─ 林檎の樹の傍 ─
[一部始終を見ていた黒狼は、終わり見届けゆるりと首を傾ぐ。
二つで一つであった、幼仔と少女はどうなったのか。
最後は、少女の意思が幼仔を押さえていたようではあるけれど。
幼仔のコエも、確かに聞こえていて。
二つの意思はそれぞれが確たる存在を主張していたから。
一方だけが消えてしまうとか、一つになるとかは、どうにも想像がつかず]
…………ハーノ?
[しばし悩んで、そ、と呼びかけるのは幼仔の名。
今の在り方──黒狼フォイユとして呼ぶのは、同胞と認識していた幼仔の方がごく自然だから]