは月明かり、満月よりは欠けた姿。
その色がどうだったかは、覚えていない]
……まだ、居る。
人狼は、まだ、居る。
[ブリジットはどうだったのか。
『見極める者』をも疑っていたクレメンスにそれを知る術は無く。
ただ、人狼がまだ残っていると言う事実しか分からずに居た。
左手のグローブを外し、月明かりへと晒す。
呪印は、未だ身に刻まれたまま]
アイツを殺して。
それで終わらなければ、もう1人殺して。
そうだ、ミハエル以外を殺せば、きっと。
[意識を取り込まんとする昏いもの。
それに抗おうとする意識もあれど、今は弱く。
殺意は一つの矛先から複数に分かれ、次第に昏いものは、殺意を単に誰かを殺したいと言う欲望へと変化させようとしてくる。
表には出ない意識下の葛藤。
その思考を途切れさせたのは、扉を叩く音と姪の声>>45だった]
…入って良いぜ。
[部屋は朝に回った時に教えておいたから、突然訪れたことに驚きは無い。
承諾の声にミハエルが室内に入ってきたが、そちらを見ることは無く。
月明かりに横顔を浮き上がらせた状態のまま、呆とした様子を見せていた]
[やや長めの沈黙を破ったのは、ミハエルの声。
静寂を裂いて告げられた言葉は、予想外のもの]
……………は?
[鳩が豆鉄砲を食らった。
そんな表現が正しく合う表情]
父に、って。
お前の親父さんは存命中だろ。
親が居ねぇからってならまだしも…。
[ミハエルの意図が読めず、表情は困惑したものへと変化した*]
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